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テクノロジが生活の一部になる瞬間: 視覚障碍者用無料アプリ日本語版 Seeing AI が寄り添う、親子の何気ない日常
少し冷えた初冬の風が心地よく部屋の中に入る暖かな午後、ある家族を訪問していた。東京で、障碍者の生活や移動の支援を行う団体の代表を務める石井暁子さんは愛娘のあみちゃんと共に絵本を読んでいた。
「もう少し右かな、もう少し上かな」

4 歳になるあみちゃんは、母が Seeing AI を使って絵本を読んでくれるのが大好きだ。今では母が使う Seeing AI の読み取りをさりげなく手伝う。絵本のページを携帯電話のカメラで写し、Seeing AI が中のお話にあるテキストを読み上げる…読み上げられた音声を聞いて石井さんとあみちゃんはにっこり笑い、ゆっくりと次のページへ進んでいく。絵本を読む、というごくありふれた母子の時間を Seeing AI はつないでいる。
「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というマイクロソフトのミッションに基づいて開発された、視覚に障碍がある人を支援する無料の携帯アプリケーション Seeing AI は、1 年前の 2019 年 12 月 3 日から日本語を含む 5 か国語が追加され、現在では 9 カ国語、世界 70 カ国で多くの人の生活に寄り添っている。Seeing AI は AI のテクノロジによって撮影された短いテキスト、ドキュメント、製品、等を読み取るだけでなく、撮影された人や風景を説明する。
若いころに受けた手術をきっかけに視覚障碍者となった石井さんは、日本語版が提供される前から、英語版で Seeing AI を利用していた。Seeing AI は特に生活に関して密接にかかわる機能がいくつも組み込まれており、いつもそばに置いてある携帯電話 1 つで必要なサポートを得ることができる。日本でも視覚に障碍がある人に向けた支援アプリはいくつかあるが、機能ごとに別のアプリが必要なのだという。室内の明るさを音で確認したり、部屋にいるあみちゃんが何をしているのか撮影して様子を確認したり、幼稚園からのお知らせのドキュメントを読み上げたり。常に携帯から聞こえてくる読み上げられた日本語テキストの音声は非常に高速で、もはや普通の人では聞き取れない程のスピードだ。石井さんは微笑む。
「聞き取りにくいでしょう? おそらく普通の方が聞かれる会話などのスピードの 5 倍位あるんじゃないでしょうか。私は目が見えない分、全ての作業を耳で行います。文章を読む、何かを見る、皆さんが一瞬で行うことを、私は聞いて理解し、そのうえでアクションを取らないとといけません。だから自ずと速いスピードで聞き取ることに慣れてしまったんですね。英語版のときは、日本語の文章は認識できなかったですし、風景など英語で読むものもこのスピードで聞き取ることはどうしても困難でした。やはり母国語ではないですし、英語が得意なわけではなかったので…」
日本語版を使うようになって、自分自身でより多くのことがこなせるようになった。幼稚園のお知らせを自分で読み、次の日にあみちゃんに何を持たせたらいいのかすぐに判断し、用意出来る。これまでは、ドキュメントを一度スキャナーで読み込ませて、デジタル化してテキストに変換してから、パソコンで読み上げてはじめて、やっと何のお知らせなのか、何が必要なのか理解することができた。本当にやりたいことまでたどり着くのに、いくつものステップを踏まなければならなかったことが、携帯電話のカメラで撮影し、パソコンでの読み上げと同じくらい高速で聞き、動けるようになったことで、自分で出来ることの幅が一気に拡がった。生活が効率的になった分、出来た時間でゆっくりあみちゃんと一緒に絵本も読めるようになった。そして日本語版を利用するようになって、今まで以上にもともと好きだった料理をもっと楽しめるようになったという。
(YouTube 動画:[マイクロソフトフィランソロピー] 視覚障碍者向けトーキングカメラ アプリ: Story with Seeing AI)
冷蔵庫から肉の入ったパックを取り出し、「短いテキスト」機能で商品ラベルを確認する。
鶏のもも肉、牛のブロック、豚のスライスなどプラスチックの容器の上から触っただけではわかりにくかった商品も賞味期限と共に理解し、間違わずに選ぶことが出来る。
次にパプリカを取り出すと、「色」の機能を作動させる。手に取ったパプリカにかざすと、「赤」「黄色」と聞こえてくる。

「人物を登録する機能を使って、あみや夫を登録してあるんです。そうすることで撮影した写真の顔を識別し、家族が映っている写真だけを選ぶことが出来るようになりました。」
これまで、写真を撮影しても後からその写真が何の写真なのかを理解することは難しかったが、Seeing AI の「写真の参照」機能を使うことで、写真に何が映っているのか理解することが出来るようになった。そしてさらにあみちゃんや夫を登録することで、たくさんの人が映っている写真の中から家族が映っているものだけを抜き出すこともできるようになったのだ。

「あみや家族の写真だけは常に手元に残して置きたいんです。彼女の成長の記録でもありますし、1 枚も削除したくありません」
彼女の話を聞き、1 つ 1 つの機能が、彼女の生活の中で進化している姿を目の当たりにした。これまで私たちはお客様に対して、様々な製品を紹介しその特徴や機能を伝えてきたつもりだ。しかしその製品の本当の価値は、生活の中で根付いてこそ生み出されるものなのではないかと改めて感じた。
今彼女は一般社団法人の代表として、同じように障碍のある方の自立の支援を行っている。その中には、Seeing AI を使った生活の向上を伝えるセミナーやイベントも含まれている。
「私が考える「障碍」は唯一無二の「個性」だと考えています。その個性 (障碍) に磨きをかけたとき、それぞれの原石はダイヤモンドのか輝きを放つ、そう考えています。1 年あまり日本語版の Seeing AI を使ってみて、Seeing AI はまさにこの個性を磨いてくれるための無くてはならないものなんです」
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