SDGs の実現に向け、レジリエントな基盤を目指す協力関係

※本ブログは、米国時間 9 月 13 日に公開された ”Working together on a resilient foundation for the Sustainable Development Goals” の抄訳を基に掲載しています。

SDGsの実現に向け、レジリエントな基盤を目指す協力関係

世界は現在「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」の中間地点にあり、公約から進展に向けて動きを加速させることが、かつてないほど重要になってきました。実際、国連事務総長のアントニオ・グテーレス (António Guterres) 氏は、2022 年の持続可能な開発目標 (SDGs) 報告書にて、「世界的な危機が重なり、それぞれが連動しているため、設定した目標が (中略) 危うくなっている」と警告しています。SDGs の資金面でのギャップは、新型コロナウイルス感染症が蔓延する前には 2 兆 5,000 億ドルと推定されていましたが、発展途上国におけるコロナでの支出によってさらに1兆ドルが必要だとされています。

今週、第 77 回国連総会 (UNGA) がニューヨークで開催されますが、そこに集まる各国首脳は緊急を要するさまざまな世界的課題に直面することになります。「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」は、2015 年に国連加盟国が 17 の目標を採択した時に定められたもので、今でも世界で行動の指標となる一貫したロードマップとなっています。このアジェンダでは、世界中のあらゆる人の健全性を高め、地球の未来を維持するには、すぐにでも協力して取り組む必要があるという共通の見解が確立されています。また、より公平な世界を作るためにテクノロジが果たすべき役割についても強調しています。

2030 アジェンダでは、「政府、市民社会、民間企業、国連システム、およびその他関係者」を結びつけるグローバルなパートナーシップと並んで、テクノロジを、SDGs の「実施手段」と捉えています。国連事務総長によるデジタル協力に関するハイレベルな識者のレポートでは、「SDGs の 17 のゴールと 169 のターゲットの中で、デジタルテクノロジが示唆することやその可能性と切り離されているものはひとつもない」と書かれています。テクノロジは、信頼のおける状態かつ責任ある包括的な方法で開発され使用されれば、この世界と人々の生活を変革する上で確実な力となる可能性があるのです。

マイクロソフトは当初から SDGs に取り組んでおり、その実現に向け確固たる努力を続けています。これは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という当社のミッションに沿って、国連憲章を支持し推進してきた当社の歴史とも合致しています。マイクロソフトは国連機関と協力し、ほぼすべての SDGs 目標を支援してきました。例えば、ネットの接続性やデジタルインクルージョン、人道危機への取り組みに加え、2006 年以降の国連グローバルコンパクトへの参加もその一環です。マイクロソフトのプレジデントであるブラッド・スミス (Brad Smith) は、2021 年に SDGs の広報大使に任命された際、「国連による 17 の SDGs に関し、政府や産業界、市民社会と連携する」ことの必要性をあらためて強調しました。

Microsoft and the UN Sustainable Development Goals」(マイクロソフトと国連の持続可能な開発目標) という当社のレポートでは、SDGs を推進する上で、デジタルテクノロジやイノベーション、パートナーシップが不可欠だという事例を紹介しています。例えば、マイクロソフトはユニセフと連携し、The Learning Passport を通じて SDGs の 4 番目の目標である「質の高い教育をみんなに」を推進しています。戦争や危機、強制退去などの混乱時には、何百万人もの子どもや若者が質の高い教育を受けることが困難になりますが、The Learning Passport はこうした課題に対処するため作られたデジタルプラットフォームです。The Learning Passport は、モバイルデバイスからオンラインでもオフラインでもアクセスできる持ち運び可能な教育プラットフォームとして、現在 26 ヶ国にて利用可能です。SDGs の 8 番目の目標「働きがいも経済成長も」の支援にあたっては、世界中の労働者に対する新型コロナウイルスの影響を軽減しようと 2020 年 6 月にデジタルスキルイニシアチブを開始しました。同プログラムを通じ、2021 年末までに 4,200 万人が重要なデジタルスキルを習得しています。また、SDGs の 13 番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」についても大胆な取り組みを実施しています。その一例として、ClimateWorks Foundation や UNEP をはじめとする 20 以上の主要組織と協力し、地球上の炭素計測の信頼性と相互運用に向けた対策として Carbon Call に取り組んでいます。

それでもさらなる行動が必要だと考えています。マイクロソフトは 20 年にわたって国連と協力してきましたが、2020 年にはその歴史に基づいたチームが結成され、国連のミッションとその関連機関、多国間および地域機関、開発銀行、政府、地域社会、そして関係者への当社のコミットメントを深め拡大しようとしています。私は、国連関連および国際機関 (UNIO: UN Affairs and International Organizations) 担当バイスプレジデントとして、マイクロソフトでこのチームを率いる機会を得たことを光栄に思います。この UNIO チームでは、デジタルテクノロジの責任ある開発と展開、そしてガバナンスを通じ、現在も続いている世界的な課題に対応するとともに、SDGs の推進を支援することを目指しています。同チームが注力しているのは、SDGs の実現と包括的な経済成長を可能にすることと、エビデンスに基づいた政策の策定を推奨してDXを進めること、そして国際システムとそのミッションを支えるデジタルテクノロジの採用を加速させることです。

パンデミックからの回復や、食料安全保障、気候変動など、現在世界が直面している課題の規模や複雑さを考えると、世界全体が団結して多国間での取り組みを進め、それぞれの知見を活かして革新的な解決策を導き出すことが不可欠です。これまでのキャリアの中で、私はさまざまな多国間業務に携わってきました。2005 年にはネルソン・マンデラ (Nelson Mandela) 氏がグラサ・マシェル (Graca Machel) 氏と共に、G7 の財務大臣らに対してアフリカの開発支援活動が緊急で必要だと説いた様子も目の当たりにしましたし、OECD では大使代表を務めました。多国間プロセスの価値も高く評価しています。特にそのプロセスが、エビデンスと実務経験によって生まれた関係者の知見に基づいたものである場合や、明確な成果として包括的で持続可能な経済発展を重視している場合、特に高く評価できると考えています。

SDGs の実現を支援する当チームでは、2 つの課題を中心に取り組んでいます。それは、後発開発途上国 (LDCs: least developed countries) の発展を支援することが非常に重要であることと、テクノロジと社会の接点で発生する課題に対処する必要があることです。

LDCs では、新型コロナウイルスによるパンデミックによって、気候変動や世界的な景気後退、エネルギーコストの上昇、食料不安など、これまでにないような課題に直面しています。同時に、包括的でレジリエンスの高い、持続可能な復興と成長を推進しなくてはなりません。LDCs に対しては、公的な開発支援に重要な役割があるのはもちろんですが、民間企業による投資も欠かせません。そこでマイクロソフトでは、国連との協力関係を強化し、2023 年に開催される第5回国連 LDCs 民間企業フォーラムの共同議長として、国連が民間企業へのアプローチを拡大できるようにするとともに、最も差し迫った問題に対する革新的な解決策を見いだせるよう支援します。ドーハでの会議に向け、当社はさまざまな分野の企業と協力し、ネット接続性や、公的・民間双方からの融資、スキルアップ、複数の利害関係者によるパートナーシップ、優れたガバナンスなど、LDCs が直面している主な課題を洗い出したほか、SDGs のさらなる発展に向けて民間企業が投資を増やすには何が必要かを提言しています。Microsoft Tech for Social Impact の担当者とも緊密に連携しながら、国連機関が大きな社会問題を解決して SDGs を推進する際に目的に合ったテクノロジが利用できるよう継続的な取り組みを進めるとともに、LDCs のデジタル開発にもより注力していきたいと考えています。

デジタルテクノロジを SDGs 実現に向けたレジリエントな基盤とするには、テクノロジと社会の接点で発生する重要な課題に対処しなくてはなりません。産業界が、政府や市民社会、技術コミュニティをはじめとするさまざまな関係者と協力する必要があるのです。その協力関係によって、包括的な経済機会へとつながる信頼性の高いデジタル基盤が共に構築できるとともに、基本的人権を保護することができ、さらには環境的にもより持続可能な未来が実現するのです。これは当チームにおける重要な業務となっています。当チームでは、国連や国際機関、政府に対し、SDGs 実現に向けたデジタルテクノロジの役割に関する見解を示しているほか、責任ある開発を促進し、その技術を体系的に採用できるよう促す政策の枠組みを実現しようと支援をしています。

例えば、マイクロソフトは 2022 年 4 月、データへのさらなる投資の必要性を呼びかけた国連と世界銀行の Joint Call to Action (共同行動喚起) の立ち上げに参加しています。そこでは当社のデータサイエンティストが、パンデミックの影響緩和や環境問題の解決、災害対応やその他人道的危機の支援など、世界的な課題に取り組んでいることを紹介しました。また、「データ格差」の解消に向けたオープンデータコラボレーションで得た教訓やベストプラクティスも共有しています。今後も国連および世界銀行と引き続き協力することで、データシステムを強化し、責任を持って高品質なデータを生成・共有して消費できるよう、世界中の国や組織の能力と政策の改善に努めます。この継続的な取り組みにより、政府が SDGs を測定し実現できるよう支援することにもつながると考えています。

組織や政府が責任を持ってデジタルテクノロジを活用し、少ないリソースでより多くのことを実現し、希少な資源をより効果的かつ責任を持って利用しつつ、未来に向けてよりレジリエントな基盤を構築することには、真なるチャンスが存在します。マイクロソフトは、国連の「Our Common Agenda (私たちの共通の課題)」協議で述べられたグテーレス事務総長の「SDGs を促進するブースターショット」に貢献し、国連やさまざまな国際機関と協力して SDGs 実現に向けたレジリエントな基盤を構築し、公約の実現を進展させる取り組みを継続していきたいと思います。

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