マイクロソフト コーポレーション 自動車 モビリティ産業担当 ディレクター 江崎 智行
日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 モビリティサービス事業本部長 竹内 洋二
自動車・モビリティ業界は今、100 年に 1 度といわれる大転換期を迎えています。マクロ経済の大激変という困難に直面しつつも、大規模なイノベーションが進行しています。今回は、次世代モビリティの開発に伴う様々な課題を解決する、マイクロソフトの取り組みをご紹介します。
■次世代モビリティ Car to Cloud への支援
自動車・モビリティ業界では現在、3 つの変革が求められています。
1 つ目は「企業自身のデジタル トランスフォーメーション (DX)」です。これまでにない顧客体験の提案や、モノ・コト作りの改革、そして従業員の働き方の改革も必要です。そのような変革に対し、企業としての構えや現場でのオペレーションの変革も求められるでしょう。効率良く推進するには、テクノロジの力が欠かせません。
2 つ目は「車両の変革」です。サスティナブルでありながら、走る喜びをもたらすモビリティとして、価値の再定義や差別化も求められます。
3 つ目は「モビリティサービスの変革」です。自動車産業は従来のハードウェアを中心としたものづくりから、自動運転や EV など、ソフトウェアによる新しい車体験へと時代が移行しています。すでにコネクテッド (常時インターネットに接続された状態) は当然、SDV (Software Defined Vehicle) 化もさらに進み、その進化は車を超えて、すべてのバリューチェーンを巻き込んだ領域へと拡大しています。つまり、そう遠くない未来で、社会システム全体を繋いだ異業種連携の開かれたエコシステムの中心を、自動車産業あるいはモビリティが担うと考えることができます。
お客様のニーズの変化やマクロ経済の影響など、様々な規制や多くの課題を抱えながら、顧客体験を最大化するには、do more with less: より少ないリソースでより多くのことを実現することが重要です。ここからは、マイクロソフトが注力する5つの領域ついてご紹介します。
1. 車両イノベーションの加速を支援
SDV の開発はもはや、個社での対応が困難なレベルに達しています。時間やコストを抑え、開発を加速させるためにも、パートナー エコシステムやコミュニティが重要な鍵を握ります。その中で、マイクロソフトは非競争領域のオープン ソースの推進、商用化の支援そして戦略的パートナーシップという点で、貢献できると考えています。
マイクロソフトは Eclipse SDV Working Group の戦略メンバーの 1 社として、その構築を進めています。
Eclipse SDV Working Group では、SDV に必要な技術や機能を協調しながら開発をすすめ、アセットとして標準化を目指します。その中で、マイクロソフトは非競争領域をオープン ソースとしてサポートし、 OEM (Original Equipment Manufacturer) や Tier 1 企業様に対し商用化の支援を行います。そしてオープン ソースのアセットをパートナー様の環境下で最適かつ最大限に活用できるよう、Microsoft Azure のクラウドを利用して量産につなげます。
当社の戦略的パートナーシップは、将来を見据えた取り組みです。例えば半導体サプライヤー様と連携し、マイクロソフトが持つアセットの活用といった可能性を探り、自動車・モビリティ業界へ貢献したいと考えています。
■モビリティが新しい消費者体験の場に
次に Car to cloud の事例をご紹介します。General Motors の Ultifi プラットフォームです。Microsoft Azure と AI サービスを利用してソフトウェア開発を簡素化し、セキュリティも担保したデジタル モビリティ サービスの提供を 2023 年内に予定しています。
例えば車載ソフトウェアの更新や新たな機能をクラウド経由でスピーディに提供するほか、運転者や同乗者に合わせて高度にパーソナライズした消費者体験を、車を通じて届けます。近い将来にこのような体験をサブスクリプション サービスとして数百万人のお客様に提供し、自動車メーカーの新たな収入源としても期待されています。
2.レジリエントなオペレーションへの支援
不確実で不透明な社会において、いかに柔軟に、迅速に対応できるように構えを作るかは企業にとって重要な課題です。
メルセデス・ベンツ USA 様は独自のデジタル生産エコシステム MO360 を進化させた、MO360 Data Platformをマイクロソフトと協業し Azure 上に構築。サプライチェーンのボトルネックの早期発見と改善、リソースの動的な再配置を可能にし、2025 年までに生産効率 20% 向上を見込んでいます。
また、製造チームに向けて Microsoft Power BI を展開し、データの可視化も推進。日々の改善活動が継続して行われる環境を整えています。さらに CO2 の排出量やエネルギー・水の使用量、廃棄物管理を監視・予測する分析ツールも搭載し、カーボン ニュートラルを強力にサポートしています。
■マイクロソフトのサスティナビリティへの取り組み
マイクロソフトでは、2030 年までにカーボン ネガティブ ゼロを目標に掲げ、さらに 2050 年までには創業以来排出された CO2 量の削減を目指しています。さらに、これまで培ってきた経験や技術を、Microsoft Cloud for Sustainability として提供し、パートナーの皆様の CO2 削減も支援します。
社会全体の CO2 のうち約 3 分の 1 は、輸送業から排出されているといわれています。サプライチェーン全体での CO2 削減に向け、マイクロソフトでは自動車・モビリティ業界に特化した支援に注力していきます。
3.生産性向上への取り組み
Toyota Motor North America 様では、統合型ノーコード、ローコード開発ツールの Microsoft Power Platform を導入し、ビジネス課題を解決しています。プログラミングの知識がなくても開発できる Power Apps を使い、現場の従業員の方々が 400 以上ものアプリを開発しています。例えばエクセルのシートを Power BI のダッシュボードに変換し、毎月 10 時間もの労働時間を削減。効率化と課題解決を加速しています。
4.差別化された顧客体験創出への支援
次にメタバースの活用事例をご紹介します。Fiat 様は 2023 年 1 月、バーチャル ショールームで新モデルを発表。このショールームでは、例えばご自宅のリビングにいたままで、お客様はメタバース上の専門家から商品の説明を受けることができます。ボディのカラーバリエーションを確認したり、試乗したり。最終的には購入までメタバース上で実現しています。
もう一つはインダストリアルの活用事例です。日産様ではマイクロソフトの HoloLens 2 と Dynamics 365 Guides を活用し、作業支援システムを構築しています。Intelligent Operation Support System が生産手順の学習を支援し作業トレーニングを効率化、さらに講師の負担を大幅に削減しています。
5.リファレンス アーキテクチャーによるパートナー エコシステムの支援
SDV 化やオープン ソース化に伴い、自動車・モビリティ業界においてセキュリティ対策は重要な課題です。サイバー セキュリティに関しては各社対応では十分とはいえず、サプライチェーンあるいはバリューチェーン全体で対策する必要があります。マイクロソフトは今後 3~5 年にかけて 200 億ドルを投じ、安全に利活用できるエコシステムの環境整備を推進します。
その他、これまで個別最適で提案してきたDX支援を、今後 3 つの領域に関して共通で必要なものを標準化して提供します。
まずは自動車メーカーなどコネクテッド フリートのお客様へ、より高速で安価、高価値のフリート管理ソリューションを提供します。
2 つ目は AVOps 領域です。自動運転開発に必要なクラウド、エッジ、車両、AI の包括的なセットツールを提供し、新規開発の負担を軽減します。
3 つ目はデジタル セリング領域です。メタバースの利点をフル活用しながら、顧客体験に革新をもたらす対話型のコミュニケーションの実現を支援します。
日本市場におけるマイクロソフトの取り組み
日本マイクロソフトでは、2021 年 7 月にモビリティ サービス事業本部を新設しました。これはグローバルにおいて唯一日本のみの試みで、自動車業界だけでなく鉄道・航空・海運そして物流など、モビリティに関わる多くのお客様の支援を目指しています。
日本はグローバルに活躍する企業様が多いだけでなく、製品やサービスも世界最高水準を誇ります。既存のアセット資産にマイクロソフトの技術を組み合わせ、サービスの DX 化はもちろん、移動に限らない新たなコトや体験の開発など、消費者に付加価値を提供できる新規事業の推進を支援します。
マイクロソフトはお客様が目指すビジネスを実現するために、必要なソリューションを提供するソフトウェア カンパニーです。自動車・モビリティ業界のパートナー様と今後もより深く協業し、貢献していきます。
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