Worldwide Commercial Business 担当エグゼクティブバイスプレジデント
ジャドソン アルソフ (Judson Althoff)
※ 本ブログは、米国時間 1 月 25 日に公開された “How customers accelerated industry innovation during a year of disruptive change: A look back on 2020” の抄訳を基に掲載しています。
2020 年が大きな変化の年であったことに異論はないでしょうが、同時に業界とテクノロジのイノベーションが加速した年でもありました。それらのイノベーションの多くは既に進行中のものでした。
たとえば、パンデミック発生の前にも、多くのお客様がクラウドによる最新のコンピューティング形態を採用し、さらにイノベーションを追求するための経済的エンジンを構築しようとしていました。また、現場から役員に至るまで組織内のあらゆる人がイノベーションに参画できるようデジタル体験を民主化することへの注目度も高まっています。さらに、データ資産の統合による戦略的データ活用に向けた意思決定も行なわれています。
このようなデジタルの取り組みを加速するお客様は、最終的により俊敏かつ堅牢になり、2021 年から先の継続的成長を達成できるでしょう。
急速な業界イノベーションと COVID-19 に対するお客様の対応
2020 年の初めには業界をリードするお客様のイノベーション事例がありました。Faurecia、LG Electronics、ZF は、クラウド、エッジ、IoT、AI サービスを活用した新たな自動車の体験を発表しました。Samsung は、現場ワーカーのコミュニケーションを容易にするプッシュトゥートークボタンを備えた新しいスマートホンを発表しました。Canada Goose はエンドレスアイルの概念をさらに強化し、H&M は Azure IoT を活用した持続可能性の向上に対する継続的取り組みを公表しています。Microsoft と BMW が設立したイニシアチブ Open Manufacturing Platform に Anheuser-Busch InBev、Bosch Group、ZF Friedrichshafen が参画しました。マイクロソフトは、BlackRock、NBA、NFL、The Coca-Cola Company との画期的なパートナーシップを発表し、Affirmed Networks と Metaswitch Networks を買収しています。
その後、COVID-19 の流行により、組織はまったく予期しなかった新たな現実に対応することを迫られました。事業継続性が何にも増して重要になり、お客様は可能な限り迅速にテクノロジを採用しようとしていました。遠隔医療がきわめて重要になり、St. Luke’s University Health Network の現場ワーカーは、テクノロジベースのソリューションにより、トリアージのプロセスを拡張し、保護器具の保管業務を効率化できました。U.S. Centers for Disease Control and Prevention は、組織による感染者のスクリーニングと治療の選択肢選定を容易にするための COVID-19 発見ボットをリリースしました。マイクロソフトは、複数業界を横断して研究と科学的活動を加速し、C3.ai およびトップクラスの大学と共に、ホワイトハウスが主導するコンソーシアムに参画しました。学びの文化を維持することが今まで以上に重要になっており、University of Bologna、University of Sydney、Case Western Reserve University は、授業を継続し、学生の社会的つながりを維持するために遠隔授業を採用しました。また、マイクロソフトは、#LearningNeverStops の取り組みを支援するためのリソースと技術専門知識を提供する団体に参画しました。
2020 年 1月から 3 月のお客様事例に関する追加情報はこちらをご参照ください。
回復とニューノーマルへの適合のためのデジタルテクノロジ
2020 年の中盤以降も、お客様は、俊敏性を向上し、回復を加速させ、変化するニーズに迅速に対応するためにテクノロジの採用を加速していきました。Imperial College Healthcare NHS Trust は、高リスクエリアの医師数の制限と保護器具の管理のために複合現実テクノロジを採用しました。PCL Construction は、COVID-19 の簡便な検査を提供する、AI を活用した Citizen Care Pods の製造を開始しています。UnitedHealth Group は従業員の症状のスクリーニング管理ツールを提供開始しました。ImmunityBio は、ワクチン開発のコンピューター分析のためにマイクロソフトのクラウドを採用しました。
ソニー、日立、GE Aviation、BNY Mellon、Volkswagen などのお客様が、パンデミックの圧力にもかかわらずビジネスをさらに推進するために、デジタルテクノロジを採用し、スマートカメラの展開とアナリティクスや業務効率性の向上など多くのことを実現しています。ソーシャルディスタンスの要請により、Sri Lanka Tea Board とその Tea Traders Association は、約 200 万の雇用を維持するために、ネットオークションシステムを開発し、Chattanooga Film Festival の主催者は屋内退避命令の施行下でもコミュニティ向けのバーチャルな体験の提供を維持しました。
業界がニューノーマルに適合していく中で、デジタルな未来に投資するお客様が増えています。たとえば、マイクロソフトは、Walgreens Boots Alliance と Adobe との提携により、よりパーソナライズされたヘルスケアとショッピングの体験を提供するクラウドプラットフォームの提供を開始し、デジタル化が進展する世界における競争力向上で顧客や企業を支援するために FedEx との複数年にわたる提携を発表しました。また、Workday や SAS などの企業とのコラボレーションにより、共通のお客様のクラウドテクノロジによる業績向上を支援しています。また、健康状態を改善するために、より良い患者体験を創造するように設計された初の業界特化クラウドソリューションである Microsoft Cloud for Healthcare の提供を開始しました。
2020 年 4 月から 6 月のお客様事例に関する追加情報はこちらをご参照ください。
業界全体の堅牢性の獲得とクラウドファーストのビジネス戦略の採用拡大
通常、堅牢性の獲得と変化への適合には時間と準備期間を要します。しかし、デジタルへのシフトは信じられないほどのペースで進んでいます。Georgia Office of the State Treasurer や New Jersey Courts などの政府機関は、重要な行政サービスと法廷手続きを維持するために安全なリモートワーク環境を採用しました。従業員や職員の能力向上にも生産性、安全性、セキュリティを目指した新たなツールが必要です。Suffolk、Biersdorf AG、Lumen (旧社名: CenturyLink)、T-Mobile などのお客様が、安全なリモートアクセスや体温チェックのためのサーマルイメージングなど、バーチャルと対面の両面で従業員を支援しています。
組織とエンドユーザーの俊敏性を向上するために、クラウドファーストのビジネス戦略を採用するお客様が増えています。たとえば、Mastercard、Morgan Stanley Capital International、Finastra、Refinitiv、National Australia Bank、Standard Chartered Bank および Munich RE は、安全なカスタマーソリューション提供のためにクラウドを採用しました。PepsiCo、Woolworths、Marks & Spencer、Office Depot および JB Hi-Fi は、ビジネスモデルの合理化を達成できました。AT&T は、企業による機械器具や装置のクラウド接続を支援する新ソリューションを発表しました。Telstra のシチズンデベロッパーは手作業プロセスの自動化を達成し、SK Telecom はアジア市場に最初のゲーミングクラウドを提供開始しました。また、マイクロソフトは Citrix と緊密に連携し、クラウドベースのツールとサービスにより、未来のワークプレースの再創造と変化する市場環境への対応で企業を支援しています。
業種にかかわらず、お客様は様々な目標に向けてデジタルのパワーの活用を進めています。マイクロソフトは、bp と Shell との協業による持続可能性向上の取り組みを発表しました。European Parliament は、AI テクノロジを活用して国会討論の内容を 24 言語でアクセス可能にしています。PBSF は、神経損傷リスクが高い新生児を迅速に発見できるシステムを開発しました。また、マイクロソフトと提携した Land O’Lakes は、農業における新しいイノベーションを達成し、農村地域におけるブロードバンド接続のギャップ解消に貢献しています。Africa’s Talking は、クラウドへのアクセスが限定的な地域にも経済的機会をもたらすための支援を行なっています。Sodexo は障碍を持つ現場ワーカーの雇用機会創出を支援しています。
2020 年 7 月から 9 月のお客様事例に関する追加情報はこちらをご参照ください。
業界の未来を再創造するためのパートナーシップ
2020 年の第 4 四半期に、マイクロソフトは、AI とインテリジェントエッジコンピューティングによる人材、パートナーシップ、製品への投資を通じて宇宙産業にイノベーションを提供するための取り組み Azure Space を開始しました。SpaceX、SES、Viasat といった企業とのパートナーシップにより、官民両分野において、衛星通信によるコネテクティビティと新たな地理情報サービスを提供していくことを発表しました。
自動車業界においては、マイクロソフトは、CNHi と Accenture との戦略的パートナーシップにより、ネット接続性を備えた産業車両を開発することを発表しました。これにより、CNHi のデジタル能力が強化され、業績向上に貢献すると共にワークフォースのデジタル対応力と持続可能性向上が期待されます。英国に拠点を置く Wayve は、都市地域における最先端の自律走行車の開発を支援するために、マイクロソフトのクラウドプラットフォームを採用しました。また、米国では、Cox Automotive が、Microsoft 365 による安全なコミュニケーションを推進し、100 万ドルのコスト削減を達成すると共に、Kelly Blue Book や Autotrader.com といった同社の 25 ブランドにおいてリモートワークへの移行を容易に実現できました。
エネルギー業界では、欧州全域での炭素捕獲と保存の標準化と普及を目的とした、ノルウェー政府とエネルギー企業 Equinor、Shell およびTotal との共同プロジェクト Northern Lights にマイクロソフトが参画しました。マイクロソフトは、Shell と Equinor とのパートナーシップをさらに推進し、エネルギー企業が、利用可能な機器を適切に管理し、在庫を最適化できるスマートな在庫管理ソリューションの共同開発を行なうことを発表しています。デンマークでは、Energinet が、Azure と GitHub を活用したオープンソースのアプローチにより、Datahub ソリューションを再開発し、電力業界によるデータのアクセス性を向上し、グローバルなグリーンエネルギーへの移行を推進するインテリジェントなソリューションの構築を支援しています。
金融サービス業界では、Vanguard が 2 万 3,000 人の従業員に向けた統合デジタルワークプレース構築のために Microsoft 365 を展開し、リモート環境での生産性維持のために Teams を採用しました。オーストラリアの Judo Bank は、パンデミック期間中も従業員がシームレスかつ安全かつ確実に勤務できるよう Microsoft 365、Teams、Surface デバイスを採用しました。また、オーストリアの Raiffeisen Bank International AG (RBI) は、Microsoft 365 により、業務の中断なしに 4 万 6,000 人の従業員をわずか 1 週間でリモートワーク体制に転換できました。インドでは、Paisabazaar.com が、Azure 上のエンドツーエンドのデジタル化スタックにより、顧客がパンデミック中にリモートで与信情報に容易にアクセスできるようにしました。チリの、Banco de Credito e Inversiones (BCI) は、俊敏性を高めながら、システムの性能、信頼性を向上するハイブリッドクラウドモデルの開発による高度なテクノロジ体験を顧客に提供することにフォーカスしています。
ヘルスケア業界では、マイクロソフトは Humana との緊密な協業を継続し、Power BI により多様なデータを統合して有効な洞察を獲得し、データ中心型の文化によって重要なビジネスの意思決定と市民開発を支援するダッシュボードを開発しました。オーストラリアの NSW Health Pathology は、170 万人の患者の迅速な検査結果に対する可視性を獲得するために マイクロソフトの Power BI プラットフォームを活用しています。また、マイクロソフトは、Microsoft Cloud for Healthcare サービスを公式に開始しており、Providence は、現場の医師を支援し、パンデミックに迅速に対応するためにこのソリューションを採用しました。
製造業界では、マイクロソフトは、機器とプロセスを Azure 上で標準化するクラウドファーストアプローチで Zeiss と協業し、Azure のハイパフォーマンスコンピューティング (HPC)、AI、IoT を活用して、OEM に新たな品質管理ソリューションを提供しました。アイルランドでは、Johnson Controls が Azure Digital Twin テクノロジを活用し、建築物と空間の設計と管理のために統合されたデジタルツインソリューションを提供しています。BlueScope は、Azure Synapse と Azure Databricks を活用し、自社のデータとアナリティクスを変革し、拡張性がきわめて高い分析機能を獲得しています。Dell Technologies は、Microsoft Teams により 15 万 7,000 人の従業員のバーチャルコラボレーションを標準化し、効率性向上のために Microsoft 365 アプリケーションを採用しています。自動車レース業界では、マイクロソフトは、フランスの Renault DP World F1 チームと協業し、AI と Surface を活用してイノベーションサイクルの加速と最適化を行なっています。
メディアと通信業界では、マイクロソフトは、Warner Bros. と協業し、バスケットボールにインスパイアされ、LeBron James と Bugs Bunny をフィーチャーしたコーディングプログラムにより新世代の学生たちを支援しています。Verizon は、マイクロソフトとのコラボレーションにより、Azure のクラウドとエッジ機能を自社のモバイルエッジコンピューティングプラットフォームに提供し、開発者による超低レイテンシを活用したアプリケーションの構築を支援しています。また、マイクロソフトは、Deutsche Telekom と提携し、Azure によるハイパフォーマンスクラウドコンピューティング体験を提供し、人々と企業が Microsoft 365 と Teams によってつながりを強め生産性を向上できるよう支援しています。
小売業界と消費者向け製品業界でも、マイクロソフトのソリューション全般にわたり需要は堅調です。2,000 万種の製品を販売している、英国の大手消費者向け製品メーカーの RB は、マイクロソフトのクラウドプラットフォームを活用して、世界中のスーパーマーケットや小売業者との連携を強めています。PepsiCo は、マイクロソフトの AI ソリューション Project Bonsai を活用したコンピュータービジョンにより完璧なチートスを生産できるようにしました。Dr. Martens は、Dynamics 365 を使用して自社ビジネスの可視性を向上し、Crocs は、Teams を活用して、顧客、小売業者、他の従業員とのコミュニケーションを効率化しています。MARS Petcare は、Teams に対応したハンズフリーのヘッドセット RealWear に投資し、リモートのコラボレーションをサポートし、自律的な保守作業により効率性を向上しています。また、マイクロソフトは、Starbucks と共に、同僚に感謝を示すために Teams 内で Starbucks のギフトカードを送ることができるアプリや 新しい Teams ミーティングの背景といった新たなデジタル体験を開発しました。日本では、ZOZO グループ が、クラウド環境への移行に伴い、Microsoft 365 のセキュリティソリューションを活用しています。
公共分野では、9 万人の職員が 2,500 万人の国民に奉仕している、英国最大の政府機関、労働年金省 (Department for Work and Pensions) が、クラウドネイティブの Surface Pro デバイスを展開することで、クラウドファーストの戦略に移行し、ワークフォースのセキュリティと効率性を向上しています。オーストラリアの科学者たちは、Department of Agriculture, Environment & Water と共に、AI とクラウドテクノロジを活用して、ウラン採掘の影響から Kakadu National Park を保護しようとしています。米国では、Department of Veterans Affairs が自社システムの現代化を加速し、COVID-19 の感染状況と VA 病院での病床の管理のためにクラウドベースのダッシュボードを展開しました。Samish Indian Nation は、Microsoft Teams を活用し、ソーシャルディスタンスが強制される状況でも先祖伝来の儀式を行なっています。教育分野でも、デジタル化の勢いは継続しています。University of the District of Columbia と University of South Florida Morsani College of Medicine は、Surface デバイスを活用し、最新の教育体験を提供しています。
2020 年はマイクロソフトのお客様にとっての新たな課題が明らかになった年であり、お客様は変化する業界環境の中で、自社の目標を再設定し、変化する多様な業界環境の中で適切な方向性を発見しようとしてきました。これらの課題への対応を支援すべくお客様に選ばれたデジタルパートナーとして、マイクロソフトは、特に人材の採用を通じた業界専門知識の獲得、パートナーとの協力によるテクノロジ投資、そして、ソリューション構築と私たちが取り組んでいるパートナーシップへのフォーカスを維持していきます。
これらのアプローチの組み合わせにより、マイクロソフトは、お客様にとってより良いパートナーとなることができます。そして、お客様のニーズに応えた業界特化型クラウドの展開を行ない、お客様と共にイノベーションを行なうことで、市場での差別化とシェア獲得を実現し、成功に導くための次世代ソリューションを共に構築していきます。
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