マイクロソフトの AI へのアプローチ とは?

マイクロソフトの AI へのアプローチ とは?

※本ブログは、米国時間 2023 年 2 月 17 日に公開された ”What is Microsoft`s approach to AI?” の抄訳を基に掲載しています。

マイクロソフトは、人工知能 (AI) こそが、私たちの時代を象徴するテクノロジであると考えています。

マイクロソフトは、AI 研究の最前線に立ち、強力で革新的な AI テクノロジを製品やサービスに統合することで、お客様がより多くのことを達成できるよう支援しています。Azure に支えられた Microsoft AI は、Windows、Xbox、Microsoft 365、Teams、Azure AI、Power Platform、Dynamics 365、Microsoft Defender において、日々数十億回ものインテリジェントな体験を提供しています。

マイクロソフトの AI ツールとテクノロジはあらゆる組織のあらゆるレベルの人たちを支援できるよう設計されています。世界中の職場、ホームオフィス、学術機関、研究所、製造施設などで使用され、科学者、営業担当者から、農家、ソフトウェア開発者、セキュリティ専門家に至るまで、あらゆる人々に貢献しています。

マイクロソフトが AI に巨額の投資を行ってきたのは、AI が人々や産業、社会に貢献できることを確実視しており、テクノロジと人々を結びつけ、責任を持って AI の可能性を実現することにコミットしているからです。

マイクロソフトの AI に関する取り組みの詳細については以下をご覧ください。

責任ある AI 活用に向けたマイクロソフトのアプローチ

マイクロソフトは、強力なテクノロジを創造するときには、そのテクノロジが責任を持って開発され、使用されることも保証しなければならないと考えています。マイクロソフトは、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、インクルージョン、透明性、説明責任という中核的規範に基づく設計思想としての責任ある AI の実践にコミットしています。

マイクロソフトは、社会に良い影響を与える AI を開発・展開するために、この原則を全社的に実践しています。

マイクロソフトの責任ある AI 担当最高責任者ナターシャ クランプトン (Natasha Crampton) は、次のように述べています。「適切なガードレールがあれば、最先端のテクノロジを安全に世界に送り出し、人々の生産性を向上し、差し迫った社会問題の解決につなげることができます。」

AI システムは、開発・導入を行う人々によるさまざまな意思決定の産物です。システムの目的、人々と AI システムとの間のやり取りなどにおいて、これらの意思決定を有益かつ公平な結果が得られる方向へと導く必要があります。

クランプトンは次のように述べています。「それこそが、マイクロソフトが実践している 『設計思想としての責任ある AI』に他なりません。マイクロソフトは、システム設計の初期段階からライフサイクル全体にわたって責任ある AI への配慮を徹底し、適切なコントロールと緩和策を、後付けではなく、構築中のシステムに組み込んでいます。」

このアプローチですべてのリスクを排除できるわけではありません。他者の声に耳を傾け、学び、改善する姿勢が最も重要です。これにより、開発者に対して、あらゆる制限を明確にし、意図した使用法と潜在的誤用を考慮し、システムの恩恵を実現し、リスクから保護する方法を幅広く検討するよう促しています。

マイクロソフトは、責任ある企業による積極的な自主規制の取り組みが、これらの新しい規律への道を開くのに役立つと考えています。しかし、同時に、すべての組織が自主的に責任ある慣行を採用するわけではないことも認識しています。

最近、マイクロソフトのプレジデント、ブラッド スミス (Brad Smith) は、思慮深い政策立案を呼びかけ、現在の AI の動向に対応するために企業が取り組みを開始することの重要性について述べました

「国や地域社会は、民主的な立法プロセスにより、人々が法の下で適切に保護されるようにするための線引きをどうすべきかについて、全体的議論を行う必要があります」とスミスは書いています。

「効果的な AI 規制は、最もリスクの高いアプリケーションを中心にし、急速に進歩するテクノロジと変化する社会の期待に対応して、成果にフォーカスし、長期的に有効なものでなければなりません。AI の恩恵をできるだけ広く普及させるためには、世界の規制のアプローチは、AI 自身がそうであるように、相互運用性と適応性を備える必要があります。」

民主的な立法プロセスこそが、企業が責任を持ってAIを開発・導入できるようにするための実行可能な規範を作るための、産業界、学術界、そして、市民社会とのグローバルな対話の重要な一部であると、マイクロソフトは考えています。

このプロセスの一環として、マイクロソフトは自社の学びとベストプラクティス、そして努力の指針となるツールを公に共有することにコミットします。その 1 つに Responsible AI Standard があります。これは、マイクロソフトのハイレベルな規範を、エンジニアリングチームのための実用的なガイダンスへと変換するためのフレームワークです。

マイクロソフトは、すべての変革的テクノロジと同様に、AI にもリスクがあることを認識しています。このテクノロジを利用して、人間の欠点を突いたり、偽の情報で人々を標的にしたり、民主主義を損ねたり、危害を加える人も出てくるでしょう。このようなリスクをあらかじめ想定し、軽減していく必要があります。

マイクロソフトは、6 年以上にわたって全社横断的、分野横断的な責任ある AI の取り組みを行い、将来に向けた強固な基盤の構築を続けています。マイクロソフトは、テクノロジの急速な進化と社会的期待の変化に対応するために緊急に取り組む必要があることを明確に認識しています。

「マイクロソフトの AI は、地球上のすべての人と組織がより多くのことを達成できるようにする、という企業ミッションに根ざしています。これは、AI の責任ある開発と使用に対する確固たるコミットメントに支えられています」とクランプトンは述べます。

AI 研究に対するマイクロソフトのアプローチ

Microsoft Research は、30 年以上にわたり、コンピューティングの基礎を発展させ、新しい科学的発見を革新的テクノロジに転換し、お客様に向けて価値を創造し、広く社会に利益をもたらしています。

マイクロソフトの研究者は、分野・機関・地域を超えて協力し、視覚・音声・言語・意思決定・機械学習における最先端の研究成果を提供しています。会話音声認識機械翻訳イメージキャプション自然言語理解常識的質問応答の分野で、AI のブレークスルーを達成しました。

近年は、より高度な情報処理に基づき、自然で直感的な操作が可能な大規模モデルの開発に注力しています。ディープラーニングの進歩、そして、インターネット規模のデータセットと Microsoft Azure のますます強力になる AI スーパーコンピューティングリソースにより、多様なアプリケーションで幅広いタスクを実行する AI モデルの作成が可能になりました。

Microsoft Research のバイスプレジデント兼マネージングディレクターのアシュリー ロレンス (Ashley Llorens) は次のように述べています。「大規模 AI がコンピューティング研究の状況を変えています。このシフトにより、人間と機械の知能への理解、そして、それらがどのように交わり、どのようにお互いを補強しあうかについての理解を深める、新しいフロンティアが見えてくるはずです。」

マイクロソフトの研究は、モデルアーキテクチャを進化させ、より効率的で、さらに幅広いタスクに適応できる AI テクノロジを生み出す上で重要な役割を担っています。

マイクロソフトの研究者は、長年にわたってこれらの問題に取り組み、前例のない規模でより迅速に機械学習モデルを訓練できる並列計算などの分野における専門知識を培ってきました。これが、Microsoft Research が開発し、現在ではコンピューティングコミュニティで幅広く使用されている、オープンソースの分散学習向けディープラーニング最適化ライブラリ DeepSpeed などのイノベーションにつながっています。

また、マイクロソフトは、自社の製品やサービスを通じて価値を提供し、現実の問題を解決することにもフォーカスしています。たとえば、Project FarmVibes は、AI とデータを融合し、農家が持続可能な農業のやり方を取り入れるのに役立つツールをオープンソースで提供しています。そして、Microsoft Climate Research Initiative は、気候変動に共同で取り組む科学者の学際的チームに、マイクロソフトの研究成果とコンピューティング能力を提供しています。

マイクロソフトの新組織 AI4Science は、ディープラーニングを自然科学に応用し、自然現象のモデル化と予測を行い、気候変動、グリーンエネルギー、創薬などの重要な問題の解決の支援にフォーカスしています。グローバルに活躍する研究者と技術者の集合体である、マイクロソフトのプロジェクトチームは、インターネット上のデータセットを利用するのではなく、自然現象を基礎方程式からシミュレーションして学習データを生成する、新しい機械学習のアプローチを模索しています。

これにより、研究者は、量子レベルから銀河レベルまでのスケールで自然現象を理解し、予測することが可能になり、ひいては大気中の炭素を除去する新材料の発見などのブレークスルーが期待できると、ロレンスは述べています。

「結局のところ、マイクロソフトは人間の体験を向上し、社会全体にポジティブな影響を与えるような方法で、研究のフロンティアを押し広げることにフォーカスしています」

「そのためには、グローバルな研究コミュニティに関与し、可能性の前提に絶えず挑戦していく必要があります。それが、私たちが必要とする未来の進歩を生み出すのです。」

AI インフラに対するマイクロソフトのアプローチ

AI に対する信頼が高まり、企業がより少ないリソースでより多くのことを行うことを目指す中、お客様は、テクノロジの採用を合理化し、ワークロード全体にインテリジェンスを迅速に適用することで、業務の改善、効率化の推進、コスト削減を実現するための信頼できるパートナーを求めています。10 年以上前に、マイクロソフトは、このような AI システムの需要の急激な伸びを予測し、それに対応するための特別なコンピューティングインフラの構築を開始しました。

現在、マイクロソフトの AI プラットフォーム Azure AI は、生産性と創造性の新時代を切り開く大規模 AI モデルの実行を目的に最適化されたインフラを提供しています。マイクロソフトの多大な投資により、お客様のニーズに合った幅広い AI 搭載製品を提供でき、きわめて計算量の多い AI の学習や推論のワークロードに対して、クラス最高のパフォーマンスとスケールを実現できます。

マイクロソフトの独自のアーキテクチャ設計により、市場で最も高速なグラフィックプロセッシングユニット (GPU) と、数千の GPU をチェーン接続するネットワークアーキテクチャを組み合わせ、AI モデルの学習と推論を大規模に実行することが可能になりました。

「高帯域インターコネクトを備えた数千の GPU があれば、そこから先はあらゆることが可能になります」とマイクロソフトの AI Platform 担当コーポレートバイスプレジデントのエリック ボイド (Eric Boyd) は述べています。

Azure が提供する適切なエンタープライズ級プライバシー、セキュリティ、そして、責任ある AI の保護により、より多くのことをより容易に大規模で達成できるため、大小さまざまな組織が Azure AI を活用したソリューションを開発しています。

マイクロソフトは、Azure を世界に向けた AI スーパーコンピューターとして構築し、プラットフォームとして AI を民主化するというビジョンの土台とすることにコミットしています。マイクロソフトは、クラウドスーパーコンピューティングテクノロジのフロンティアを押し広げ、2020 年に初の世界トップ 5 にランクされたスーパーコンピューターを発表し、その後、複数の大規模な AIスーパーコンピューターシステムを構築しています。

また、OpenAI との提携により、目的に応じた AI 最適化インフラ機能をチューニングし、OpenAI のモデルファミリーを訓練して、研究の進展と開発者の構築作業に向けて展開しました。このインフラは、現在、すべての Azure のお客様にご利用いただけます。

「他の人々に対しても、OpenAI で使用したのとまったく同じスタイルのインフラを提供します。それが、私たちの標準的なやり方だからです」とボイドは述べています。

マイクロソフトの Azure OpenAI Service は、企業や開発者に、GPT-3.5、Codex、DALL∙E 2 などの高性能 AI モデルを業界最高水準のアップタイムと大規模展開対応な拡張性により提供します。これは、GitHub CopilotPower Platform、そして最近発表された Microsoft Designer や Bing と Edge の AI 対応検索機能などマイクロソフト製品の AI モデルを稼動するために使用しているものと同じプロダクションサービスです。

マイクロソフトは、AI モデルを大規模に訓練し、サービスを提供することから得られるフィードバックやインサイトに基づき、AI インフラの進化を続けています。マイクロソフトのチームは、AI ワークロードに最適化された GPU、ネットワーク、データセンターの設計について、業界パートナーと歩調を揃えて取り組んでいます。

「マイクロソフトは常に最先端を走り続けており、お客様はその恩恵をすべて享受できます。最上級の訓練インフラ、最上級のソフトウェア、最上級のネットワーク、これらすべてを組み合わせることで、最上級の体験を提供できるのです」とボイドは述べています。

AI の社会貢献に向けたマイクロソフトのアプローチ

マイクロソフトは、AI がグローバルな社会における最大の課題の解決に貢献できると信じています。マイクロソフトの AI の社会貢献イニシアチブは、アクセシビリティ、デジタルリテラシー、公平性、持続可能性と気候変動、人権とレジリエンス、健康格差、食糧不安、サイバーセキュリティなどの分野において、個人や非営利団体が進歩を加速するための資金、テクノロジ、専門知識を提供します。

AI for Good Lab のチーフデータサイエンティスト兼ディレクターのフアン ラヴィスタ フェレス (Juan Lavista Ferres) は、「AI が独自に支援できる問題、つまり、AI が単なる解決策の 1 つではなく、唯一の解決策となるような問題があります」と述べています。

たとえば、自然災害のリスクをよりよく理解し、対策に役立てるために、人間が住んでいる場所をすべて地図化するプロジェクトがあります。また、インドでは建物の屋根のマップを作成し、その材質から、ある種の災害で破損しやすい建物の優先順位を決定するプロジェクトが行われています。また、世界中の再生可能エネルギー施設を地図化し、太陽光発電所や風力発電所の影響を把握するプロジェクトもあります。

「人間が衛星画像を見て、そこに人間が住んでいるかどうかを理解するには 400 年を要しますが、AI はこれを 1 時間で行えます。これらの AI モデルによって、すべての情報を一元的に把握し、そこから人間が必要な判断を容易に下すこと可能になります」とラヴィスタ フェレスは述べています。

マイクロソフトの AI for Good Lab は、ビッグデータと Azure のクラウドテクノロジを活用した応用研究とデータの可視化を行う研究所です。そのデータサイエンティストのチームは、学術界、非営利団体、政府の戦略的パートナーや専門家と協力し、世界の重要な問題に対応すると共に、現在進行中のプロジェクトの進捗をより適切に測定し、支援が求められる可能性があるギャップを特定するために取り組んでいます。

プロジェクトは問題と同じくらい多様であり、マイクロソフトの努力とパートナーの努力の組み合わせにより推進されています。

たとえば、AI for Health プログラムでは、Fred Hutchinson Cancer Research Center、IRIS、Novartis Foundation、Seattle Children’s Research Institute といった機関が主導する研究に投資しています。こうした取り組みは、特に医師が少なく医療ニーズの高い地域における、医療サービスの低コスト化に貢献します。

マイクロソフトは、AI が世界の喫緊の課題の解決に貢献できる大きな可能性を感じていますが、その一方で、AI の限界も認識しています。たとえば、ラヴィスタ フェレスによれば、皮膚がんを検出するアプリでは、すべての肌の色が対象になっているかなど、十分な場所から十分なデータを得ているか、特定の誰かを排除していないかを確認することが特に重要です。

「AI モデルを学習させる場合、モデルは持っているデータから一般化を行うのであって、持っていないデータから一般化することはできません。そのため、手持ちのデータに偏りがあると問題が発生します。ループの中に人間が入ることが重要な要素なのです。マイクロソフトは、特定の集団だけでなく、すべての人に利益をもたらすことができるソリューションを探求しています。」

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