GenAI Customer Day: 生成 AI を “使う”か“創る” か ~ 日本における生成 AI サービス導入企業の最新動向

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務 クラウド & AI ソリューション事業本部長 岡嵜 禎

※本ブログは、2024 年 3 月 18 日に開催した報道関係者向け説明会を元に再構成したものです。

日本マイクロソフトは 2024 年 3 月 18 日 (月) に、日本国内における生成 AI サービスの状況と、導入企業の最新動向に関するメディア向け説明会「GenAI Customer Day」を開催しました。当日は、導入企業にもご参加いただき、各社のプロジェクトについてご紹介いただきました。

生成 AI は新たなフェーズへ。“使う ”か“創る” か、本格的に活用する時代に突入

企業における生成 AI は今、「いかに活用し、差別化するか」という段階にきています。生成 AI を活用する方向性は大きく 2 つあります。一つは「AI を使う」こと。もう一つは「AI を創る」ことです。「使う」に関しては生成 AI の評価/検証から実際のビジネス実装へ。さらに「創る」に関しても、AI プラットフォームの整備から独自の AI / LLM を開発しより複雑な AI ユースケースの実装や、業務に深く踏み込んだ形へと進化しています。

AI を創る

AI 使うCopilot for Microsoft 365

使う際のベースとなるのが、皆様が使い慣れている Word や PowerPoint、Teams などに生成 AI モデルを組み込んだ Copilot for Microsoft 365 です。すぐに生成 AI を活用できるため、導入の動きも加速しています。

昨年弊社が実施した Work Trend Index Annual Report によると、“イノベーションを実行するためのアイデアや知識が不足している” また、“生成 AI に取り組むための時間がない” と感じる方が多くいる一方で、“AI に任せて時間を作り、本質的な業務にもっとシフトしたい” と考える方が多いこともわかります。“仕事の量や質を変えてくれる” ことへの期待や、“自身が生産的になるための時間を作り出してくれる” といった支援への期待なども伺えます。そのような市場の要望に対して、Copilot を活用いただくことで解決に近づけるようにマイクロソフトは支援しています。

Copilot for Microsoft 365

日本ビジネスシステムズ株式会社様の事例

取締役専務執行役員 ビジネスグループ統括、デジタルセールス本部担当 後藤 行正 様

Copilot for Microsoft 365 の優れたテクノロジーを社員に使ってもらうことが重要なステップと捉え、昨年の 8 月からマイクロソフトのアーリーアクセスプログラムに参加し、先行して 300 ライセンスを導入しました。希望する社員に対しライセンスを付与し活用を促進。また Copilot のコミュニティを Teams 内に作り、検証チームを設置し定着化を図っています。あわせて定期的に勉強会も開催。使用状況の分析と、活用のための施策を実施しています。特に Office をよく使用する総務部、人事部、法務部、財務部といったコーポレート部門の体制作りを先行し Copilot を使った業務改革を進めた上で、3 月には全社に展開しています。

取締役専務執行役員 ビジネスグループ統括、デジタルセールス本部担当 後藤 行正 様

Teams にデフォルトで搭載された AI に加え追加プロンプトを作り、会議の要約を PowerPoint や Word でも使えるようにしました。出席者名や日時と場所、目的を追加し精度も向上させています。

法務部門では契約書の確認や再鑑など、チェックする文言や項目が決まっています。この業務をCopilot で一括チェックできるよう改善し、さらにその項目にリンクを付け詳細内容を確認できるようにしました。これまで平均 15 分ほどかかっていた作業を 5 分まで短縮し、約 66% の時間を削減しています。マーケティング部門でも、セミナー関連業務で 1 か月に約 16 時間の削減を実現。文書作成における誤字脱字といった品質や精度の向上、属人化の解消にもつながりました。また Microsoft Viva Insights を使い、メール・チャット、会議での効率化を進め、価値創出時間を 40 時間から 54 時間まで 36% 増を実現しています。

Microsoft Viva Insights

AI を創る〜Microsoft Copilot Studio

企業独自の業務データや仕組みに連携した AI の場合、自社で「創る」ことになりますが、様々な課題もあります。その壁を取り払うソリューションの一つが Microsoft Copilot Studio です。2 月より提供を開始し日本語にも対応。お客様のカスタム Copilot をノーコード、ローコードで作ることができます。1,100 以上のプラグインとコネクタを搭載し、URL を指定するだけと、作り方も簡単です。例えば製品ページをソースに Microsoft Surface ラインナップの自動生成や FAQ、よくある問い合わせのページの Copilot も高速で作成します。リファレンスをつけられる点も利点の一つです。どこから回答を生成したか、クリック一つで正確性を確かめることができます。

社内のイントラサイトからも Copilot を作成できます。勤怠や給与などの URL を Microsoft Copilot Studio に追加すると、社内の認証のかかっているサイトからも情報を拾います。ホームページ以外のナレッジの追加も可能で、社内規約の PDF や Word、PowerPoint といったドキュメントを直接アップロードすることも可能です。出来上がった Copilot は様々な形で公開できます。Teams での公開やウェブサイトへの埋め込みのほか、Copilot for Microsoft 365 への連携も可能なので、社内ですぐに使うことができます。

Microsoft Copilot Studio

株式会社ベネッセホールディングス様の事例

専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長 橋本 英知 様

ベネッセでは生成 AI を社内業務の効率化に活用するほか、社外に向けた利用もすでに開始しています。

専務執行役員 CDXO 兼 Digital Innovation Partners 本部長 橋本 英知 様

新企画の立ち上げ時には経理や財務をはじめ法務や情報セキュリティなど、コンプライアンスが多岐にわたるため、あらゆる部門へ相談や確認が必要となり、それが新事業発足の足かせになっています。そこで、社内の業務改善コンテストで上がってきた社内相談 AI を自社開発し昨年 10 月にリリース。その際ソースにしたのは様々な部門のマニュアルを中心に 750 ページほどのデータです。検証の結果、データセットが肝だとわかりましたが、オリジナル開発のため新規データセットの再投入やログ分析をクイックに反映するのが難しく、Microsoft Copilot Studio の導入に至りました。利点はノーコードでできることと、安価なためユーザーごとに利用を設定できる点です。本番環境をこの 2 月にリリースしましたが、利用状況はもちろん回答精度の良し悪しも具体的にわかるため、改善しやすいのもポイントです。

社内情報

オリジナル版との比較では、データ解釈の課題とデータ不足が浮き彫りになりましたが、逆に FAQ や社内データの追加でほとんどカバーできるとわかりました。データ解釈とは具体的には文言の揺れで、専門部署での言い回しと一般社員の言葉との差異を補足しました。また社内のデータへのリンクも、資料の使用目的や使い方を簡単な文章で補足するだけで改善されました。今後さらに解像度の高いデータを追加し進化させる予定です。24 年度内に Microsoft Copilot Studio で簡単な質問を解決できること、さらに翌年には一部の手続きの AI 化を目標にしています。この入り口をきっかけに様々な企画立案をスムーズに、新ビジネス創出につなげたいと考えています。

利用状況

■より高度な生成 AI を創る〜Azure OpenAI Service

独自データと組み合わせたパーソナライゼーションや完全なオートメーションなど、より高度なアプリケーションの作成も加速しています。より複雑なユースケースを実装する際の中核的なソリューションが Azure OpenAI Service です。API ベースで自由にカスタマイズしながらアプリケーションを作れる柔軟性の高さが特徴で、テキスト生成モデルに加え、GPT-4 Turbo、GPT-4 for Vision、DALL·E 3、Whisper などと組み合わせ、画像入力、画像生成、音声認識など、マルチモーダルへと進化しています。現在グローバルで 53,000 社以上のお客様にご利用いただき、そのうち 3 分の 1 以上が新規のお客様となっています。

Azure OpenAI Service

ソフトバンク株式会社様の事例

IT 統括 専務執行役員 兼 CIO 牧園 啓市 様

ソフトバンクでは AI を “使い倒す” をキーワードにグループ各社で早い段階から AI 戦略を推進し、社内コンテストをこれまで 5 回実施しています。アイデア総数は累計 11 万件以上に上ります。「実際の利用者にならなければ、生成 AI の使い方はわからない」という考えのもと、利用環境を整備しその推進を図ってきました。ビジネスでの利用を検証する AI ガバナンス、体制組成、使い方の情報共有そして開発相談と、最終的にはすべての部門で AI を利用できるよう教育に取り組んでいます。

外部に向けた取り組みとして Azure OpenAI Service を活用した最先端のコールセンター構築を、マイクロソフト社と共同で開発すると 3 月 18 日に発表しました。

IT統括 専務執行役員 兼 CIO 牧園 啓市 様

お客様からの問い合わせに対する回答のアウトプットはクエリーを使う方法や Bing Search もしくは Azure AI Search を使うなど様々あります。それをハンドリングするアシスタントをしっかり作ること。固定フローをあらかじめ定義する従来型ではなく、使用可能なファンクションを定義し、会話に応じ必要な機能やデータを自動で参照する LLM 自律思考型のシステム開発を目指します。

開発アプローチ

システムのコアコンポーネントは、多種多様な企業で共通で使えると考えています。シナリオ管理は会社や業界に特化した個別の内容になるため、個社ごとに SaaS の様な形式でカスタマイズし、最終的には皆さんに使っていただけるようマイクロソフト社と一緒に取り組みます。

全体概要 

■より業務に踏み込んで、より革新的な業務を担う生成 AI

より多くの方に生成 AI を活用いただくために、Copilot for Microsoft 365 や Microsoft Copilot Studio を通じ身近な問題を解決しながら、社員のみなさんが生成 AI を業務で日常的に使えるよう支援します。クラウド化やセキュリティガバナンスの考え方、データ戦略やデータ使用に向けた整備と、何より多くのお客様が課題と感じる IT 活用人材のスキルアップに関しても、生成 AI を活用し支援していきます。

(写真左から)ソフトバンク株式会社 牧園様、株式会社ベネッセホールディングス 橋本様、日本マイクロソフト株式会社 岡嵜、日本ビジネスシステムズ株式会社 後藤様
(写真左から) ソフトバンク株式会社 牧園様、株式会社ベネッセホールディングス 橋本様、日本マイクロソフト株式会社 岡嵜、日本ビジネスシステムズ株式会社 後藤様

 

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。

 

Tags: , , ,

関連記事