※ このブログは、マイクロソフト CEO サティア ナデラ (Satya Nadella) の LinkedIn にポストされた ”Coming together to combat COVID-19” の抄訳です。同じ内容のメールが、ナデラからマイクロソフト社員宛に送られています。
みなさん
COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) は世界中の人たちに衝撃を与えており、社会的交流から家族との生活、コミュニティ、そして私たちマイクロソフト社員の働き方に至るまで、さまざまな生活の側面に影響が及んでいます。木曜日の全社会議でもお伝えしましたが、この危機的な状況にあっても、みなさんが創造的かつ協力的な方法で、マイクロソフトとお客様をサポートしてくださったことに、心から感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。このような時こそ、私たちの一人一人が何かに貢献できるということ、そしてコミュニティとして団結する重要性を再認識させてくれます。シニアリーダーシップチームと私は、社員のみなさんのことを思い、みなさんとその家族の方々の健康と安全を最優先に考えています。私たちは、この時期にどのようなサポートをするのが最善策となるのか、日々ミーティングを重ね検討しています。そして、みなさんが支援に取り組んでいる姿を本当にうれしく思っています。
いま起きている大きな混乱、先行きが不透明な状況において、目的意識に根差し、自分たちのアイデンティティに忠実であり続けることが最も重要であることを覚えておきましょう。そう考えるようになったのは、過去数週間にわたり、マイクロソフト社内はもちろん世界各地ですばらしい取り組みが進められているのを目にしたためです。
今年初め (ある意味かなり前のように感じますが)、私は LinkedIn に企業の目的に関する記事を投稿しました。その際、オックスフォード大学のコリン メイヤー (Colin Mayer) 教授による「人々と地球の課題を解決する有益なソリューションを提供すること」が企業の目的だという定義を引用し、マイクロソフトの企業ミッションはこのコンセプトに沿っていると説明しました。COVID-19 の猛威に立ち向かう中、このことが今までにないほど真実味を帯びていると感じます。
マイクロソフトでは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という企業ミッションを掲げています。どの企業も単独でこのような課題を解決することはできません。そのため、COVID-19 の流行を封じ込めるには、官民の協力が不可欠です。プラットフォームとツールのプロバイダーというマイクロソフトは独自の役割は、点と点をつなぎ、パートナーエコシステムを統合し、あらゆる規模の組織が課題に立ち向かうにあたって必要なデジタル機能を構築することを可能にします。この異常事態には、これまでに作成された中で最も柔軟なツールであるソフトウェアが、あらゆる業界や世界中で大きな役割を持っていることは明らかです。私たちの責任は、マイクロソフトの提供するツールが、確実にこの課題に対応できるようにすることです。
私は、社員のみなさんが社内全体でファーストレスポンダー(緊急事態に最初に到着し、支援を提供する第一対応者)のマインドがあることを誇りに思います。みなさんは、政府、医療従事者、学校、食品業者など、各国の様々なお客様のサービスの継続と安定に向け、協力しています。私たちの業務のワークフローは急速に変化していることは間違いありません。多くの人が初めてリモートワークに取り組んでおり、中には自宅で子どもの面倒を見ながら仕事をしている人もいるでしょう。私自身も 10 代の娘 2 人と自宅オフィスを共有し、彼女たちの e ラーニングのスケジュールと私の Teams 会議を何とかやり繰りしながら、リモートワークを学んでいます。この状況にプレイブックはありません。お互いの状況に深く共感し理解し合うことが、今まで以上に必要とされています。私は、多くの人が自身の状況とお客様の課題に応じて、こうした課題に立ち向かおうとする同僚の例も社内で数え切れないほど目にしました。
マイクロソフトでは、私たちが事業を展開する地域社会に重要なインフラを提供しており、マイクロソフトを頼りにしていただいています。その事例も数多くあります。ヘルスケア分野では、マイクロソフトのテクノロジが遠隔医療に活用されており、データを共有したり、重要な情報にアクセスするための、ユーザーが直感的に利用できるソリューションが提供されています。ペンシルバニア州セントルーク大学ヘルスネットワークでは、Teams を活用し、COVID-19 重篤化の危険性が特に高い患者とビデオチャットをしています。また、新たな Power Platform テンプレートをリリースしました。このテンプレートは、現在の危機的状況の中で、お客様が情報を共有しコラボレーションできるようにするためのもので、すでに世界で 2000 以上のお客様に利用いただいています。Swedish Hospitalをはじめとするシアトルの病院では、Power Apps と Power BI を使ってベッド数と重要な備品の在庫を管理し、その情報を地域全体で共有しています。ジョンズホプキンス大学は、COVID-19 の症例をリアルタイムで視覚化し追跡するインタラクティブダッシュボードを作成しました。収集したデータはすべて GitHub のリポジトリで入手可能です。同ソリューションは、マイクロソフトのパートナー企業 Esri が提供する Azure 上のマッピングおよび分析ソフト ArcGIS がベースとなっています。また、パートナー企業であるBlue Yonder は、米疾病予防管理センター (CDC) をはじめとする公衆衛生機関が提供する情報からデータを取得し、顧客データと組み合わせることで、パンデミックの期間中に顧客のサプライチェーンがどのような影響を受けるかについて重要なインサイトを生成しています。
その CDC からも、マイクロソフトのヘルスケアボットサービス上に構築された評価ツールがリリースされました。これにより、感染が心配な人の症状やリスク要因を迅速に診断できるようになります。このヘルスケアボットは AI を活用し、医療機関に連絡したり、対面治療する必要のない人には自宅で安全に病気を管理するよう提案するなど、次に取るべき行動を提案してくれます。他にも米国や欧州の医療機関がこのサービスを利用しており、1 日に 100 万以上のメッセージを配信しています。最も重要なのは、このソリューションによって医師や看護師、管理者、その他の医療専門家の作業が軽減され、治療を最も必要とする人たちに対応できるという点です。
公共分野においては、マイクロソフトは政府と協力し、市民と政府が関わりを深めガイドを提供できるよう支援しているほか、従業員がリモートワークできるようサポートしています。イタリア、クエート、日本、ノルウェー、スペイン、スウェーデンをはじめとする数多くの政府が Microsoft 365 を活用し、各政府の対応とボットサービスを整備して国民に情報を提供しています。また、カナダ、アイルランド、米国の機関では、Power Apps と Power Platform を利用して作業を簡素化し、さまざまな機関の従業員が効率的にコミュニケーションできるようにしています。
教育分野では、世界中の学校や大学が Teams でのリモート学習に注目しています。イタリアのボローニャ大学に所属するある教授は、同大学が抱える 8 万人の学生に向け、3 日間で 90% の授業を Teams 上でのオンラインコースへと移行した方法を共有しています。これは、同大学の 900 年以上続く歴史の中で初めてのことでした。また、日本の小学校では Minecraft 上で卒業式を実施、独自の仮想集会ホールと座席を建設し、このような時期に特に重要なコミュニティと所属する場の意識を維持できるようにしました。
セキュリティ面では、AI と人間のインテリジェンス能力を駆使し、ウイルスによる不安を逆手に取るような攻撃を阻止しています。最近のスピアフィッシング(特定の個人や団体を標的にしたフィッシング)活動の一環として、攻撃者は COVID-19 に関連する正当なサプライチェーンレポートのように見えるメールを作成しましたが、Office 365 Advanced Threat Protection が送信中の攻撃を検知してブロックし、Microsoft Defender サービスと警告を共有し、お客様を保護しました。
また、あらゆる分野におけるさまざまな規模の組織が、Teams や Microsoft 365 を活用して従業員のリモートワークを実現し、生産性と協力体制を維持しながら、コミュニティ意識を促進する取り組みも見受けられます。Accenture では、毎週平均 1 億 5,000 万分もの Team 会議を開催しています。これは驚異的な数字です。一方、Icertis などの企業はマイクロソフトのクラウドを利用し、ネットワーク帯域要件の高い従業員が自宅でも生産性を維持できるようにしています。
マイクロソフトは、パンデミックへのソリューションの進化を加速させるには、テクノロジが果たすべき役割があることも理解しています。マイクロソフトは、研究機関と協力し、オープンかつ機械解読可能な COVID-19 に関する全ての科学文献のデータセットを構築しようとしています。このコンテンツによって、研究者がパンデミックに対する理解を深め対処法を編み出すことに貢献できることを期待しています。これまでの Adaptive Biotechnologies とのパートナーシップも拡大し、治療方法の開発を加速するため、COVID-19 に対する免疫系の反応をマッピングし、そのデータセットに自由にアクセスできるよう取り組んでいます。また、科学者は GitHub をはじめとするさまざまなツールを活用し、ボランティアの PC を使った分散コンピューティングプロジェクトを立ち上げ、潜在的な治療法を開発する研究者を支援しています。
最後に、マイクロソフトでは COVID-19 の広範囲におよぶ社会的・経済的な影響に対応するため、全社を挙げて取り組んでいます。仕事を失い、大きな困難に直面している従業員とその家族に対応するため、マイクロソフトは、影響を受けた世界各国の地域の小売店舗や時間給でサービスを提供している従業員に対し、働いた時間に関わらずこの期間の給与を全額支払います。また、地域社会への救援金を用意し、最前線でこの状況に対応している人たちや影響を受けた小規模企業を財政的な支援を提供します。マイクロソフトの Tech for Social Impactチームは、非営利団体や国連などの国際機関と協力し、リモートワークの促進や危機対応作業の支援に取り組んでいます。先週マイクロソフトは、非営利団体や国際機関に向けた追加ソリューションを発表しました。同ソリューションは 6 ヶ月間無料で利用できます。
また、マイクロソフトではより幅広い活動として、COVID-19 の動向について、情報を提供し続ける取り組みも進めています。LinkedIn のメンバーに信頼できるニュースや事実を提供しているほか、Bing では COVID-19 トラッカーを立ち上げ、世界各国の最新の感染統計情報が確認できるようになっています。さらに、Facebook、Google、Twitter などの企業と協力し、すべてのプラットフォームで信頼できるコンテンツを上位表示するようにし、ウイルスに関する偽情報や誤った情報を撲滅しようと共同で取り組んでいます。
ここで紹介した内容は、ほんの一部に過ぎず、すべてをカバーしたわけではありませんが、マイクロソフトが勇気を持って取り組んでいることを表しています。だからこそ私は、このような大変な時期における、みなさんの努力と献身に感謝したいのです。
いま私たちは未知の領域にいます。多くのことがわからないままで、どれだけ不安で不確かに感じるか、私もよく理解しています。みなさんと同様、この数週間、私も圧倒された気持ちになったり周りを包囲されたような気持ちになったりしました。私は、家族や同僚、友人の健康と安全が心配です。妻と私にとって、遠く離れたインドにいる妻の高齢の両親のことも気がかりです。地域社会や世界で奮闘する人たち、街やレストランが空になった状態を見ていると、いつになれば社会構造が元通りになるのだろうと考えてしまいます。
ただ、気持ちを落ち着かせてくれる事実がひとつあります。それは、ウイルスに国境がないのと同様、治療法にも国境はないということです。私たちは皆、グローバルコミュニティの一員としてこの世界に一緒にいるのです。私にとって、この不安を乗り越える最善の方法は、小さな変化を生み出すために日々できることに集中することです。私たちは皆、どこにいようと同じことができる機会を与えられています。つまり、誰もが世界を少しでも良くするために行動すれば、私たちの共同作業は、私たちが愛する人々にとって、私たちの地域社会にとって、社会にとって、世界はずっと良くなるはずです。
私はマイクロソフトで働いていることを、そしてみなさんのような社員がいることを、日々誇りに思います。
サティア
—
本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。