※本ブログは、米国時間 6 月 21 日に公開された “Microsoft study: Small businesses intrigued by AI and the opportunities it brings” の抄訳を基に掲載しています。
人工知能 (AI) は今の時代を定義するテクノロジです。小規模企業では、この新しい働き方に適応する態勢が整っているのでしょうか。また、適応する意欲はあるのでしょうか。
この記事で紹介するデータは、2023 年 5 月にマイクロソフトの委託によって Wakefield Research が実施した内部調査「小規模企業の現状 (Small Business State of Mind)」というレポートによるものです。
仕事のペースが飛躍的に速まり、その重みすべてを背負うことに必死になっている人たちがいます。米国で全企業の 99% を占め、労働人口の約半数を雇用している小規模企業 [i] では、人材や収益などのリソースへのアクセスが近隣の大規模な企業より限られているため、プレッシャーが高まっています。
AI の出現により、ビジネスの成長と拡大を支援するよう設計された次世代のツールやリソースから大きな恩恵を受ける準備が小規模企業でも整いつつあります。新しいテクノロジが、これまで未知の領域だったソリューションを生み出すようになる中で、マイクロソフトは小規模企業がそれぞれの機会を最大限活用できるよう支援したいと考えています。
Microsoft Store の年次レポートで、第 2 回目となる「小規模企業の現状」は、従業員数 0 ~ 24 人の米国の小規模企業経営者 1,000 人を対象に実施したもので、小規模企業が抱える最大の課題や優先事項のほか、AI が自社やほかの小規模企業に与える影響についての見解を掘り下げています。
調査によると、小規模企業経営者の AI への関心は高く、79% が自社ビジネスへの適用方法について詳しく知りたいと考えているものの、もっともな理由で躊躇する様子もうかがえることがわかりました。小規模企業がこうしたテクノロジを業務に導入するきっかけについて調査でわかったことや、マイクロソフトが小規模企業の成功を支援する方法などを、この記事でご紹介します。
主な調査結果
- 綱渡り状態: インフレとデータセキュリティは、小規模企業にとって最大の問題であり、その問題は拡大しつつあります。
- 起業家から管理者へ: 小規模企業経営者の志は依然として高いものの、日々の業務に追われてイノベーションに集中できなくなっています。
- AI 楽観論: AI は大変革をもたらすものであり、小規模企業の成長に必要なサポートを提供する可能性があると考えられています。
- AI に関する知識格差の解消: AI による自社ビジネスへのメリットを十分理解するために、AI の知識をより深めなくてはならない小規模企業経営者が多いのが現状です。
米国経済の衰退やデータセキュリティリスクの増大など、現在小規模企業はさまざまな障害に直面しています。小規模企業経営者のほぼ 3 人に 2 人 (65%) が、現時点で自社ビジネスにとっての最大の脅威はインフレだと答えており、昨年同様の質問でインフレを最大の脅威とした 51% から大幅に増加しています。特に、黒人、先住民、有色人種 (BIPOC: Black、Indigenous、People of Color) の経営者の間でインフレによる脅威が大きく増加しており、その割合は昨年の 35% から今年は半数以上 (54%) にまで高まりました。
さまざまな課題の中でも、財務上の圧迫は、データセキュリティなど事業運営上の重要な領域での予算引き締めにつながります。小規模企業経営者の半数近く (49%) はデータセキュリティにあまり投資しておらず、この状況は去年 (47%) と比較しても改善が見られません。このように回答した経営者は、事業に必要な保護を提供するために十分な投資をするのではなく、情報漏えいを避けたいと思いつつも、いちかばちかの状態になっていると認めています。当然のことながら、予算不足が最も一般的な障壁となっており、43% がデータセキュリティを優先する経済的余裕がないと回答しています。
小規模企業という性質上、経営者は成長の余地が大きく、コミュニティにインパクトをもたらす可能性も高いのですが、物事を成し遂げる従業員やリソースはほとんどありません。調査によると、小規模企業経営者の約半数 (47%) は日々の業務管理に忙殺され、事業の可能性を最大限発揮するためのエネルギーや手段を手にする余裕がありません。特に Z 世代の経営者 (65%) や BIPOC の経営者 (52%) で、そのように答えた割合が高くなっています。
このように深刻な状況が明らかになったことから、小規模企業への過剰な負担の根源を調査したところ、小規模企業経営者が日々最も多くの時間を費やしているのは、顧客とのコミュニケーション (66%)、予算や会計の管理 (50%)、データ入力やスケジュール管理などの管理業務 (48%) であることがわかりました。一方、こうした経営者の 59% は、業務時間中に余裕があれば、事業促進に向けた新たなアイデアの創出により多くの時間を費やしたいと答えています。単調な作業が、経営者のインパクトを重視した仕事の邪魔になっているのです。
これは、マイクロソフトの 2023 年 Work Trend Index レポート [ii] にて裏付けられており、仕事の時間とエネルギーのやりくりに苦労している人は、イノベーションや戦略的思考に苦労する可能性が 3.5 倍高いことが明らかになっています。こうしたすべての点は、仕事のペースが速くなることで、小規模企業経営者の能力や創造性に影響が及んでいることを示しています。その能力や創造性は、本来であれば事業の背後にある夢を実現するために使われるはずのものなのです。
Microsoft 365 中小企業担当ゼネラルマネージャーのブレンナ ロビンソン (Brenna Robinson) は、「プレッシャーは、経済からも、受信トレイからも、お客様からも常に受けるものですし、これからもその状況は変わりません。小規模企業経営者は、仕事を一時停止することもできないのです」と語ります。「こうした経営者が今求めているのは、複雑なツールや追加の技術リソースを必要とせずに事業目標が達成できるシンプルなソリューションです。起業家が精神的にも肉体的にも負担を抱えていることは当社でも認識しています。このような起業家が、ビジネスやコミュニティのためにやりたい仕事にもっと取り組めるよう、支援していきます」
小規模企業経営者は、AI には日々の業務や今後のビジネスを改善する可能性があることを認識しています。半数近く (47%) が、AI は自社の事業にとって貴重な資産になる、または大変革をもたらす可能性があると回答しており、中でもそのように回答した Z 世代は半数以上 (71%) にのぼります。理解が深まれば期待も高まる傾向にあり、自身を AI 専門家とみなしている人のうち 10 人中 9 人近く (88%) が、AI は事業に大変革をもたらすものである、または貴重な資産であると考えています。
小規模企業経営者の半数以上 (56%) は、より効率的な事業運営を構築するにあたって AI ソリューションの恩恵を受けることができると回答しており、AI ベースのソリューションの中で最も関心の高い分野として、顧客データとトレンドの分析 (49%) や、注文追跡や顧客サービスといった反復作業の自動化 (46%) を挙げています。Z 世代の経営者は AI をより深く理解しているためか、さらに一歩先を見据えており、AI ソリューションの導入で事業の恩恵が受けられる分野として、より効果的な広告キャンペーン (51%) を最も多く挙げています。
幸いにも AI は、これまで時間のかかっていた事業分野全体の負担軽減に役立ちます。3 月に発表した Microsoft 365 Copilot は、小規模企業の時間を節約するもので、AI を活用して日常的な業務を自動化し、ビジネスワークフローを合理化し、経営者が適切な意思決定を行えるよう貴重な知見を提供します。Microsoft 365 Copilot の詳細と、マイクロソフトによる新たな生産性ソリューションについては、こちらをご覧ください。
小規模企業経営者は AI の可能性を楽観視し、想像力を働かせていますが、AI による自社ビジネスへのメリットを十分理解するにあたっては、AI についての知識をより深めなくてはならない経営者が多いのが現状です。実際、仕事関連のタスクに AI を活用する方法について理解しているのはわずか 10% で、67% は AI 全般についてほとんど知らない、またはまったく知らないと回答しています。
とはいえ、小規模企業経営者がいまだ自身の学習に至っていないことや、AI をより深く事業に取り入れていないことには理由があります。AI のさらなる導入に向けた最も一般的な課題は資金調達やコスト (51%) ですが、AI をしっかり理解していないことで課題を懸念する経営者も多く、どこから始めるべきか優先順位を決めること (41%) や、AI の最適な活用方法に関するスキルやトレーニング (41%) についても課題に感じています。
マイクロソフトの最近の調査 [iii] では、テクノロジを早期に導入した企業は、事業目標に向けたさらなる進歩を遂げるにつれ、自社の事業に高い自信を持つ可能性が 4 倍高いことが明らかになっています。このことから、良いニュースと今後に向けた潜在的なヒントが見えてきます。5 人中 4 人 (79%) の小規模企業経営者が、ビジネスで AI をどう活用できるのかより深く学ぶことに興味を示していることから、大半の小規模企業経営者は新しいテクノロジに足を踏み入れたり、さらに没頭したりする準備ができていることになるのです。
まとめ
AI の進化は非常に重要な技術的変遷であり、今後数十年にわたってあらゆるビジネスのあり方を定義することにもなるでしょう。現在、小規模企業経営者の 34% が今後 12 か月でビジネスが衰退すると予想し、昨年同様の考えを示していた 28% より増加している状況にありますが、マイクロソフトは、小規模企業が成長やコスト削減、効率化につながるすばらしい新機能や小規模企業向けリソースを参照いただけるよう支援していきます。
小規模企業経営者の皆様には、マイクロソフトの Small Business Resource Center にて無料のリソースを活用いただくとともに、最新の法人向け Surface や Microsoft 365 ポートフォリオ内の製品およびソリューションを参照いただき、AI 対応に向けた準備を進めていただきたいと思います。
引用文献
[i] 米国中小企業局 (2023) 中小企業に関するよくある質問 (Frequently Asked Questions About Small Business)
[ii] マイクロソフト (2023) Work Trend Index 年次レポート: AI は働き方を改修してくれるのか?
[iii] ケビン・ピースカー (Kevin Peesker) (2022) マイクロソフト調査: デジタルテクノロジの導入で急成長する中小企業 (Small and medium-sized businesses growing fast by embracing digital technologies)
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