マイクロソフト 2024 年環境サステナビリティ レポート

マイクロソフト 2024 年環境サステナビリティ レポート

副会長 兼 プレジデント ブラッド スミス (Brad Smith)
最高サステナビリティ責任者 メラニー ナカガワ (Melanie Nakagawa)

※本ブログは、米国時間 2024 年 5 月 15 日に公開された「Our 2024 Environmental Sustainability Report」の抄訳を基にしています。

マイクロソフトは、2024 年環境サステナビリティ レポートを公開しました。本レポートでは、2023 年度の報告と、2020 年に開始した取り組みの進捗状況を示しています。以下は、レポートの序文です。レポート全文はこちら (英語) からご覧いただけます。

人類と地球のためのイノベーションとパートナーシップを促進する

4 年前、マイクロソフトは、2030 年までにカーボン ネガティブ、ウォーター ポジティブ、廃棄物ゼロを実現し、使用面積以上の土地を保護するという公約を発表しました。それ以降、テクノロジ分野の面でも、気候目標の達成に必要なことに関する知識面でも、大きな変化がありました。生成 AI をはじめとする新たなテクノロジには、気候危機の解決を後押しするイノベーションへの期待が集まっています。一方で、そういったテクノロジに必要なインフラや電力により、テクノロジ分野全体に関わるサステナビリティの公約を果たす上での新たな課題が生じています。マイクロソフトは、2024 年に企業としての現状を分析することで、気候目標を達成し、サステナブルな未来の構築に必要なテクノロジで人々を支援するという公約のために、揺るぎない姿勢で取り組んでいきます。

昨年末、ドバイで開催された COP28 には世界各国が参加し、サステナビリティをめぐる世界的な進捗状況を確認しました。結果は厳しいものでした。世界的に重大な気候目標を達成するめどが立っておらず、世界が抱える課題の多くが私たちの身のまわりでも顕在化しています。マイクロソフトは過去 4 年間にわたって、さまざまな障害を乗り越え、有意義な形で進捗速度を上げてきました。本レポートは、複数の領域で順調に進んでいることを示しています。しかし、すべての領域ではありません。そのため、まだ軌道に乗れていない領域での進捗を早めるように体制を整えています。

順調に進んでいる 4 つの領域では、各領域で、マイクロソフトのサステナビリティ事業の枠を超えて世界的な影響を与える可能性のある次のような進展がありました。

  • 事業活動による直接的な排出量 (スコープ 1 および 2) の削減
  • 炭素除去の推進
  • 廃棄物を最低限に抑えるために循環性を高めた設計、およびクラウド ハードウェアの再利用
  • 生物多様性の向上と、マイクロソフトが使用している面積以上の土地の保護

一方で、まだ軌道に乗れていない領域が 2 つあるため、各領域に対して、さらなる突破口の発見と追求を成し遂げられるよう徹底的に向き合い、次のことに取り組んでいます。

  • 間接的な排出量 (スコープ 3) の削減
  • 水の消費量の削減、およびデータセンター運営による水の消費量を上回る水の補充

さまざまな課題が私たちを取り巻いていますが、前向きな姿勢で臨んでいます。キャンパスやデータセンター、そしてバリューチェーン全体を通して状況が前進していることを心強く思っています。さらに、マイクロソフトの経営陣や社員の多くが、真剣な態度で、現状の重大なギャップを埋めるための新しく革新的な手段を見つけ出し、私たちにインスピレーションを与えてくれます。今日、気候変動をめぐる問題ほど、地球上のすべての人に関わる問題はないと誰もが認識しています。だからこそ、全員で一緒に成功しなければならないのです。

カーボン ネガティブ

マイクロソフトのカーボン ネガティブに関する公約には、3 つの主要領域である、炭素排出量の削減、カーボンフリー電力の使用増加、炭素除去が含まれます。2023 年度は、カーボンフリー電力と炭素除去で大きな進展がありました。マイクロソフトは、カーボンフリー電力のインフラを支援する先駆的なアプローチを採用し、事業を行う地域の送配電網のカーボンフリー電力を増やすために長期的投資を行っています。

2023 年、マイクロソフトは再生可能エネルギー資産の契約済みポートフォリオを、21 か国でのプロジェクトを含む 19.8 ギガワット (GW) 以上に増やしました。また、2023 年度に、今後 15 年間で 5,015,019 トンの炭素除去を行うことを契約しました。私たちはこれからも引き続き、低・中・高耐久性ソリューションのバランスのとれたプロジェクトのポートフォリオを組んでいきます。

今後も炭素削減に重点を置いていきますが、特にスコープ 3 の排出の対策に努めます。2023 年には、スコープ 1 および 2 の排出量が基準年 2020 年と比べて 6.3%減少しました。この領域では、目標達成に向けて順調に進んでいます。しかし、間接的な排出量 (スコープ 3) は 30.9%増加しました。スコープ 1~3 全体で見ると、マイクロソフトの排出量は基準年 2020 年から 29.1%増加しています。

スコープ 3 の排出量増加は、データセンターの増設と、建設材料や半導体、サーバー、ラックなどのハードウェア部品の関連するエンボディドカーボン (内包炭素) が要因となっています。こうした課題は、データセンターを拡大する大手クラウドサプライヤーであるマイクロソフトの立場に特有のものでもあります。しかし、それ以上に、環境に優しいコンクリート、鋼鉄、燃料、チップの開発と使用のために世界が乗り越えなければならない課題について熟考を重ねています。これは、スコープ 3 をめぐる課題の最大の要因となるからです。

マイクロソフトは、スコープ 3 の排出量削減に必要な追加の対策を特定し、発展させることを目的として、全社的な取り組みを新たに開始しました。

社内のあらゆる分野のリーダーが、この取り組みを支持し推進するために尽力しました。その結果、排出量を削減する手立てとなる 80 種類以上もの個別で重要な対策案が生まれました。たとえば、一定規模の、生産量の高いサプライヤーに対して、2030 年までにマイクロソフトに提供する商品やサービスに 100%カーボンフリーの電力を使用することを求める新しい要件などがあります。全体として、この取り組みは多面的戦略の上に成り立っており、今年は次のことに焦点を当てていきます。

  1. デジタル技術の活用で優れた洞察や実行力を得て、対策を強化する
  2. データセンターの効率化を促進するイノベーションを可能な限り早く導入し、効率を高める
  3. 環境に優しい鉄鋼、コンクリート、燃料などに対し、マイクロソフトの投資や AI 機能を通じた技術革新を推進するためのパートナーシップを築く
  4. マイクロソフトの購買力によってこうした技術革新に対する市場の需要を高めて、販路を築く
  5. 気候変動対策を加速させるように公共政策の変更を支援する

ウォーター ポジティブ

マイクロソフトは、ウォーター ポジティブの実現に向けて、水へのアクセス性、水の補充、イノベーション、使用量削減、政策などを含む、総合的なアプローチを展開しています。2023 年は水へのアクセス性の目標を達成し、150 万人以上に清潔な水と衛生設備を提供しました。私たちが契約締結した水補充プロジェクトでは、プロジェクトの有効期間中に 50m プール 10,000 個分に相当する 2,500 万立方メートルの水を提供できると見積もられています。また、AI による音響分析を利用して漏水で失われる水を削減する FIDO のような、先進的な水補充プロジェクトを実施し、水中のイノベーションを継続的に推進していきます。

将来的にマイクロソフトのデータセンター事業が拡大するにつれて、水消費量を最低限に抑え、なおかつ事業での消費量を上回る水を補充する必要性が高まっていきます。2023 年度は、水問題に関する進捗が加速しましたが、さらにスピードを早めるためにはより強力な計画を実施していかなければなりません。そこで、次の 4 つの方法でウォーター ポジティブの公約に投資していきます。

  1. 水の使用量を最小限に抑えて、原単位目標を達成するための設計と技術革新を継続し、取水量の原単位を減らすための対策を講じる
  2. 新たなデータセンターを AI の負荷に耐えられる設計で最適化し、冷却に使用する水消費量をゼロにする。これにより、AI コンピューティングへの需要の高まりを受けた世界的な淡水資源への依存の低減を目指す。
  3. 水政策を発展させるためのパートナーシップを締結する。2023年 にマイクロソフトは Coalition for Water Recycling に参加。今後 1 年間で、水政策に関する位置付けと戦略を決定する。
  4. マイクロソフトがデータセンターを運営している中で、水消費の切迫度が高い地域において、革新的でスケーラブルな水補充プロジェクトを開発する。最近では、公共および民間セクターが協力してコロラド川流域全体の漏水による水損失を減らす新たな取り組みである、Water United を発表。

廃棄物ゼロ

マイクロソフトは、廃棄物ゼロの実現に向けて、キャンパスやデータセンターでの廃棄物削減、循環性の高いクラウドハードウェアと梱包材の推進、デバイスと梱包材の循環性の向上などに取り組んでいます。2023 年度は、クラウドハードウェア全体のサーバーと部品の再利用およびリサイクル率 89.4%を達成しました。クラウドサービスのニーズの高まりを受けて、この目標はますます重要になっています。また、2023 年には、マイクロソフト所有のデータセンターとキャンパス全体で 18,537 トン以上の廃棄物を埋立地や焼却炉から転換し、マイクロソフト製品の梱包材に含まれる使い捨てのプラスチック量を 2.7%に削減しました。

循環センターの拡大からはじまり、地域の技術専門校と連携した使用済み光ファイバーケーブル再利用の試験的プログラムの実施にいたるまで、私たちは素材をより長く使い続けるための策を講じながら、あらゆる段階で循環性を念頭に置いて業務に従事しています。クラウドハードウェアを最大限に再利用し、リサイクルするための取り組みを推進するなかで、2023 年に、米国ワシントン州クインシーとイリノイ州シカゴの 2 か所に循環センターを新規で立ち上げました。

エコシステムの保護

マイクロソフトは、2025 年までに使用面積以上の土地を保護するとともに、私たちが生活や仕事を行っている地域の生態系の保護と再生を行うことを公約に掲げています。2023 年度の時点で、マイクロソフトが保護した土地面積は目標値の 40%以上を上回りました。現段階で、目標値の 11,000 エーカーに対して、15,849 エーカーの土地が永久保護区域として法的に指定されています。

マイクロソフトは、キャンパスやデータセンター周辺環境の生態系を支えるため、環境に配慮した手法を事業に取り入れています。たとえば、データセンター周辺で環境再生型デザインのソリューションを採用し、地域の生物多様性、雨水管理の改善、気候変動への回復力の支援を強化しています。加えて、AI を活用したマイクロソフトのテクノロジを試験的に導入し、エコシステム全体の健全性に関する洞察を得て、次のアクションに繋げられるよう役立てています。

お客様と世界のサステナビリティ

昨年の環境サステナビリティ レポートでは、お客様と世界に対するサステナビリティの向上を支援するために目標を拡大していると発表しました。2023 年もこの活動を継続し、資源管理の改善やシステムの最適化に役立つテクノロジを創造することで、お客様とパートナーのサステナビリティへの取り組みを手助けしていきます。マイクロソフトは、地球規模でのイノベーション、研究、政策の推進を重視しており、これはマイクロソフトのためだけでなく、すべての人のためにサステナブルな世界の実現を支えたいと考えるからです。

公約からの前進を遂げるには、行動と、透明性と、説明責任が必要です。Microsoft Cloud for Sustainability は、お客様がデータをまとめて、事業のサステナビリティに関するより深い洞察を得られるよう支援します。2023 年には、Microsoft Sustainability Manager をスコープ 1、2 およびスコープ 3 の全 15 カテゴリの炭素排出量に対応するよう拡張し、組織の事業とバリューチェーン全体の進行状況を把握し、アクションにつながる情報を得られるようにしました。

世界が気候変動による影響の悪化に直面するなか、Planetary Computer を通じて、研究者、政府、企業、個人に地球環境のデータを届ける支援もしています。ペタバイト級の環境モニタリングデータをオープンアクセス化し、地域社会を守るための実用的な情報に人々がアクセスする手助けをしています。

マイクロソフトにおけるサステナビリティの向上には、世界との関わりが必要です。そのため、革新的なソリューションに投資し、研究を発展させ、大規模な進歩につながると期待できる政策を支持しています。こうした取り組みを代表するのが、マイクロソフトの気候イノベーション基金 (Climate Innovation Fund) で、これはマイクロソフトの企業の枠を超えたイノベーションを促進するために 2020 年に設立した 10 億ドルの基金です。これまでに、商業用の直接空気回収技術や、持続可能な航空燃料 (SAF)、産業脱炭素化技術などの革新的な気候テクノロジに対して 7 億 6,100 万ドルを配分しました。

マイクロソフトのサイエンス、リサーチ、AI for Good チームもまた、ソリューションを加速させ、AI を使って気候変動に対する回復力を高めるために力を尽くしています。2023 年 11 月、サステナビリティのために AI が発揮する素晴らしい力について詳説したホワイトペーパーおよびプレイブックを公開しました。AI for Good チームを通じて国際連合と協力して、「すべての人に早期警報システムを (Early Warning for All)」イニシアチブを進めるための AI 活用について研究し、異常気象やその他の脅威のリスクにさらされる可能性のある人々の正確な把握を目指しています。

昨年、マイクロソフトの CEO であるサティア ナデラ は、気候変動は「私たちの時代を特徴付ける重大な問題」であると述べました。この時代の課題に対応するため、マイクロソフトはサステナビリティを事業の中心に据えています。新しい技術が出現して、新しい機会が生まれるたびに、どうすればサステナビリティを向上できるのかという重要な問いを自問しています。

私たちはその問いの答えを見つけるために日々奮闘し、新たなアプローチの開発や新しいパートナーシップの試みを行って、前進しながら学んでいます。気候変動対策を加速させる上でテクノロジが担い続ける役割について前向きに捉えていますし、私たち全員にとって重要なこの道のりで他の人々と協力できることを楽しみにしています。

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