What’s Next for AI in Japan AI によるデジタルトランスフォーメーションを支援する日本マイクロソフトのアプローチ

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員
Azure ビジネス本部 本部長
上原 正太郎

イノベーションのスピードは加速しています。この 20 年の間に、テクノロジは私たちの働き方や暮らし方のあらゆる側面を変えてきました。ソフトウェアがあらゆる産業に変革をもたらしたように、AI (人工知能) は現在、ビジネスにおける顧客との関わり方、製品開発、オペレーションの最適化、従業員の能力向上などに変革をもたらしています。そして、技術革新が進むごとに、あらゆる組織が AI を活用する世界に一歩ずつ近づいています。

本ブログでは、マイクロソフトの AI へのアプローチについて、主に 2 つのパートに分けて解説していきます。まず、前半では企業全体のアプローチとしての Microsoft AI について、後半は、実際にお客様やパートナー様のデジタルトランスフォーメーション (DX) の実現を支援しているマイクロソフトの AI ソリューション、Azure AI について紹介します。

Microsoft AI について

マイクロソフトの AI は、幅広い製品群を擁する Microsoft Cloud をベースに提供されます。Microsoft Cloud は、組織のデジタル能力を強化すると共に、データの機密性と安全性に必要な保護を提供している、高い信頼性を持つ包括的なクラウドです。スタートアップ企業から Fortune 500 企業まで、規模を問わずさまざまな企業で利用されています。

■ 30 年間にわたる研究開発と AI ブレイクスルーを現実に変換する取り組み

マイクロソフトのアプローチがユニークであるのは、マイクロソフトリサーチ (Microsoft Research、MSR) という研究機関を有していることです。マイクロソフトリサーチは、世界 8 か所にラボがあり、1,000 人以上の研究者が次世代の AI を研究開発し、1991 年の設立以来、30 年にわたって、22,000 以上の研究論文を発表しています。特に、人工知能の分野では 3,500 以上の論文を発表しており、さまざまな AI 関連のブレイクスルーを起こしてきました。長い間蓄積を続けてきた情報をもとにした新しいアルゴリズムの開発や、モデルの精度の向上および改善、リサーチ内容の製品へのフィードバックなどを、好循環かつ早いサイクルで行っています。

マイクロソフトリサーチ

ビジネスにイノベーションをもたらすマイクロソフトの AI ポートフォリオ

マイクロソフトの AI ポートフォリオには、SaaS として提供されているソリューションやお客様がカスタマイズ可能な PaaS で構築されたものが含まれており、様々な機能を包括的に提供しています。このような様々なソリューションに AI が実装されており、コアな AI 機能を支えているのが Azure AI です。

AI ポートフォリオ

AI により、あらゆる業界や組織が有意義なイノベーションを実現し、有用な結果を得る支援をすることが、マイクロソフトが目指しているビジョンです。

責任ある AI の実現に向けたルール作りと社会貢献

AI の普及が加速する中で、AI への取り組み方や、AI に対する解釈にも変化が生じてきます。AI の可能性を存分に発揮するためには、信頼という堅固な基盤が必要です。マイクロソフトは、AI や機械学習サービスを開発するうえで、6 種の原則を以下の通り定めています。

  • プライバシーとセキュリティ
  • 包括性
  • アカウンタビリティ
  • 透明性
  • 公平性
  • 信頼性と安全性

マイクロソフトは、これら 6 つの原則に沿って、AI の倫理面に関する検討および整備を企業として進めています。例えば、AETHER (AI and Ethics in Engineering and Research) という委員会では、エンジニアリング部門とポリシー部門の責任者が、AI と関連技術の開発と実用化に伴う課題について、シニア・リーダーシップ・チーム (SLT) に助言する役割を担っています。AI ソリューションのサービス化/製品化をするには、この委員会での承認が必要となります。

さらに、マイクロソフトでは、AI ソリューションを提供するだけでなく、AI for Good と呼ばれるイニシアチブにも取り組んでいます。AI for Good では、5 年間で 1 億 6,500 万ドルを投入し、環境、アクセシビリティ、人道問題、文化遺産の保存、健康など、さまざまな分野で世界を改善するためにテクノロジと AI を使用している研究者、非営利団体、組織を支援しています。

Azure AI について

Azure AI

Azure AI は、マイクロソフトの全ての製品を支えています。例えば、Office や Xbox などの製品で使われている AI モデルは、すべて Azure Machine Learning でトレーニングされています。Azure は、マイクロソフトのデータサイエンスチームが洗練されたモデルをトレーニングできるだけでなく、すべてのマイクロソフトの製品の推論プラットフォームとしても機能しています。

Azure AI

Azure AI は、すぐに使える SaaS のような製品から、緻密なカスタマイズが可能な高度な PaaS ツールまで、ユーザーの固有のニーズや能力に応じて利用することができます。マイクロソフトのソリューションは、オフィスワーカーのようなビジネス職や、開発者、IT エンジニア、データサイエンティストなど、あらゆるタイプの従業員を支援します。これらを支えているのが、機械学習オペレーション (MLOps) +共通データプラットフォームです。

Azure AI ポートフォリオ

Azure AI は、開発者やデータ サイエンティスト向けに設計された、AI サービスのポートフォリオです。ポートフォリオは三段構成になっており、最下段に位置するのが、マイクロソフト製品群でも機械学習基盤として利用しているエンドツーエンドの機械学習プラットフォームである Azure Machine Learning、中段が画像認識や音声認識など人間の認知機能を API を通して事前学習済みのモデルを利用できる Azure Cognitive Services、そして最上段が Azure Applied AI Services という導入する業務シナリオや解決したい課題がある程度決まっているものに適したビジネス用途向けのサービスです。

Azure AI ポートフォリオ

Azure OpenAI Service

さらに、Azure Cognitive Services に Azure OpenAI Service という新たなソリューションが追加されました。このソリューションは、Azure 上で、高度で大規模な自然言語処理モデル GPT-3 を活用し、自然言語スピーチを要約してテキストを自動生成することや、文章の次にくる言葉を追加学習なしに予測するなど、様々な言語タスクで適用することが可能です。OpenAI の API を通して GPT-3 をご利用いただく場合と、Azure OpenAI Service としてマイクロソフトのマネージドサービスとして利用する 2 つのパターンで提供されます。後者については、以下の利点が挙げられます。

Azure Open AI Service

  • 1750 億のパラメーターを保有する GPT-3 モデルがベースとなっており、まったく新しい NLP 機能の実装が可能
  • マイクロソフトのエンタープライズレベルのデータプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスの保証、マイクロソフトの 6 原則に準拠している
  • 展開規模によるスケールアウトが容易であり、他の Azure サービスとの請求処理や管理などが一元化されるため、管理が容易

なお、Azure OpenAI Service は現在、招待制で提供しています。

Azure AI の活用事例

Azure AI の活用事例として、先日、ローソン様が Azure AI を採用した、店舗のデジタルトランスフォーメーションを推進する取り組みについて発表しました。本協業では、Azure AI を活用し、店舗のレイアウトに合わせて新たに設置するカメラ・マイクなどのデバイスを通して、売り場の通過人数や、お客様の滞留時間、購入率などの匿名化されたデータを可視化し、POS の売り上げデータと合わせて「店舗運営支援 AI」として分析することが可能となりました。

ローソン

また、ソニーセミコンダクタソリューションズ様との協業も発表しました。ソニーセミコンダクタソリューションズ様とマイクロソフトは、両社が共同で設立した「共同イノベーションラボ」(東京・港区) の取り組みの一環として、AI カメラを活用したソリューション開発に向けた、技術トレーニングの本格提供と参画パートナーの募集を開始しました。

ソニーセミコンダクタソリューションズ様との協業

こちらの共同イノベーションラボは、世界 4 箇所 (米国、中国、ドイツ、日本) に拠点を持ち、日本では、2021 年 7 月から東京にラボを設立し、既に以下の 5 社がパートナーとして参加しています。(社名五十音順、2021 年 12 月 13 日現在)

  • アバナード株式会社
  • SB テクノロジー株式会社
  • 株式会社 EBILAB
  • 日本システムウエア株式会社
  • 日本ビジネスシステムズ株式会社

本ラボでは、Azure Cognitive Services や、世界で初めて (※ソニーセミコンダクタソリューションズ調べ (2020 年 5 月 14 日発表時点)) AI 処理機能を搭載した、ソニーのインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を使ったトレーニングと技術検証を行っています。その中でも、株式会社 EBILAB 様は、本ラボでの技術トレーニングを経て、小売業向け棚監視ソリューションを開発し、実証実験を開始しています。本ソリューションでは、店舗での商品補充における販売機会損失を最小化することを目的にしています。商品が棚から無くなると、AI カメラが商品の欠品状況を確認し、Microsoft Teams と連携したウェアラブル端末に通知し、円滑な商品補充を可能にしています。

株式会社 EBILAB

日本マイクロソフトは、あらゆる業界や組織が AI を活用することにより、お客様のデジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、責任ある AI のアプローチを継続していきます。

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