マイクロソフト Chief Communications Officer
フランク ショー (Frank X. Shaw)
※本ブログは、米国時間 5 月 19 日に公開された “Microsoft Build 2025: The age of AI agents and building the open agentic web” の抄訳を基に掲載しています。
TL;DL? Microsoft 365 Copilot を使用して生成された AI 音声の要約 (英語) がお聞きいただけます。こちらでトランスクリプト (日本語) を確認頂けます。
私たちは今、AI エージェントの時代に突入しました。推論能力とメモリ機構における革新的な進歩により、AI モデルはこれまで以上に高性能かつ効率的になり、問題に取り組む際に、AI システムが新たなアプローチで支援してくれるようになっています。
例えば、GitHub Copilot はすでに 1,500 万人の開発者に使用されており、エージェントモードやコードレビューなどの機能により、コーディング、チェック、本番環境への反映、トラブルシューティングといった一連の開発プロセスが大幅に効率化されています。
数十万もの顧客が、Microsoft 365 Copilot を活用してリサーチやブレインストーミング、ソリューション開発などに取り組んでいます。さらに Fortune 500 企業の 90% を含む 23 万以上の組織が、Copilot Studio を使って AI エージェントや業務自動化の構築をすでに実現しています。
富士通や NTT データのような企業は、Azure AI Foundry を使用して、営業リードの優先順位付け、提案書作成の迅速化、顧客インサイトの抽出を支援する AI アプリやエージェントを構築・管理を行っています。Stanford Health Care では、Microsoft のヘルスケア向けエージェントオーケストレーターを活用し、Tumor Board (癌症例検討会) の準備における業務負荷を軽減しワークフローを効率化するAI エージェントの構築と検証を進めています。
すべての中心にいるのは、開発者です。50 年にわたり、マイクロソフトは開発者がアイデアを現実にするためのツールとプラットフォームを提供し、あらゆる段階でのイノベーションを加速させてきました。AI による自動化からシームレスなクラウド統合まで、開発者が次世代のデジタルトランスフォーメーションを牽引する姿は、まさに今最もエキサイティングな変化のひとつです。
では、次は何でしょうか?
私たちは、AI エージェントが個人、組織、チーム、そしてビジネス全体の文脈を横断して機能する世界を構想しています。この新たに立ち上がりつつあるインターネットのビジョンは、AI エージェントがユーザーや組織に代わって意思決定を行い、タスクを実行するオープンなエージェント型 Web です。
Microsoft Build では、私たちがこのビジョンを現実のものにするために取り組んでいるステップを、プラットフォーム、製品、インフラストラクチャを通じて紹介しています。開発者向けに新たな AI モデルやコーディングエージェントを届け、エンタープライズ向けの高度なエージェントを提供し、Azure AI Foundry、GitHub、Windows などのプラットフォームを最高の開発環境へと進化させています。さらに、オープンプロトコルの採用や、AI による科学的発見の加速にも取り組んでおり、開発者や組織が次のブレイクスルー生み出せるよう支援しています。
ここでは、本日発表した内容の一部を紹介します:
AI で再構築するソフトウェア開発ライフサイクル
AI はコードの記述、本番環境への反映、メンテナンスの方法を根本から変えつつあります。開発者は AI を活用することで開発環境での集中状態をより長く維持し、より戦略的なタスクに注力できるようになっています。そして、ソフトウェア開発のライフサイクルそのものが変革される中で、私たちは GitHub、Azure AI Foundry、Windows といった各プラットフォームにおいて、開発者がより速く、より大きく、そして拡張性をもって開発できるよう支援する新機能を提供しています。
- GitHub Copilot コーディングエージェントと GitHub Models の新しいアップデート: GitHub Copilot は、エディタ内アシスタントから GitHub プラットフォームに統合された初の非同期コーディングエージェントとして進化しています。さらに、GitHub Models にはプロンプト管理、軽量評価、エンタープライズ向けの制御が追加され、チームが GitHub を離れることなく最高のモデルを実験できるようにしています。また、マイクロソフトは VS Code 版で GitHub Copilot Chat をオープンソース化します。GitHub Copilot 拡張機能の AI 機能は、世界で最も人気のある開発ツールを支えるオープンソースリポジトリに統合されます。1 億 5,000 万人以上の開発者が集う GitHub は、オープンで協力的な AI 駆動のソフトウェア開発へのコミットメントを強化します。詳細は GitHub Copilot のアップデート情報をご覧ください。
- Windows AI Foundry の導入: 開発者にとって、Windows はスケール、柔軟性、そして広がる可能性を備えた、最もオープンで広く利用されている開発プラットフォームのひとつです。Windows AI Foundry は、トレーニングと推論を含むAI開発者ライフサイクルをサポートする統一された信頼性の高いプラットフォームです。視覚処理や言語処理向けのシンプルなモデル API を通じて、開発者は Foundry Local を介し、オープンソースLLMを管理・実行したり、独自のモデルを持ち込んで変換、微調整、クライアントやクラウド全体で展開することができます。Windows AI Foundry は本日より利用可能です。詳細については Windows Developer Blog をご覧ください。
- Azure AI Foundry Models とモデル評価のための新しいツール: Azure AI Foundry は、開発者が AI アプリケーションやエージェントを設計、カスタマイズ、管理するための統一プラットフォームです。Azure AI Foundry Models では、xAI の Grok 3 および Grok 3 mini モデルがマイクロソフトのエコシステムに追加され、マイクロソフトによるホスティングと課金で利用可能になりました。これにより開発者は、1,900 以上のパートナーホストおよびマイクロソフト提供の AI モデルから選択し、安全なデータ統合、モデルのカスタマイズ、エンタープライズグレードのガバナンスを一元的に管理できます。さらに、モデル評価を支援する新しいツールとして、異なるカテゴリやタスクでトップパフォーマンスの AI モデルをランク付けする Model Leaderboard や、特定のクエリやタスクに最適なモデルをリアルタイムで選択する Model Router を導入しています。Azure AI Foundry Models について詳しくはこちらをご覧ください。
より高性能、より安全な AI エージェントの実現へ
AI エージェントは、開発のあり方だけではなく、個人、チーム、企業が仕事を進める方法そのものを変えつつあります。今年の Microsoft Build では、新しいプリビルトエージェント、カスタムエージェントの構築ブロック、マルチエージェント機能、そして新しい AI モデルを発表しています。これらは、開発者や組織が生産性を本質的に高める AI エージェントを、安全かつ柔軟に構築・展開できるよう支援するものです。
- Azure AI Foundry Agent Service の一般提供により、マイクロソフトはプロフェッショナル開発者が複数の専門エージェントを連携させ複雑なタスクを処理できるようにする新たな機能を提供します。この機能では、Semantic Kernel とAutoGen を統合した開発者向けSDKを提供し、Agent-to-Agent (A2A) および Model Context Protocol (MCP) への対応も実現しています。また、開発者が AI エージェントに対する信頼性と透明性を確保できるよう、Azure AI Foundry Observability に新機能を追加、パフォーマンス、品質、コスト、安全性といった主要メトリクスを組み込んだ観測機能を提供し、詳細なトレース情報を統合ダッシュボードで一元管理できるようになります。Azure AI Foundry Service を活用してエンタープライズグレードの AI エージェントをどのように構築、展開できるかについていの詳細はこちらをご覧ください。
- Azure AI Foundry での発見、保護、ガバナンス: Microsoft Entra Agent ID のプレビュー版により、開発者が Microsoft Copilot Studio や Azure AI Foundry で作成するエージェントは、Entra ディレクトリに一意の ID が自動的に割り当てられ、企業がエージェントを最初から安全に管理し、「エージェントのスプロール」を避けるのに役立ちます。Foundry で構築されたアプリやエージェントは、Purview のデータセキュリティおよびコンプライアンスコントロールの恩恵を受けます。Foundry はまた、リスクパラメータの設定、自動評価の実行、詳細なレポートの受信を可能にする強化されたガバナンスツールを提供します。Microsoft Entra Agent ID と Microsoft Purview Compliance Manager との統合について詳しくは、こちらをご覧ください。
- Microsoft 365 Copilot Tuning とマルチエージェントオーケストレーションの導入: Copilot Tuning を使用すると、顧客は自社のデータ、ワークフロー、業務プロセスを活用して、ローコードでモデルを調整し、独自の AI エージェントを構築できるようになります。これらのエージェントは、Microsoft 365 サービス境界内で安全に動作し、高精度かつドメイン特化型のタスクを実行します。例えば、法律事務所は、自社の専門知識とスタイルに合わせた文書を生成するエージェントを作成できます。さらに、Copilot Studio の新しいマルチエージェントオーケストレーションにより、複数のエージェントが連携させてスキルを組み合わせ、より広範で複雑なタスクにも対応できるようになります。これらの新機能の詳細や、本日より一般提供が開始された Microsoft 365 Copilot Wave 2 spring リリースへのアクセス方法については、Microsoft 365 ブログ をご覧ください。
オープンエージェンティックウェブの推進
AI エージェントの未来の実現に向け、オープンスタンダードと共通インフラを強化し、顧客の皆様に独自の機能を提供しています。
- Model Context Protocol (MCP) のサポート: マイクロソフトは、Model Context Protocol (MCP) への広範なファーストパーティ対応を進めており GitHub、Copilot Studio、Dynamics 365、Azure AI Foundry、Semantic Kernel、Windows 11 など、当社のエージェントプラットフォームおよびフレームワーク全体にわたってサポートを提供しています。さらに、マイクロソフトと GitHub は MCP 運営委員会 (Steering Committee) に参加し、オープンプロトコルの安全かつ大規模な普及を推進しています。今回、MCP エコシステムへの新たな貢献として、2 つの発表を行いました。まず、認可仕様のアップデートです。これは、ユーザーが既存の信頼されたサインイン方法を使って、AI エージェントや LLM アプリに対し、個人のストレージやサブスクリプションサービスなどのデータやサービスへのアクセスを許可できるようになります。2 点目は、MCPサーバーレジストリサービスの設計です。これは、誰でもパブリックまたはプライベートな MCP サーバーのエントリを管理できる、最新かつ中央集約型のレジストリを実装可能にする設計です。詳細は、GitHub リポジトリをご覧ください。マイクロソフトは、MCP 機能を拡張する中で、安全な基盤の上に構築することを最優先事項として取り組んでいます。詳しくは、Securing the Model Context Protocol: Building a Safe Agentic Future on Windows をご覧ください。
- NLWeb という新しいオープンプロジェクト: マイクロソフトは、エージェンティックウェブにおける HTML と同様の役割を果たすと考える新技術 NLWeb を発表しました。NLWeb と使うことで、Web サイトは自社データと好みの AI モデルを活用し、ユーザーに対して会話型インターフェースを簡単に提供できるようになります。これにより、ユーザーは Web コンテンツとより豊かで意味的な方法で直接対話できるようになります。さらにすべての NLWeb エンドポイントは MCP サーバーとしても機能するため、Web サイト運営者は自らのコンテンツを AI エージェントにとって、簡単に発見できるかつアクセス可能にすることができます。詳細は、こちらをご覧ください。
AI で加速する、科学発見の最前線
科学は、AI の最も重要な応用分野のひとつかもしれません。創薬からサステナビリティまで、人類が直面する喫緊の課題に取り組むうえで、AI は大きな力を発揮しています。今年の Microsoft Build では、研究者がエージェント型AIを活用して発見プロセス全体を変革できるように設計された拡張可能なプラットフォーム、Microsoft Discovery を発表しました。このプラットフォームは、さまざまな業界の研究開発部門が新製品の市場投入までの時間を短縮し、科学者たちがエンドツーエンドの発見プロセスをより迅速かつ広範に進められるよう支援します。詳細はこちらをご覧ください。
ここで紹介したのは、Microsoft Build で発表される数多くの魅力的な新機能やアップデートのほんの一部にすぎません。本 Build にご登録いただいた皆様と基調講演、リアルタイムのコーディングセッションやハックセッションなどを通じて、オンラインでも現地でもお会いできるのを楽しみにしています。なお、これらの多くのセッションは、オンデマンドでも視聴可能です。
さらに、あらゆるニュースと発表が Book of News にまとめられています。ぜひ、ご覧ください。
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