2025 年に注目すべき 6 つの AI トレンド
ポール ナイハン (Paul Nyhan)
※本ブログは、米国時間 12 月 5 日に公開された “6 AI trends you’ll see more of in 2025” の抄訳を基に掲載しています。
2025年、AI は仕事や家庭で使う単なるツールから、双方で欠かせない存在へと進化していきます。
AI を搭載したエージェントは、より高い自律性を持ち、家庭や仕事でさまざまなタスクをこなし、生活をよりシンプルにしてくれるでしょう。世界規模では、AI は気候危機や医療アクセスまで、私たちが直面する最大の課題に対処する上で、新たな解決策を見つける手助けをしてくれると期待されています。
こうした進歩は、AI の記憶力や推論の能力の向上など、さまざまな技術革新に支えられています。そして、マイクロソフトは引き続き、安全で信頼性の高い AI の開発と利用を支援するというコミットメントを堅持していきます。
「AI はこれまで不可能だと思われていたことを実現できるようになり、私は過去 1 年間に、多くの人々や組織が AI を実験的導入から本格運用に移行する様を目の当たりにしてきました」と、 マイクロソフトの事業開発戦略ベンチャー担当エグゼクティブバイスプレジデントであるクリス ヤング (Chris Young) は述べています。「これは、このテクノロジが私たちの生活のあらゆる側面を変革する、大規模な変化の始まりにすぎません。」
過去 1 年でビジネスリーダーや AIの導入に関わる意思決定者の生成 AI 利用率は 55% から 75% に急増しました。新たな AI ツールの登場は、その可能性をさらに広げていくでしょう。
今後どのような展開が待っているでしょうか? 2025 年に注目すべき 6 つの AI トレンドと、それぞれの分野でマイクロソフトがどのようにイノベーションを牽引していくかをご紹介します。
この 1 年で、AI モデルはより高速かつ効率的になりました。現在、大規模な「フロンティアモデル」は執筆からコーディングに至るまで、幅広いタスクをこなせるようになり、特定のタスクや業界に特化したモデルも登場しています。
2025 年には、さらに多くのことを、より優れた形で実現できるようになるでしょう。
例えば OpenAI o1 のような高度な推論能力を備えたモデルは、人間が難解な問を解く時にするような論理的なステップを踏んで複雑な問題を解決することができます。こうした能力は、科学、コーディング、数学、法律、医療などの分野で有益なだけでなく、契約書の比較やコード生成、多段階に渡るワークフローの実行支援においても有用です。
これらはモデルのイノベーションにおいて重要な進歩ですが、データのキュレーションや事後学習の進化も同様に重要です。例えば、マイクロソフトの小規模言語モデルである Phi モデル は、高品質なデータのキュレーションにより、モデルの性能や推論の能力向上を実現しました。
また、マイクロソフトの Orca と Orca 2 は、合成データを小規模言語モデルの事後学習に活用することで、より規模の大きなモデルでしか実現できなかった性能を発揮し、専門的なタスクでもより優れた成果を示すことを証明しました。
モデルをより高速かつ高性能、専門特化させることで、2025 年には AI エージェントを含む、新しくさらに有益なAI 体験が実現するでしょう。
マイクロソフト AI フロンティア ラボのマネージング ディレクターであるエジェ カマル (Ece Kamar) は「モデル自体のトレーニング方法と、複数のモデルがエージェントでどのように活用されるかの間には相乗効果があると考えています。そして、人々は今まで以上に、自分のニーズに合ったモデルを選び、構築する機会を得るでしょう。」とコメントしています。
現在、Fortune 500 企業の約 70% の従業員が、Microsoft 365 Copilot を活用し、メールの整理や Teams 会議での議事録作成など、多くの反復的で単調なタスクを効率化しています。2025 年には、新世代の AI を搭載したエージェントがさらに多くの業務を自動化し、タスクを代行するようになるでしょう。
「エージェントは、AI 時代のアプリのようなものだと考えてください」と、ビジネス インダストリー Copilot担当のコーポレート バイスプレジデント チャールズ ラマナ (Charles Lamanna)は言います。「私たちがさまざまなタスクに異なるアプリを使うのと同じように、エージェントはあらゆるビジネスプロセスを変革し、私たちの働き方や組織の管理方法を革命的に変えるでしょう。」
メモリ、推論、そしてマルチモーダルといった能力の進化により、エージェントは高度なスキルと新たな対話方法を駆使し、より複雑な業務を遂行できるようになります。
企業においては、レポート作成やオフィス機器関連の対応、さらに福利厚生に関する問合せといった人事関連業務をエージェントに任せることで、従業員がより価値の高い業務に集中できるようになります。また、複数のエージェントを設定することで、たとえば、在庫トラブルをサプライチェーン管理者に警告したり、新しいサプライヤーを推薦したり、発注業務を実行したりするなど、日常的な課題を解決し販売活動の継続を支援します。
中でも朗報は、技術的なスキルに関係なく誰でもエージェントを構築し、利用することができることです。たとえば、Copilot Studio はコーディングなしで簡単にエージェントを作成することができ、開発者であればAzure AI Foundryを使って、複雑なタスクを実行する、より高度なエージェントを開発することができます。
これらは、組織が一群のエージェントを持つという未来を実現する土台であり、今後、単純なプロンプトへの応答から完全な自律型まで、単独、または、複数のエージェントが協力して、個人やグループ、または部門を代理、もしくは補完する形でプロセスを実行するようになります。
そして、カマルはこのような AI 開発と AI エージェントの進化において、人間による監督は中心的な位置を占め続けるだろうと語ります。
「2025 年には、エージェントにどこまでの範囲を許容するのか、そして常に人間の監督が求められることについて活発な議論が交わされるでしょう。」
Microsoft Copilot は、あなたの AI アシスタント として、一日を通してあなたをサポートします。2025 年には仕事以外の生活の様々な場面でAI がさらに活躍するでしょう。
Copilot は、プライバシー、データ、セキュリティを守りながら、タスクを簡素化し、優先順位をつけ、日々増え続ける情報の洪水からより多くの時間を確保できるようにサポートします。
人々のつながりをより良くサポートし、機能を増やしながら、今後1年間を通じて Copilot は進化していきます。
たとえば Copilot Daily は、一日の始まりにニュースや天気のサマリーを親しみのある声で読み上げます。
Copilot Vision は閲覧中の Web ページを理解して、質問に答えたり、次のステップを提案したりするなど、オンライン上で見ているものを認識して会話することができます。
さらに、Copilot は意思決定もサポートします。たとえば、新しいアパートの家具を探す際に、インテリアに合う家具を見つけ出し、風水を考慮した配置を提案する、なんてこともできます。
これはまだ始まりに過ぎません。今後数年間で AI はより正確になり、エモーショナルインテリジェンスも向上し、より自然な対話が可能になるでしょう。
AI はエネルギーなどの資源を必要としますが、革新的なソリューションが課題解決に貢献しています。たとえば、2020 年の世界のデータセンターのワークロードは 2010 年と比較して約 9 倍に増加しましたが、電力需要はわずか 10% の増加にとどまりました。
これは、マイクロソフトが AMD 、Intel、NVIDIA などと協力し、カスタムシリコンシリーズである Azure Maia や Cobalt、さらに大規模 AI システムを効率的に冷却するための液冷熱交換ユニットなど、ハードウエアを効率化しているためです。
また数年以内には、AIが稼働するデータセンターの冷却に水を一切使用しない新システムを導入し、コールドプレートなどの高効率な液冷システムを拡充する予定です。
これらはすべて、2025 年に AI インフラをより効率的かつ持続可能にする取り組みの一部です。
上記に加え、マイクロソフトでは、より効率的な AI インフラの構築を進める中で、ほぼゼロカーボンの鋼材やコンクリート代替品、クロスラミネート木材などの低炭素建材の使用を進めています。
さらに、マイクロソフトは風力、地熱、原子力、太陽光といったカーボンフリーエネルギー源への投資を継続しており、利用する電力網により多くのカーボンフリー電力を供給するために長期的な投資に加え、世界中でクリーンエネルギーソリューションの拡大を推進しています。
「これらは2030 年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、廃棄物ゼロを目指すマイクロソフトのインフラ計画の一部に過ぎません」と Azure 最高技術責任者兼情報セキュリティ担当副最高責任者兼テクニカルフェローであるマーク ルシノビッチ (Mark Russinovich) は述べています。
「2025 年以降、私たちはデータセンター、エネルギー、資源に対して、より包括的な視点を持つようになると考えています。その結果として、インフラ全体の効率を最大化できるようになるでしょう。」
AI の評価とは、 AI が包含するリスクを定義し、評価することであり、責任ある AI を構築する上で欠かせない要素です。来年のこの分野における最も大きな進展は「テスト」と「カスタマイズ」という2つのキーワードに集約されると考えています。
リスクや脅威を評価できれば、それらに対処したり、軽減したりすることができます。たとえば、不正確な AI の反応である「ハルシネーション」と呼ばれる根拠のないコンテンツを検出し対応できるようになります。
マイクロソフトの「責任ある AI」の最高製品責任者であるサラ バード (Sarah Bird) は、「安全な AI アプリケーションを構築するマイクロソフトの取り組みの一環として、厳格で包括的なテストの開発を進めている」と述べています。このテストでは、ハルシネーションのような内部の脅威の評価に加え、高度化する外部からの攻撃を検出する能力の向上に注力しています。
「モデルがより安全になる一方で、私たちは最悪の脅威、つまり洗練された敵対的ユーザーが起こしうる脅威に対してテストや評価といった対策を強化する必要があります。そのための基礎はすでに構築されており、引き続き強化に努めます。」とバードは語っています。
また、ユーザーは企業内での AI アプリケーションの運用方法をより細かく制御できるようになります。コンテンツのフィルタリングや業務に適したガードレールの設定をカスタマイズできるようになるだけでなく、たとえば、ゲーム会社で、ゲームを開発している従業員が見ることのできる暴力的なコンテンツの種類を指定する、といったことも可能になるでしょう。
「管理者は、Microsoft 365 Copilot を使って、職場で適切なコンテンツの種類を設定し、従業員が業務を遂行する環境を整備することができます」とバードは述べています。「コントロールとカスタマイズこそが、まさに未来です。」
AI はすでに世界中で劇的な影響を与え、スーパーコンピューターから天気予報に至るまで、あらゆる分野で進歩を牽引しています。AI は科学研究における歴史的なブレークスルーを後押しし、自然科学やサステナブル素材、新薬開発そしてヘルスケアなどの幅広い領域で新しい可能性を切り開いています。
例えば、2024 年には、Microsoft Research が命を救う新薬の発見といった難解な生体分子科学の課題を、前例のない速さと精度で探求できる突破口を開きました。 AI 駆動のタンパク質シミュレーションシステムを使用して、研究者たちは生体分子ダイナミクスをシミュレートする新しい方法を発見したのです。この方法は AI2BMD と呼ばれ、これまで解決できなかった問題に挑戦する助けとなり、タンパク質設計、酵素工学、新薬開発などの生物医療研究の加速に寄与します。
AI の科学への影響は今後も拡大し続けるでしょう。
「2025年には、科学研究における AI 活用が、世界の最も喫緊の課題解決をどのように推進できるのかに関心が集まるでしょう」とMicrosoft Research のコーポレートプレジデント兼マネージング ディレクターであるアシュリー ロレンス (Ashely Llorens) は見解を語っています。
「これらのツールが、サステナブル素材の設計や命を救う新薬の開発といった重要な課題に取り組む研究者や研究機関の成果に対し、顕著な影響を与え始めるでしょう」
2025 年には、確かなトレンドが一つあります。それは、AI が引き続き革新を促進し、世界中の個人および組織に新たな可能性を切り開いていく、ということです。
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