アクセシビリティ進化モデル: アクセシビリティの取り組みをより明確に

Jenny Lay-Flurrie、チーフ アクセシビリティ オフィサー

※ 本ブログは、米国時間 7 月 14 日に公開された “Accessibility Evolution Model: Creating Clarity in your Accessibility Journey” の抄訳です。

私たちは、マイクロソフトのアクセシビリティやインクルージョン (包括性) に関するアプローチの秘訣についてよく質問をいただきます。このような質問へのシンプルな答えとしては、アクセシビリティやインクルージョンに関するトピックであっても、私たちがビジネスライクなマネージメントを心がけているということでしょうか。他のビジネスと同様に、能動的なマネージメントや計測を行うことで、持続的な成長や健全性を保障し続ける必要があります。それぞれの企業としてのミッションが、どのように持続的で、企業文化に寄り添ったアクセシビリティの成長につなげられるか、また他の組織でも理解を得やすく、適用しやすいように、私たちの学びや採用しているモデルの詳細についてご紹介します。

アクセシビリティへの取り組みは、長い旅路であるといえます。2016 年頃、私たちはアクセシビリティへのアプローチにも変革が必要であると気づきました。そこで、全社共通のアクセシビリティに関連したプログラムを、経過についてをより評価しやすく、目標を設定しやすい系統的なものへと再構築しました。これを実現するため、マイクロソフトのアクセシビリティリーダーシップチームは能力成熟度モデルデジタル成熟度評価モデルといった、成熟度モデルの最良の事例を深く調べました。これらのモデルから学んだ内容をチーム内で共有し、どのような範囲および内容でマイクロソフトに適用できるかを検討しました。その結果誕生したのが、私たちが 4 年以上にわたって改善しながら利用し続けているアクセシビリティ進化モデル (AEM) です。このモデルを活用することで、私たちは部門や役割ごとの前年比成長率、および経過の記録などを行えるようになりました。これが、アクセシビリティをビジネスライクに扱うようになる最初の一歩となりました。

このモデルでは、アクセシビリティを含む組織のビジネス上の課題への対処能力をより明瞭に示し、組織の行動や理念、方針などがどのように確実かつ持続的に目標達成に貢献しているかを、複数の構造レベルに照らし合わせることができます。

AEM には 8 つの包括的なレイヤーがあり、私たちはこれらを通してアクセシビリティの取り組みの進捗を評価しています。8 つのレイヤーとはそれぞれ、「人々と文化」、「ビジョン、戦略および提携」、「投資」、「規範」、「トレーニング、サポートおよびツール」、「調達」、「製品開発ライフサイクル」、そして「セールス、マーケティングおよびコミュニケーション」といった要素です。私たちは、それぞれの組織が異なる発展のペースや開始地点を持っていて、独自の基準を備えている場合があることを認識しています。ただし、アクセシビリティと障碍のある人々を包括する文化を構築するための出発点は、「人」であると考えています。

マイクロソフトでは、障碍を強みとして捉え、組織として行う全ての活動に包括的なアプローチをとっています。このアプローチにより焦点をあて、より深く実践することで、組織の文化は改善し、進化していきます。全ては、障碍のある人々を組織に迎え入れ、彼らの持つかけがえのない才能を開花させられる環境を整えることから始まります。マイクロソフトのミッションは全ての人、全ての組織の力となり、より多くを実現するお手伝いをすることです。そして、障碍のある人々の参入を促すことは、私たちの基本理念と深くつながっている取り組みです。障碍のある人々の才能を開発の最前線で活かすことで、私たちは世界中のさまざまなお客さまの多様なニーズに応えられる柔軟な製品やサービスを創るための知見を得られるのです。自閉症雇用プログラムを含めた私たちのインクルーシブ雇用プログラムへの注力は、持続的に価値を生み出す組織づくりの根幹にあるといえます。また、組織内の全ての人々がアクセシビリティについてのトレーニングを受け、包括的な活動に対する理解を得ることも重要です。そこで、私たちは「アクセシビリティ実践バッジ」に加え、テクノロジが全ての人々にどのように力を与えてくれるかに注力した 90 分間のオンライン講座を作成しました。そして、これらの取り組みに対する多くの前向きなフィードバックを受け、これまでの取り組みを踏襲した新しいプログラムを私たちは今年の 5 月に発表し、他の雇用者、非営利団体、そして消費者の皆さまが同じ方向を向いて歩めるよう呼びかけを始めました。Microsoft Learn で公開されているこのアクセシビリティの基礎学習コースを受講し、同様の取り組みがどのように皆さまの組織の利益につながるかをご確認ください。

AEM は、私たちの製品開発ライフサイクルの成熟度をより深く理解するきっかけにもなりました。テクノロジ企業としては必要不可欠ですが、どのような製品を取り扱う企業でも同様の原則で運営されていると考えます。AEM を基準とすることで、計画、デザイン、コーディング、ビルドと展開、フィードバックの受付がどのように行われ、そして各種の要件をどのように満たしつつ開発ライフサイクルが構成されるかに着目し、その中でアクセシビリティが通常のエンジニアリングプロセスの一部として内包されることを保障します。こういった点は、既に私たちの通常のプロセスに組み込まれていますが、テクノロジという枠組みの中でクリエイティブなイノベーションをさらに推し進める必要があることも認識しています。その上で、特にデザインフェーズにおいて、反復しやすいプロセスやエンジニアリングチーム内で柔軟性を確保することも重要になります。開発ライフサイクルを 5 段階の成熟度を参考に照らし合わせると、チームはまず、リアクティブ状態という、アクセシビリティを学習しつつ、テストやバグチェックなどを全て受動的に行っている地点から始めます。チームの成熟度が高まるにつれ、より能動的な活動を行うようになり、性能レビューを包括的な視点で行うようになります。こうした取り組みが一般化していくことで、受動的なバグ修正が減り、「シフトレフト」することできます。言いかえると、概念をデザインする段階などのより上流の工程でも、アクセシビリティに注目した包括的な視点を利用できるようになります。アクセシビリティを機能として組み込んだタイムリーな好例として、Microsoft Teams におけるカスタム背景やライブ字幕が挙げられます。現在、幅広くコラボレーションに利用されているこれらの機能は、耳が不自由な人々のコミュニティに参加しているエンジニアの一人が、サービスの改善策として打ち出した企画が実現した結果となります。ライブ字幕にいたっては、パンデミックの影響を強く受けた二月から四月にかけて、よりグローバルなコラボレーションを目指したユーザーに後押しを受け、約 30 倍の利用率を達成しています。

忘れてならないのは、アクセシビリティを尊重する持続的な文化を創る万能なアプローチは存在しないということです。それぞれの企業運営、そして企業理念にしっかりと根付くような、組織の力学に沿う独自のプログラムを生み出す必要があります。その上で、それぞれの企業は、どういった要素が成長を促すのかを学び、成熟していくにつれて採用したモデルを進化させることが重要です。アクセシビリティの旅にはまだまだ道のりが残っていますが、私たちのこれまでの旅路を共有し、そしてマイクロソフト AEM がどのようにアクセシビリティの成熟に貢献してきたかをお伝えすることで、皆さまがこれから取る道筋や運営モデルの良い参考となり、同時に取り組みを加速させる良い材料となることを願っています。

本ブログ記事には収まらないくらい、まだまだお伝えしたいことがあります。是非、Microsoft.com/Accessibility にて公開されている資料をご確認ください。

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