2030 年までにカーボンネガティブを実現するという目標の進捗状況について

※ 本ブログは、米国時間 7 月 21 日に公開された “Progress on our goal to be carbon negative by 2030” の抄訳です。

ルーカス ジョッパ (Lucas Joppa) 最高環境責任者

2020 年 1 月、マイクロソフト コーポレーション最高経営責任者サティア ナデラ (Satya Nadella) 、同プレジデント ブラッド スミス (Brad Smith)、そして最高財務責任者エイミー フッド (Amy Hood) は、炭素、水、廃棄物、そして生物多様性に焦点を当てた大胆な環境持続可能性に関する新たな取り組みを開始しました。その第一歩としてマイクロソフトでは、これまでさまざまな企業が発表した中でも特に大がかりな炭素対策を発表しています。それは、マイクロソフトが 2030 年までにカーボンネガティブを実現し、2050 年までに創業以来排出してきた炭素量よりも多くの炭素を環境から排除するというものです。また、その目標に向けた詳細な計画も立て、進捗状況を随時公表すると表明しました。マイクロソフトはその公約を実行しようと懸命に取り組んでおり、今回、2030 年までにカーボンネガティブを実現するための新たな 7 つの重要なステップを発表するに至りました。

業界を超えた事業変革を実現する

マイクロソフトは、気候安定化に向けた未来への道を先導する 8 企業と共に、Transform to Net Zero という新連合を立ち上げました。同連合は、科学と透明性に従い、炭素を完全になくすカーボンゼロ経済に向けた事業活動を加速させます。組織が持続可能性の目標を設定すると、その目標達成に向け大変な取り組みが始まります。炭素に対する目標を持つ組織からも、取り組みたいもののどう始めていいのかわからない組織からも、目的と変革の差を埋める情報やツールが必要だという意見が聞こえてきます。そこで、Transform to Net Zero 連合では、まず世界でも特に野心的な炭素目標を掲げる業界リーダーを集め、カーボンゼロを達成するための戦略ガイドを作成します。連合の設立メンバーは、A.P. Moeller – Maersk、Danone、Mercedes-Benz AG、マイクロソフト、Natura & Co.、Nike、Starbucks、Unilever、および Wipro です。NGO 設立メンバーは Environmental Defense Fund で、事務局は BSR が務めます。

Transform to Net Zero 連合では、事業変革に向けた取り組みを越える動きに焦点を当てます。すべての企業が排出量ゼロを達成できるようメンバー企業は協力していきますが、その方法としては、2050 年までに排出量ゼロを達成するにあたって各企業が取り組んでいる事業変革について共有することや、ビジネスとバリューチェーン全体で強力な排出量削減を実現すること、サプライチェーン全体にわたってパートナーと協力すること、インパクトを高めるような製品、サービス、ビジネスモデルのイノベーションを進め、大規模に投資すること、政策立案者と協力して排出量ゼロに向けた進化を推奨することなどが挙げられます。また、重要な点として、連合では今後の低炭素経済への移行が確実に公平で公正なものとなるよう注力していきます。

お客様の力を高める

本日、マイクロソフトは Microsoft Sustainability Calculator という新製品のプライベートプレビューを発表しました。炭素排出量を測定できなければ、有意義な炭素削減目標を設定し、達成することも困難です。Microsoft Sustainability Calculator は、マイクロソフトのクラウドをご利用するお客様に向けて、クラウドの利用による二酸化炭素排出量の合計を 1~3 のスコープで見える化します。マイクロソフトはすべてのお客様に向け、3 つのスコープの排出量に対し完全な透明性を提供している唯一のクラウドプロバイダーです。

Microsoft Sustainability Calculator は、AI と高度な分析機能を活用し、排出量の削減方法や排出量の予測、炭素レポートの簡素化に向けた実用的な知見を提供します。また Microsoft Sustainability Calculator は、一貫した正確な炭素測定法を利用し、マイクロソフトのクラウドサービスが環境フットプリントに与える影響を測定します。アプリケーションやサービスをさらにクラウドへと移行することで、排出量がどれだけ削減できるかを計算するのです。任意の報告書や法で定められた報告書を容易に特定し、それに応じてまとめる機能も備わっています。

マイクロソフト自身の二酸化炭素排出量の削減に向けて

スコープ 1 および 2 の排出量をゼロに近づけるには、マイクロソフトの運営方法も変更する必要があります。そこで、マイクロソフトでは、2025 年を目処に、データセンターで日々利用する電力の 100% を再生可能エネルギー電力でまかなえるよう買電契約を結ぶ方針です。今回、2030 年までにディーゼル燃料の使用をやめるよう目指していることも新たに発表します。

世界中のクラウドプロバイダーは、データセンターの継続的な運用を支えるバックアップ電源として、ディーゼル発電機を利用しています。ディーゼル燃料はマイクロソフトの全排出量の 1% にも達していませんが、私たちは化石燃料からの移行を世界的に加速させることが重要だと考えています。そこでマイクロソフトは、水素やエネルギー貯蔵などの低炭素燃料源を利用するという新たな手法を計画しています。その実現にいたるまでには課題が存在し、こうした燃料やバッテリー技術を進化させるには強力なサプライチェーンの開発が必要だということもわかっています。それでも、マイクロソフトは世界中のパートナーと協力し、Climate Innovation Fund からの投資を活用して実現に向けた準備を整えています。

7 月 1 日には、社内炭素税をスコープ 3 を含む全事業へと拡張しました。また、Supplier Code of Conduct (サプライヤー行動規範) も更新し、サプライヤーにスコープ 1~3 の温室効果ガス排出量データを計算して報告してもらいます。今後数ヶ月でサプライヤーと協力し、スケジュールや新たなアイデア、ツール、プロセスの構築に向けた段階的なアプローチを進めていきます。こうして報告してもらうことが、サプライヤーの排出量削減を支援する重要な第一歩となり、マイクロソフトの排出量削減に向けた透明性確保という目標と連携することにもなるのです。

二酸化炭素排出量の排除に向けたマイクロソフト社内の取り組み

気候変動に対する取り組みとして、マイクロソフトでは 2030 年までに炭素排出量を半分以上削減し、残りも除去すること、さらには 1975 年の創業以来歴史的に積み重ねてきた排出量を 2050 年までにすべて排除することを自ら課しています。行動を開始するのは 2030 年ではありません。今年度、マイクロソフトは具体的な措置として 100 万トンの炭素を環境から除去する取り組みを進めています。その第一弾として今週マイクロソフトは、純粋にカーボンネガティブで、高い科学的整合性が検証されている自然と技術をベースにしたさまざまなソリューションで炭素排除ができるよう、画期的な提案依頼書 (RFP) を発行します。

資金によって大気から炭素を最大限排除できるよう、マイクロソフトは各プロジェクトの科学検証を倍増させ、今回の RFP を活用して炭素排除に関する最高レベルの科学情報と市場情報を収集および共有します。各プロジェクトは、マイクロソフトだけでなく、第三者の科学および市場アドバイザーが厳密に審査し検証します。そのアドバイザーの中には、非営利団体の Winrock International や、気候科学分野トップの学者が集結する顧問会社の Carbon Direct も含まれています。

これは他に類を見ない方法であり、すべてがうまくいくとは思っていません。何がうまくいき、何がうまくいかないのかを学び、都度アプローチを改善していく予定です。また、このプロセスで学んだことを公開し、他の企業が炭素排除の取り組みを加速できるようにしたいと思います。

バランスシートの活用

1 月にエイミー フッドが発表した 10 億ドルの Climate Innovation Fund による初の投資をここで発表したいと思います。マイクロソフトは、Energy Impact Partners (EIP) のグローバルプラットフォームにおける新技術のイノベーションに対し、5000 万ドルを投資します。この新技術は、世界のエネルギーと交通システムという、温室効果ガス排出量の大半を占める 2 分野を変革するものです。EIP は、脱炭素化や分散化エネルギー産業への移行に注力する大手ベンチャーキャピタル企業で、パートナー間で学びを共有しコラボレーションを促進しています。

気候変動の公平性と環境の正当性に向けた投資

最後に、マイクロソフトは 1 月に発表したことを越えた段階に向かっていることをお伝えしたいと思います。気候や環境問題は、すべてのコミュニティに平等に影響を与えているわけではなく、環境の公平性を幅広い問題として取り扱う必要があることも理解しています。そこで、マイクロソフトは今回、Sol Systems と新たな革新的パートナーシップを結んだことを発表します。Sol Systems は、再生可能エネルギーの開発と投資を手掛ける企業です。今回のパートナーシップでは、環境問題によって不当な影響を受けているコミュニティに投資することも含め、500 メガワット (MW) の再生可能エネルギーを確保できるよう取り組みます。

これは、マイクロソフトがこれまでに投資した再生可能エネルギーのポートフォリオの中で最大規模のもので、これまでにマイクロソフトが調達した再生可能エネルギー全体の約 4 分の 1 に相当します。今回のパートナーシップ以前にマイクロソフトが調達した再生可能エネルギーの総量は 1.9 ギガワットです。わかりやすく言うと、500MW というのは米国の家庭 7 万件以上に 1 年間電力を供給できる量です。

一部のコミュニティは、環境問題で不当に影響を受けています。データによると、米国の黒人とアフリカ系アメリカ人は、白人と比べ有害汚染に 1.54 倍さらされており、一般人口と比較して粒子汚染に接する率も 50% 高くなっています。研究者は、こうした汚染物質との高い接触率が、喘息や肺がん、心臓病の発生率の高さにつながっているとしています。

マイクロソフトと Sol Systems との取り組みは、資源の乏しいコミュニティにおける環境の正当性と公平性の実現に向けて再生可能エネルギーを購入するという、これまでに類を見ない取り組みです。2019 年 12 月に開始した行動計画を実行に移すこのパートナーシップの詳細は以下のとおりです。

  • 米国内で資源不足に陥っているコミュニティにて、500MW の太陽光エネルギープロジェクトのポートフォリオを展開します。地元のリーダーと協力し、マイノリティや女性が運営する企業を優先します。
  • コミュニティ主導の助成金や投資金として少なくとも 5000 万ドルを用意し、教育プログラムや職業訓練およびキャリアトレーニング、生活場所の復元、クリーンエネルギーやエネルギー効率化をサポートするプログラムなどに活用します。
  • 経済的に資源が不足し、不当に汚染の影響を受け、クリーンエネルギーへの移行の恩恵が受けられないコミュニティを対象とします。
  • 説明責任のある手法でコミュニティが確実に利益を享受できるようにします。その方法としては、第三者評価機関を活用してこの取り組みの社会的かつ環境的成果を測定し文書化するといったことも含まれます。

今回の合意により、マイクロソフトは 2025 年までに 100% 再生可能エネルギーに移行するという目標へと近づくことになり、気候変動の公平性と環境の正当性に向けた課題に対応することにもなります。

まとめ

マイクロソフトのミッションは、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにすることです。これは、「ビジネスの目的は、人や地球の問題に対処する有益なソリューションを生み出すことだ」というマイクロソフトの信念とも一致します。だからこそマイクロソフトは気候変動の危機に対応しようと日々取り組んでいるのです。それが地球のためになり、マイクロソフトのためにもなるのです。

持続可能性に向けた野心は、マイクロソフトだけで達成できるものではありません。今回のアップデートは、マイクロソフトとそのお客様、パートナー、非営利団体、そしてその他多くの人たちが世界中で大変な努力を重ね、献身的に取り組んできたことを反映したものです。協力して取り組んでこそ、より持続可能な未来を築くことができるのです。

【日本マイクロソフト株式会社について】
日本マイクロソフト株式会社は、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ時代のデジタルトランスフォーメーションを可能にします。「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」企業像を目指します。

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフト Web サイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Web サイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Web サイト http://www.microsoft.com/

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