Juan Lavista Ferres – マイクロソフト AI for Good チーフ データ サイエンティスト
※ブログは米国時間 2022 年 11 月 7 日に公開された “Closing the Climate Data Divide in the Global South” の抄訳を基にしています。
COP27 に向けてエジプトに集まった世界のリーダーとビジネス リーダーたちは、切迫した気候変動問題に向き合っており、行動や実践のために団結する方法を検討しています。マイクロソフトではこの会議期間を、重要な議論に参加するとともに解決に向かって歩みを進める機会と捉えています。
この記事では、データと AI (人工知能) の力を活用して新たな気候変動対策を支援するマイクロソフトの取り組みについて解説します。マイクロソフトは、自社の AI for Good Research Lab をエジプトとケニアに拡張します。これらのデータ ラボの活動は、アフリカの主要組織の代表者で構成される新設の Africa AI Innovation Council (アフリカ AI イノベーション協議会) から情報提供を受ける予定です。また、この記事ではさらに、Planet Labs PBC との協業が拡大し、同社の高品質な衛星画像とマイクロソフトの AI 技術の組み合わせにより気候適応ソリューションが加速されることもお知らせします。
現代はこの地球にとって困難な時代であり、今まさに進行中の気候変動の影響によるリスクと危機に対して無関係でいられる国はありません。加えて、この地球の存続に関わる脅威の影響が、世界の国々の間で不均衡に広がっており、先進国と比べて経済や産業の水準が比較的低い国々であるグローバル サウスに、より大きな負担がかかっていることも複雑な問題です。グローバル サウスは、気候変動の実際の原因に与えてきた影響はグローバル ノース (北の先進国) よりはるかに少ないにもかかわらず、干ばつ、洪水、暴風雨、熱波などの異常気象による影響を不当な割合で受けており、それによって食糧不足など他の問題が引き起こされ、貧困などの既存の問題が深刻化しています。2008 ~ 2018 年の間、グローバル サウスでは 22 億人が高い気候リスクにさらされていました。
気候変動の最悪の影響を回避するため、グローバル サウスの政府や意思決定者も信頼性の高い気候データへのアクセスを必要としています。このデータ アクセスの民主化に向けての流れは、「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」の一部として 2015 年に国連加盟国が採択した 17 の持続可能な開発目標 (SDGs) の推進を加速しサポートする、マイクロソフトの幅広い取り組みと方向性が一致しています。データには、適応やレジリエンスのためのプロジェクトを実現する力があり、それを通じて、気候関連の災害の事前および直後に、利用可能なリソースを最大の効果を与えることができる場所に振り向けることが可能となります。グローバル サウスでは信頼性の高い気候データが不十分なだけでなく、利用可能なデータを扱うデータ サイエンティストも大幅に不足していることを、マイクロソフトは認識しています。マイクロソフトの調査によると、グローバル ノースにはグローバル サウスの約 5 倍のデータ サイエンティストがいます。つまり、グローバル サウスは、気候データを意思決定や行動のための洞察に変える能力について大幅な格差に見舞われているのです。アフリカではこの格差がより大きく、データ サイエンティストの数はグローバル ノースの 14 分の 1 となっています。つまり、私たちは気候データ格差に直面しているということです。そしてマイクロソフトでは、この格差解消の支援のために役割を果たしたいと考えています。
ここでは、気候データ格差の解消を支援するマイクロソフトの取り組みについて、さらに詳しく紹介します。マイクロソフトでは AI for Good Lab を拡張するとともに、行動の加速に向けてグローバル サウス全体で新たなパートナーシップを進めています。
マイクロソフトの AI for Good Lab では、人類最大の課題の解決に貢献するポートフォリオの一環として世界有数の非営利団体、研究機関、NGO、政府機関とパートナーシップを組み、AI、機械学習、統計モデルを利用して気候変動に挑んできました。自社の技術と専門知識を提供することで、マイクロソフトはスケーラブルなソリューションのローカル開発を支援しています。本日発表する内容は、AI for Good Lab を初のグローバル展開としてケニアのナイロビとエジプトのカイロに拡大し、気候関連のレジリエンス向上に取り組むデータ サイエンティストの新たなチームをアフリカの現地で構築するというものです。
気候変動の影響に関わる対処と緩和のためには、業界、政府機関、学界、市民社会が一丸となって力を合わせる必要があります。この拡張について、ケニアおよびエジプトの情報、通信、技術に関する省庁と初期に話し合った際、私たちはアフリカのデータ研究者がアフリカにおいて、アフリカに利益をもたらすプロジェクトに取り組むことが理想的な方向性であるということをはっきりさせました。私たちは新たに、アフリカ開発銀行、アフリカ リスク キャパシティ、アフリカ気候財団といったアフリカの主要な組織から会員を集めた Africa AI Innovation Council (アフリカ AI イノベーション協議会) を設立します。この協議会は、アフリカ大陸が直面している問題を深く理解するアフリカのリーダーからなる高度なマルチセクター グループを招集し、新しい AI for Good Labs の活動に情報を提供し、データと AI を用いて気候関連のレジリエンス向上の機会を特定し、気候に関するデータをさらに生成して継続的な研究を推進するための方法を支援します。Africa AI Innovation Council のメンバーのほかにも、マイクロソフトはケニア赤十字社、PATH、保健指標評価研究所 (IHME)、および 総合的食料安全保障レベル分類 (IPC) とも協力してデータを気候変動対策に変える取り組みを行っています。
また、マイクロソフトは AI for Good プロジェクトをグローバル サウス全体に拡大する取り組みも行います。最近では Microsoft の新たな AI および IOT のラボについてウルグアイ政府と提携しました。このラボでは、気候変動やその他の喫緊の社会問題を含む多数の分野で新たな AI イノベーションを実現するため、地域のスタートアップ企業を支援していく予定です。
9 月には、マイクロソフトは Planet Labs および The Nature Conservancy との提携を発表しました。この提携の目的は、AI と衛星画像を使用して地球上の大規模な太陽光と風力の設備すべてをマッピングして測定する世界初の生きた地図帳である、Global Renewables Watch を構築することにありました。Global Renewables Watch は、研究者と政策立案者の双方が現在の再生可能エネルギーの能力とギャップを把握し、意思決定者が再生可能エネルギー開発についてより効率的かつ効果的な選択肢を探ることを支援するデータを提供します。高品質なデータへのアクセスは、SDGs の測定と実現を可能にするためには欠かせません。
Microsoft AI for Good Lab と Planet Labs の協力関係の拡大により、アフリカを拠点とするデータ サイエンティストは、アフリカ大陸全域から衛星画像にアクセスして、AI Innovation Council が選出した課題に取り組めるようになります。そこで特に重視されるのは、適応 (気候変動の現在の影響や予想される影響に対応するプロセス) と早期警告システムです。
グローバル ノースでは、山火事、ハリケーン、地震などの自然災害への対応に地理空間データを使用することが一般的となっており、この新たな協業は、こうした利用方法をグローバル サウスに拡大する助けとなるでしょう。Planet Labs は 10 年以上にわたって地理空間分野の革新の先頭に立ってきました。約 200 機の衛星を軌道上に上げている Planet Labs では、毎日 25 テラバイトを超えるデータを取得して、企業、政府機関、研究者、ジャーナリストが地球の様子を理解し、行動を起こすことを支援しています。
気候危機への対処は必須であり、それには、幅広いアイデアとアプローチを検討する必要があります。気候変動の影響を受ける地域に住む人々をサポートして、その人々が解決策の開発の先頭となり、中心となれるようにすることは、非常に重要なことです。マイクロソフトでは、グローバル サウスで暮らし、働き、イノベーションを起こす人々のために、パートナー関係を結び、デジタル技術とリソースを提供して、気候データ格差の解消と未来の気候変動解決策の構築を支援することに力を注いでいます。
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