Microsoft Build で開発者向け AI ツールを発表

Microsoft Build で開発者向け AI ツールを発表

Chief Communications Officer
フランク X ショー (Frank X. Shaw)

※本ブログは、米国時間 5 月 23 日に公開された ”Microsoft Build brings AI tools to the forefront for developers” の抄訳を基に掲載しています。

今年のテクノロジ分野の大きな変化を正確に伝えるには 2 文字あれば十分です。その 2 文字とは A I です。その 2 文字の先には、私たちの仕事、コミュニケーション、コラボレーションが複雑かつ大きく進化したエキサイティングな世界があります。以下でも述べるように、年次開催の開発者向けのフラッグシップイベント Microsoft Build でも、AI が共通したテーマになっています。

今年はすでに業界にとって画期的な 1 年になっています。マイクロソフトは、1 月に、AI のブレークスルーを加速し、その恩恵を広く世界と共有するための OpenAI とのパートナーシップの拡大を発表しました。そして、2 月には、最大のソフトウェアカテゴリーである「検索エンジン」を変革するため、AI を搭載したまったく新しい Bing 検索エンジンと Edge ブラウザを発表しました。

その後も、開発は急ピッチで加速し、その過程で以下のようないくつかの重要なマイルストーンがありました。

  • ChatGPT そして OpenAI の画期的な GPT-4 モデルのサポートを追加した Azure OpenAI Service の提供範囲を拡大しました。
  • Dynamics 365 Copilot、Microsoft 365 Copilot、Copilot for Power Platform など、幅広いユーザーに対応した コパイロット (副操縦士、copilot) の提供を開始しました。
  • Windows 11のタスクバー、モバイル、Skype 向けに、AI を搭載した新しい Bing の適用範囲を拡大し、Bing Image Creator のチャット対応、当プラットフォームを承認待ち不要のフルオープンプレビューで提供しました。

これは AI の新時代の始まりに過ぎません。そして、これが、Microsoft Build が重要なイベントである理由です。このイベントでは、AI によるソフトウェア開発の再定義や仕事の未来にもたらす革新を紹介します。

ニュースの解説の前に、Microsoft Build 期間中に詳細に議論されるであろう 2 つの概念、すなわち、コパイロットプラグインについて説明しましょう。

コパイロットとは、最新の AI テクノロジと GPT-4 などと大規模言語モデル (LLM) を使って、複雑な作業を行い、人を支援するアプリケーションです。マイクロソフトは、約 2 年前に開発者のコード作成を支援する AI ペアプログラマー GitHub Copilot によりコパイロットの概念を初めて導入し、現在も自社の多くの中核ビジネスに向けてコパイロットをリリースしています。

コパイロットは、AI を搭載したソフトウェアの新しいパラダイムであると同時に、新しい製品シナリオの想像力を広げ、ユーザー体験、アーキテクチャ、使用するサービス、安全とセキュリティの考え方など、ソフトウェアの構築法に大きな変化をもたらすと、マイクロソフトは考えています。

プラグインは、ChatGPT、そして、最近では Bing に導入されたツールであり、AI システムの能力を増強し、他のソフトウェアやサービスとアプリケーション プログラミング インターフェース (API) を通じた対話による、リアルタイム情報の取得、企業データなどのビジネスデータの組み込み、新たなタイプの計算の実行、安全な処理の実行などをユーザーに代わって可能にします。プラグインは、コパイロットとデジタル世界の他の部分のつなぎ役と考えてください。

では、Microsoft Build 期間中に発表されるニュースや製品をご紹介していきましょう。

拡大する AI プラグインのエコシステム

マイクロソフトは、OpenAI が ChatGPT に導入したのと同じオープンなプラグイン規格を採用し、ChatGPT とマイクロソフトが提供する多様なコパイロットとの間の相互運用性を実現することを発表します。

開発者は、ChatGPT、Bing、Dynamics 365 Copilot、Microsoft 365 Copilot など、コンシューマー分野とビジネス分野の両方で動作するプラグインを、ひとつのプラットフォーム上で構築できるようになります。また、Azure OpenAI Service を利用して開発された独自の AI アプリケーションでプラグインを開発し、使用したい場合には、デフォルトでこのプラグイン規格との相互運用が可能になります。すなわち、開発者は、最も自然なユーザーインターフェースである人間の言葉を使って、人々がアプリと対話できる体験を構築できるのです。

この共有プラグイン プラットフォームの一環として、Bing にプラグインのサポートが追加されます。すでに発表されている OpenTable や Wolfram Alpha のプラグインに加え、Expedia、Instacart、Kayak、Klarna、Redfin、Zillow など、Bing エコシステムには多くの企業が参加する予定です。

共通のプラグインプラットフォームに加え、マイクロソフトは Bing がデフォルトの検索エクスペリエンスとして ChatGPT に搭載されることも発表します。ChatGPT は、世界トップクラスの検索エンジンを内蔵し、ウェブからのアクセスに対して最新の回答を提供できるようになります。ChatGPT の回答は、検索とウェブデータに基づくものになり、出典が含まれているため、ユーザーは、チャット内から直接的により詳細な情報を得られるようになります。この新しいエクスペリエンスは、本日より ChatGPT Plus のサブスクライバー向けに展開され、まもなく、無料ユーザーもプラグインを有効にするだけで利用できるようになる予定です。

Microsoft 365 Copilot がプラグインで拡張可能に

また、開発者がプラグインにより自身のアプリやサービスを Microsoft 365 Copilot に統合できるようになったことも発表します。

Microsoft 365 Copilot のプラグインとしては、ChatGPT や Bing プラグイン、Teams メッセージ拡張、Power Platform コネクターなどがあり、開発者は既存のリソースを活用できます。開発者は、Microsoft Teams Toolkit for Visual Studio Code と Visual Studio を使って、Microsoft 365 Copilot の新しいプラグインを容易に構築できるようになります。また、データを Microsoft Graph に取り込むことで Microsoft 365 Copilot を拡張し、最近発表された Semantic Index for Copilot を使用して関連性の高い実用的な情報を利用できるようになります。

お客様はアーリーアクセスプログラムの一環として、Atlassian、Adobe、ServiceNow、Thomson Reuters、Moveworks、Mural といったパートナーが提供する 50 以上のプラグインを利用でき、Microsoft 365 Copilot の一般提供までにさらに数千種類が利用可能となります。

開発者が独自の次世代 AI アプリを構築、運用、デプロイできるよう支援する新しい Azure AI ツール群

まず、新しい Azure AI Studio からご紹介しましょう。Azure OpenAI Service に外部データソースを簡単に統合できるようにしました。さらに、Semantic Kernel などのオープンソースのプロンプト オーケストレーション ソリューションを活用して、開発者がプロンプトを簡単に構築できる、Azure Machine Learning プロンプトフローを発表します。

ChatGPT や GPT- 4 などの先進的モデルを Azure のエンタープライズ機能で実現する Azure OpenAI Service において、開発者が自身のデータを使って最先端の AI モデルを展開できるようにするためのアップデート、専用の容量が提供されるプロビジョニング済みスループット SKU、そして、他の外部データソースとの統合を簡素化するプラグインを発表します。現在、Azure OpenAI Service をご利用いただいているお客様は 4,500 社を超えました。

責任ある共同開発

マイクロソフトは、社会に有益な影響を与え、信頼を得られる AI テクノロジの開発にコミットするとともに、自らの学びを共有し、開発者や企業が自らの仕事や組織で責任ある AI の実践を行うための新しいツールやイノベーションを構築しています。Build において、マイクロソフトは、企業がより安全なオンライン環境とコミュニティを構築できるようにするための新たな Azure AI サービスである Azure AI Content Safety を含む複数のアップデートを発表します。責任ある AI システムの構築に向けたマイクロソフトのコミットメントの一環として、Azure AI Content Safety は、Azure OpenAI Service や Azure Machine Learning といったマイクロソフト製品に統合される予定です。

また、Azure Machine Learning に新しいツールを導入しています。テキストや画像データに対する Responsible AI ダッシュボードのプレビュー版を拡大し、モデル構築、トレーニング、評価の段階で、非構造化データで構築した大規模モデルをユーザーが評価できるように支援します。これにより、ユーザーはモデルが展開される前に、モデルのエラー、公平性の問題、モデルの説明を特定し、より高性能で公平なコンピュータビジョンや自然言語処理 (NLP) モデルを実現できます。また、近日公開予定のプロンプトフローは、大規模言語モデルのプロンプト作成、評価、チューニングを効率的に行えるよう支援します。ユーザーは、さまざまな言語モデルやデータソースに接続するプロンプトワークフローを迅速に作成し、グラウンデッドネスなどの評価値でワークフローの品質を評価し、ユースケースに最適なプロンプトを選択できます。また、プロンプトフローはAzure AI Content Safety を統合し、ユーザーが仕事の流れの中で有害なコンテンツを直接検出して削除できるように支援します。

さらに、マイクロソフトは、画像や動画が AI によって生成されたかどうかを検証できる新しいメディア証明機能を、Microsoft Designer と Bing Image Creator に今後数カ月内に導入することを発表しました。このテクノロジは、暗号化手法を用いて、AI が生成したコンテンツに、その出所に関するメタデータをマークし、署名するものです。

新たな統一アナリティクスプラットフォーム Microsoft Fabric のご紹介

今日の世界は、私たちが使用するデバイス、私たちが構築するアプリケーション、そして私たちが行うインタラクションから常に流れてくるデータであふれています。そして、今、AI が形作る新しい時代を迎え、これらのデータの重要性はさらに増しています。組織固有の AI 体験の実現には、適切に管理され、高度に統合された分析システムからクリーンなデータを常に供給することが必要です。しかし、ほとんどの組織の分析システムは、専用目的化して断絶したサービスの迷路のようになっています。

Microsoft Fabric は、データエンジニアリング、データ統合、データウェアハウス、データサイエンス、リアルタイム分析、応用オブザーバビリティ、ビジネスインテリジェンスを含むアナリティクスのための統一プラットフォームであり、OneLake という単一のデータリポジトリに接続されています。

これにより、あらゆる技術レベルのお客様が、一貫したサービス体験を得られます。多様な機能を使いこなせるようになり、各レイヤーで Azure OpenAI Service が利用でき、お客様がデータの潜在能力を最大限に引き出し、開発者が生成 AI の力を活用して、データから知見を引き出せるよう支援します。

あらゆるデータ体験において Copilot in Microsoft Fabric を使用することで、お客様は自然な話し言葉を使用して、データフローやデータパイプラインの作成、コードや関数全体の生成、機械学習モデルの構築、結果の可視化などを行えるようになります。さらに、お客様は、Azure OpenAI Service のモデルと自社データを組み合わせた独自の会話型ベースのツールを作成し、プラグインとして公開することも可能です。

パートナーを通じて AI を活用した未来を加速

Azure のスケールとセキュリティによる、アプリケーションを設計、開発、デプロイ、管理を可能にする NVIDIA などのパートナーとの協業は、マイクロソフトのお客様にとってきわめて有益です。NVIDIA は、NVIDIA AI Enterprise Integration with Azure Machine Learning により、エンタープライズ対応の生成 AI の開発を加速していく予定です。Azure でのみ利用可能な Omniverse Cloud により、企業は、データを巨大で高性能のモデルに集約し、ドメイン固有のソフトウェアツールを接続し、工場の境界を越えてマルチユーザーのライブコラボレーションを実現できます。ONNX Runtime & Olive ツールチェーンを活用した NVIDIA GPU により、ハードウェアに関する深い知識を必要とせずに、根即な AI モデルの実装がサポートされます。

Microsoft Dev Box の新機能

Microsoft Dev Box は、開発者に、セットアップ済みの状態で提供され、一元管理され、すぐにコーディング可能な、プロジェクト専用の Dev Box へアクセス可能な Azure サービスです。本サービスでは、開発者の体験と生産性を高めるためにいくつかの新機能が導入されます。プレビュー期間中、多くのお客様が Dev Box を試用しており、9,000 人以上の開発者が日常的なソフトウェア開発のために社内でこのサービスに移行しています。

Configuration-as-Code によるカスタマイズや、Azure Marketplace の新しいスターター開発者イメージなど、開発チームのニーズに合わせてカスタマイズできる、すぐに使えるイメージを提供する機能も追加されました。さらに、開発者は専用の開発者ポータルサイト Azure Deployment Environments からカスタム環境を管理できるようになりました。Dev Box は 7 月に一般提供開始される予定です。

Windows 11 の開発者のための新しい拠点 Dev Home の発表

開発者が Microsoft Store から入手できる新しい Windows 体験 Dev Home のプレビュー版が Microsoft Build で公開されます。

Dev Home により、GitHub への接続、そして、Microsoft Dev Box や GitHub Codespaces などのクラウド開発環境の設定を容易に行うことができるようになります。Dev Home はオープンソースであり、全面的に拡張可能であるため、開発者はカスタマイズ可能なダッシュボードと効果的なツールで体験を向上できます。

Windows Copilot for Windows 11 の発表

最高製品責任者のパノス パネイ (Panos Panay) は、昨年秋の Windows と Surface の発表会において、Windows Studio Effects と Microsoft Designer の DALL-E 2 によって、PC 上で新しいインタラクションモデルの可能性を解き放つ AI の力について語り、CES では、AI が Windows 上での人々の仕事のやり方を改革していくと述べました。

そして生まれたのが Windows Copilot です。

Windows Copilot の導入により、Windows は、AI による支援を一元化した初の PC プラットフォームになります。Bing Chat とファーストパーティおよびサードパーティ製のプラグインを併用することで、ユーザーは複数のアプリケーションを探し、起動し、作業することにエネルギーを費やすのではなく、アイデアを実現し、複雑なプロジェクトを完了し、共同作業を行うことに集中できるようになります。

これは、2 月に Windows 11 向けにリリースした、AI を搭載した新しい Bing をタスクバーに表示する統合機能をベースにしています。

Windows Copilot のプレビューは、6 月に Windows 11 向けに提供開始される予定です。

ご想像の通り、Microsoft Build では忙しい日が続きそうです。このイベントでの体験のイメージをお伝えすると、登録参加者は約 20 万人、そして、2 日間で 350 のセッション、125 時間以上のコンテンツが提供される予定です。そして、合計で 50 以上の新製品・新機能を発表する予定です。

詳しくは、1 日目のマイクロソフト 会長 兼 CEO サティア ナデラ (Satya Nadella)、ケビン スコット (Kevin Scott)、スコット ガスリー (Scott Guthrie) の基調講演をオンデマンドでご覧ください。また、2 日目は、ラジェッシュ ジャー (Rajesh Jha) とパノス パネイ(Panos Panay) による基調講演をご覧ください。さらに、Book of Newsですべてのニュースやアナウンスを検索し、Microsoft Build で発表された製品に関するストーリーやニュースを読むことができます。

関連情報

Microsoft Build の基調講演に加えて、その他の動画や写真もご覧ください

Microsoft outlines framework for building AI apps and copilots; expands AI plugin ecosystem (マイクロソフト、AI アプリや Copilot の構築フレームワークを明らかにし、AI プラグインエコシステムを拡充)

Bing at Microsoft Build 2023: Continuing the Transformation of Search (Microsoft Build 2023 における Bing: 検索の変革は続く)

Empowering every developer with plugins for Microsoft 365 Copilot (Microsoft 365 Copilot のプラグインがあらゆる開発者を支援)

Bringing the power of AI to Windows 11 – unlocking a new era of productivity for customers and developers with Windows Copilot and Dev Home (Windows 11に AI のパワーを提供 – Windows Copilot と Dev Home が顧客と開発者に向けて生産性の新時代を切り開く)

Build next-generation, AI-powered applications on Microsoft Azure (Microsoft Azure による次世代 AI アプリケーションの構築)

Introducing Microsoft Fabric: Data analytics for the era of AI (Microsoft Fabric のご紹介: AI 時代のデータ分析)

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