日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長 兼 デジタルセールス事業本部長
三上 智子
日本マイクロソフトは、中堅中小企業のお客様のデジタルトランスフォーメーション (DX) 推進を支援しています。今回は、AI がどのように中堅中小企業の DX に貢献できるのか、最新の活用例と取り組みをご紹介します。
当社では中堅中小企業のご支援において、「ハイブリッドワークの推進」、「ビジネスプロセスのデジタル化」、「スタートアップ企業と連携したインダストリー DX」「高度化するサイバー攻撃への対応力強化」の 4 つの分野にとくに注力しています。
ここ数年のトレンドとして、日本の中堅中小企業のお客様のクラウドへの移行が急速に進んだことが挙げられます。新型コロナウイルス感染症の対応で、待ったなしでリモートワーク、クラウド利用が進んだこともあり、Microsoft Office 製品をクラウドサービスで利用されている中堅中小企業のライセンス数が、2020 年から 2023 年の現在までの 3 年半で約 2 倍となっています。引き続き BCP (事業継続計画) や多様な人材獲得などの観点から、クラウドサービスへの注目が高まっていることから、日本マイクロソフトは、さらなるクラウドシフトをご支援していきます。
AI が中堅中小企業のお客様にもたらす価値
マイクロソフトは、今年 1 月に OpenAI とのパートナーシップの拡大とともに、マイクロソフトのあらゆる製品に、製品を一変させるような AI 機能を搭載していくことを宣言しています。クラウドサービスに AI のパワーが加わることで、中堅中小企業のお客様の飛躍にさらに貢献できるものと考えています。
マイクロソフトが米国の小規模企業経営者 1,000 人を対象に実施した調査によると、小規模企業経営者は、AI には日々の業務や今後のビジネスを改善する可能性があることを認識しています。半数近く (47%) が、AI は自社の事業にとって貴重な資産になる、または大変革をもたらす可能性があると回答しており、中でもそのように回答した Z 世代は半数以上 (71%) にのぼります。理解が深まれば期待も高まる傾向にあり、自身を AI 専門家とみなしている人のうち 10 人中 9 人近く (88%) が、AI は事業に大変革をもたらすものである、または貴重な資産であると考えています。
(レポート全文の抄訳はこちら)
日本では以前から労働生産性の低さが指摘されていますが、日本商工会議所の調査によると、日本の大企業と比べて、中小企業の労働生産性は 1/3 に留まっています。また、日本では労働人口の減少も相まって、AI に対する期待はすでに大きなものになっています。マイクロソフトが定期的に実施している働き方動向調査 (Work Trend Index) によると、日本の回答企業の 62% が、「自分の仕事量を減らすために、できるだけ多くの仕事を AI に任せたいと考えている」と回答しています。また、「職場の AI の価値について最も重視することは何か」という質問に対して、「従業員数の削減」よりも「従業員の生産性向上」を選ぶ傾向は 約 2 倍高くなっており、AI の生産性向上に向けた期待の高さがうかがえます。当社では、AI が日本の中堅中小企業のお客様の生産性向上や技術継承において、大きな役割を果たすと考えています。
中堅中小企業のお客様が活用できるマイクロソフトの AI は大きく分けて 2 つあります。1 つ目は、Microsoft 365 Copilot のように日々お使いいただいているマイクロソフト製品で AI を利用すること、2 つ目は、ISV 各社が当社の Azure OpenAI Service を活用して開発される、様々なクラウドサービスを利用いただくことです。
1.Microsoft 365 Copilot などのマイクロソフト製品で AI を活用
マイクロソフトでは、Microsoft 365、Dynamics 365, Power Apps, Windows などの製品において、AI 機能を搭載した Copilot の提供を発表していますが、AI は主役ではなく、お客様・ユーザーが主役であることは変わりません。マイクロソフトの AI は、副操縦士 (Copilot) として、あらゆるビジネスに寄り添い、サポートします。とくに中堅中小業のお客様に日々文房具のようにお使いいただいている Microsoft 365 に Copilot が入ることで、数多くの機能を便利にすぐ活用いただけるようになります。Microsoft 365 Copilot はアーリーアクセスプログラムの段階にあり、提供方法や時期は未定となりますが、日本のお客様にご紹介できる日をとても楽しみにしています。
2. Azure OpenAI Service を活用した ISV のサービスで AI を活用
中堅中小企業が利用するクラウドサービスにおいても、AI の利活用が進んでいます。その中から Azure OpenAI Service を活用した 4 つの事例をご紹介します。
株式会社 IVRy 様は、中堅中小企業を主な対象とした、電話自動応答サービス IVRy に Azure OpenAI のテクノロジを活用することで、電話応対を 24 時間 365 日利用可能にする AI 電話システムを開発し、試験提供されています。電話対応に関わる業務を AI が担うことにより、中堅中小企業における「働く人」がより生産性が高められるものと期待しています。
採用管理システム sonar ATS を展開されている、Thinkings 株式会社様は、Azure OpenAI を活用した機能を順次搭載されています。募集要件をインプットすると、過去の採用進捗データをふまえて、効果の高いテキストや画像を自動生成する機能を開発されています。採用担当者の業務負荷を軽減するとともに、企業と応募者の双方に革新的な体験を提供するソリューションとなっています。
株式会社 wevnal 様は、Azure OpenAI を活用した接客オートメーションサービス「BOTCHAN AI」を開発し、24 時間運用可能なカスタマーサポートの自動化に取り組まれています。日中だけでなく多様な時間に行われるオンラインでの消費者行動において、消費者に寄り添ったサポートの実現を目指されています。
最新テクノロジと法務の知見を組み合わせた製品の開発・提供をされている、株式会社 LegalOn Technologies 様は、AI 契約審査プラットフォーム LegalForce において、Azure OpenAI Service で提供される ChatGPT の API を活用した、条文修正アシスト機能のベータ版を今年 5 月末から提供され、企業が修正文案の検討にかける労力や時間の軽減を支援されています。
他にも多くの ISV やスタートアップ企業が、Azure Open AI の利用を開始されています。中堅中小企業のお客様がすぐ利用できるサービスが今後続々登場しますので、ぜひご期待ください。
日本マイクロソフトの支援施策
当社のスタートアップ企業支援についてご紹介したいと思います。2019 年末に、インダストリー DX の加速に向けて、スタートアップの皆さまとのコラボレーションの拡大を発表させていただき、当初の目標として、2026 年までに 500 のスタートアップ企業支援を掲げていましたが、昨年 6 月にこちらを 1,000 社へ上方修正しました。この 1 年は、我々のこのプログラムの認知向上、スタートアップエコシステムにおけるパートナー企業との協業に加え、AI を活用したサービス展開を計画されているスタートアップ企業から多くの引き合いをいただいたことで、昨年度の約 2 倍の 482 社のスタートアップに新たにプログラムに参画いただきました。このさらなる加速を受け、2026 年時点のターゲットをさらに上方修正し 2,000 社のスタートアップ企業の皆さまをプログラムを通じて支援させていただくことを目標とします。
このモメンタムをさらに強めていくための新たな施策として、AI の活用で世の中の課題解決を目指すスタートアップを支援するため、「Generative AI Acceleration Program」を本日 2023 年 6 月 22 日に開始したことを発表します。Generative AI を活用したビジネスに取り組むスタートアップ企業を、我々のパートナーであるベンチャーキャピタルネットワークを通じて支援します。本プログラムにおいて当社では、AI に関連する情報提供やイベントの開催、各ベンチャーキャピタルの投資企業向け勉強会、メンタリングセッション等を実施します。参加ベンチャーキャピタルは、ANOBAKA、サイバーエージェント・キャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、HIRAC FUND、インキュベイトファンド、東京大学エッジキャピタルパートナーズの 6 社です。
また、私たちのご支援はスタートアップ企業に留まりません。当社では地域 DX の推進を目的として、Microsoft Base を全国で展開しています。昨年 6 月時点では 17 拠点でしたが、現時点で 26 拠点にまで拡大しており、今月末には、秋田県の横手市、秋田市の 2 拠点が同時に開設予定ですので、6 月末時点では 28 拠点となる予定です。Microsoft Base を通じて、地域の皆さま、中堅中小企業の皆さまへのご支援を拡大して参ります。
コロナ渦を経て、中堅中小企業においてもクラウドシフトがこれまで以上に進んでいる中、AI のパワーが加わることで、日本全体が活気づくものと期待しています。日本マイクロソフトは、中堅中小企業の皆様が、より多くのことを実現できるよう、引き続きご支援してまいります。
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