Xbox パイロットプログラムが、障碍のあるクリエイターにつながりと学びの貴重な機会を提供
アティマ チャンサンチャイ (Athima Chansanchai)
※本ブログは、米国時間 2023 年 1 月 4 日に公開された ”Creators with disabilities get rare chance to connect and learn in Xbox pilot program” の抄訳を基に掲載しています。
マディ デュバーネイ (Madi DuVernay) さんは、ずっと演劇の世界で生きてきましたが、パンデミックが発生したことで生の観客の前で演じることができなくなりました。そこで彼女は、パートナーがやっていたゲームと実況配信に機会を見出したのです。
26 歳のデュバーネイさんは、自らのことを LGBTQIA+ で障碍のある黒人の女性だと自称しており、ADHD と自閉スペクトラム症を抱えているといいます。「友達とゲームをしながら、演技とステージ上に立ちたいという思いを具現化する方法を模索しています」と、デュバーネイさん。ただ、このようなキャリアパスは彼女も初めてで、どうやって生計を立てるのか、どうやって企業にアプローチしてスポンサーシップやパートナーシップを結ぶことができるのかもわかりませんでした。
デュバーネイさんは、第 1 回目の Xbox Next Level (XNL) Creator Program に参加した5人のうちの1人です。XNL は、マイノリティ コミュニティのゲーム ストリーマーを支援するために設計された 6 週間のアクセラレータープログラムです。無料のバーチャル セッションでは、クリエイターとしてフルタイムで働くにあたって役立つツールやリソースに焦点を当て、パートナーシップの可能性やホスティング リールの作成、カメラのプレゼンテーション、ソーシャル メディアのベストプラクティスなどについての指導が行われました。
「他の黒人の人たちが、自分たちのやっていることにどれだけ情熱を注いでいるのか、またどうやってこの業界で成功したのかについて話しているのを聞くと、とてもわくわくします」
テキサスに住むデュバーネイさんにとってストリーミングは比較的新しい分野だったので、急成長するこのキャリアを進むにあたり、このパイロットプログラムはありがたいものでした。
「プログラムはとても役立ちました。こうした情報はオープンにしておくべきだと思いますし、このような世界に飛び込みたい人がいつでも活用できるようにしておくべき内容だと思います」とデュバーネイさん。「最初は何もわからないので、とても大変なのです」
またデュバーネイさんは、プログラムで黒人のスピーカーたちに出会えたことも貴重な体験で、励みになったと話します。黒人スピーカーたちとは、コミュニティや文化を共有していると感じたといいます。
「他の黒人の人たちが、自分たちのやっていることにどれだけ情熱を注いでいるのか、またどうやってこの業界で成功したのかについて話しているのを聞くと、とてもわくわくします」と語るデュバーネイさんは、プログラムが率直な意見やフィードバックを言える安全な空間だったという点も評価しています。「残念ながら、あまりそういった人たちの話を聞く機会がないのです。だからこそ、とても思い出深い体験でした」
デュバーネイさんは、プログラムでより多くの人種的・民族的マイノリティの人たちと出会いたかったとしていますが、「Xbox は、ゲームの世界を変えようと多大な努力をしていて、疎外されているコミュニティの人たちがより適切に注目されるよう取り組んでいます」と述べています。
デュバーネイさんは自身のコミュニティ内で、超自然現象のビデオやゲーム、メンタルヘルスについて語っています。こうした課題について話すことができない人たちの代弁者になることを目指しているのです。
クリエイターのマイク ラケット (Mike Luckett) さんも、プログラムに参加しました。ラケットさんは、11 年前にバイク事故で脊髄を損傷した後、前に進むことができたのは、ゲーム コミュニティと家族のおかげだとしています。この怪我でラケットさんは米陸軍中尉としてのキャリアを絶たれ、何ヶ月にもわたって辛いリハビリに取り組みました。今では手動の車いすを使って自立した生活ができるようになりましたが、手を使った操作が困難なため、ゲームコントローラーをうまく持てなくなりました。
ラケットさんはコントローラーをカスタマイズする方法を見出しましたが、それがいつもうまくいくとは限らず、怒りでコントローラーを壊してしまい、しばらくゲームをやめていました。補装具を利用する退役軍人の支援を行っている団体を通じてコントローラーを修理してもらったのですが、それがきっかけでラケットさんは Xbox Adaptive Controller を試用するようになり、フィードバックも提供してゲームの世界に復帰したのです。
これまでアダプティブ ゲーム機器が不足していることに不満を感じていたラケットさんは、インクルーシブ デザインに強い関心を抱くようになりました。XNL クリエイタープログラムでも、ラケットさんが Xbox で取り組みたいと考えていたテーマはインクルーシブ デザインです。一番興味深いと感じたセッションでは、コンテンツに集中できるようになり、活動の幅も広まり、短編ビデオも作成できるようになりました。
「友達とは皆、ゲームでつながっています」
コロラド州に住むラケットさんは、脊髄損傷を抱えつつもゲームを愛する多くの人たちの支援者として活動しています。毎週ラケットさんは、神経リハビリテーション専門の地元病院を訪れ、ボランティアとして患者に手を差し伸べ、再びゲームができるよう支援しています。
ラケットさんにとって、ビデオゲームは小学生の頃から生活の一部でした。友達の家に PC を持ち込み、お互いのデバイスを接続して遊んでいました。いわば初期のマルチプレイヤー ゲームです。オリジナルの Xbox とコントローラーを分解し、母校のカンザス州立大学のカラーである紫と白にペイントしたこともあります。
「友達とは皆、ゲームでつながっています。ゲームは私にとって一種の社交的ツールでもありますが、その意味は大きく変わりました」とラケットさんは語ります。「以前はただ楽しんでいるだけで、新しい世界を探検し、Halo で初めてオンラインゲームを味わい、世界中の人たちとこのコミュニティを作っていました。今は使命感に突き動かされています」
実況配信がラケットさんに合っているのは、生配信で自分の本当の姿を見せるのが好きなことも理由のひとつです。そこから生まれるコミュニティとの交流もラケットさんは楽しんでいます。
クリエイタープログラムでは、さまざまな障碍のある他のクリエイターと交流する機会も持てましたし、Xbox がいかにアクセシビリティをサポートしているかも把握することができました。
「組織や企業の言葉の裏付けは、事業や取り組みを通して示されます」とラケットさん。「できることがわかっているからこそ、変革に取り組んでいるのです」
ビー ポシェク (Bee Poshek) さんは、パンデミックによってそれまで歩んでいたキャリアが崩壊。その後フルタイムの実況配信者およびコンテンツ クリエイターとして活躍できるコミュニティを見つけ出しました。
ウィスコンシン州の大学に勤務していたポシェクさんは、「教育者として、教えることの楽しみのひとつが奪われたような気分でした。学生たちに直接会えなくなったのですから」と話します。「そのような状況では、学生たちとつながりを持つことも、深い会話をすることもできませんでした。それに、学生たちもこれまでに見たことがないほど困難な状況に置かれていると感じましたし、その時に用意されていたシステムでは、彼らを実際に支援するにあたって必要なツールが揃っていないとも感じました」
自身を示す代名詞として (he や her などのように性別を特定することのない) they を使用しているポシェクさんは、そこで燃え尽きてしまいました。ポシェクさんの抱えている慢性的な疼痛と多嚢胞性卵巣症候群も悪化しました。同時にポシェクさんは自閉スペクトラム症 でもあり、これらの障碍がすべて組み合わさった「三重苦」によって従来の仕事が困難になり、両親の元に戻ることになりました。
「パンデミックの真っ只中に、ウィスコンシンの田舎で LGBTQIA+ であることをカミングアウトし、障碍も抱えていることは、控えめに言ってもかなり大変な経験でした。そこで、自分にとって懐かしいコミュニティを探し始めたのです」とポシェクさん。こうしてポシェクさんは、YouTube でお気に入りのSimsクリエイターを通じて Twitch にめぐり逢いました。「自分が本当に心地良いと感じるニッチなコミュニティを見つけるようになり、最終的には勇気を出して自分でやってみることにしました。その結果、期待していた以上の体験ができています」
「自分が本当に心地良いと感じるニッチなコミュニティを見つけるようになり、最終的には勇気を出して自分でやってみることにしました」
現在シカゴに住むポシェクさんは、大きな音や飛び跳ねる恐怖のない、感覚に優しいインディー ゲームやシミュレーション ゲームをプレイしています。同時にポシェクさんは、コミュニティ内に居心地の良い環境を作り出そうとしています。そこでは誰もが好きなように過ごすことができ、「その空間で、その日の自分に合った状態でいられるのです」と述べています。
XNL プログラムを通じ、ポシェクさんは業界の裏舞台を垣間見ることができたほか、ソーシャル メディアやコミュニティ管理、ゲーム開発に関するインサイトを得て、クリエイターとして成長する方法について全体的な理解を深めることができました。
「チャンスを求めて自分を売り込む時も、相手側の体験がどのようなものか、少しわかるようになりました」とポシェクさん。「おかげで、コミュニケーションがうまくできるようになりましたし、自分の要求を明確にして、好意的に受け止められるようにフィードバックする方法もわかるようになりました」
ポシェクさんは、プログラムで他のクリエイターやスピーカーとつながりができたことにも感謝しています。
「今では私のそばにいてくれる人が増えました。私が苦労していることについての知識が豊富で、サポートが必要な時にも気軽に連絡できる人たちです」と、ポシェクさんは述べています。
クリス ロビンソン (Chris Robinson) さんは、幼い頃から兄がゲームしているのを見て、自分もそのとりこになりました。ゲームは精神的な孤立感も解消してくれました。というのも、ロビンソンさんは耳が聞こえず、コミュニケーションに障壁があったためです。家族で唯一耳が聞こえず育ったロビンソンさんにとって、ゲームは家族とのコミュニケーション手段にもなりました。
ロビンソンさんは、DeafGamers TVという Twitch チャンネルを運営し、そこでゲームをレビューしつつ、アクセシビリティと聴覚に障碍のある人への認識を高めようとしています。XNL プログラムでは、参加したクリエイターに Xbox Game Pass 1 年分のサブスクリプションを提供しており、新作ゲームをリリースと同時にプレイできるほか、ゲーム コンソールや PC、クラウド上で、数 100 種類もの高品質なゲームを友人とプレイできるようになっています。
「プレイ中に実況配信できることで、ゲーム内で自分がどんな壁に直面しているか見てもらうことができます」とロビンソンさん。「障碍のある人に注目してもらうこともできますし、その存在を伝えることもできます。私たちも社会の一員だということを感じていたいです。それには存在感を示す必要があると思っています」
「プレイ中に実況配信できることで、ゲーム内で自分がどんな壁に直面しているか見てもらうことができます」
ロビンソンさんは、ビデオゲーム スタジオのコンサルタントも務めています。
「障碍は人それぞれ異なります。私自身は補聴器がないと何も聞こえませんが、少し聞こえるという人もいますから」とロビンソンさんは語ります。「一部のゲームでは、字幕さえ出せばそれでいい、と考えているようです。そのようなゲームでも、字幕の色やスタイル、背景も変える必要があるでしょう。段落になっている字幕もあります。本を読もうとしているのではなく、ゲームをしているというのに」
プログラムに参加したロビンソンさんは、インポスター症候群に苦しんでおり、YouTube に動画をアップする取り組みにも行き詰まっていました。しかし、XNL 参加者とのセッションでそのことについて打ち明けると心が軽くなり、孤独感も軽減されました。
また、プログラムで新たな気づきも得たといいます。
「マイクロソフトと Xbox は、インクルーシブでアクセシビリティが高いという点において、かなりハイレベルに達していることがわかりました」とロビンソンさんは述べ、業界内の他の企業もさらに取り組みを進める必要があるとしています。
9 月に XNL プログラムが始まった時点で、おそらく最も経験豊富なクリエイターだったのが、ショーンギルフリー (Shawn Gilhuly) さんです。ギルフリーさんは、2020 年 6 月に独立してフルタイムのコンテンツ クリエイターとして活動。ソーシャル メディアのフォロワーは 25 万人にのぼります。
ボストンでの高等教育の仕事を辞め、生まれ育ったコネチカット州に戻ったギルフリーさんは、実況配信を始めたのです。
ギルフリーさんは主に、アドベンチャー、サバイバル、ホラー、パズルといったジャンルで、ストーリー性のあるゲームをプレイしています。「大好きなゲームを初めてプレイした時のような、懐かしい感覚を視聴者に味わってもらいたいです」とギルフリーさんは語ります。
子どもの頃は、いとこの家で Xbox の Halo をプレイしていたといいます。ギルフリーさん自身は Xbox を持っていなかったので、最近まで彼のゲーム人生において Xbox のゲームの位置づけはあまり大きくありませんでした。
「コンテンツ クリエイターでありながらも、それほどお金はありませんでしたが、Xbox Game Pass を入手してたくさんのゲームをストリーミングすることで、自分に合ったニッチな分野を見つけ出し、興味のあるゲームをさらに見つけられるようになりました」とギルフリーさんは話します。彼は他の Minecraft クリエイター 3 人とともに Xbox ポッドキャストにも出演し、アクセシビリティと障碍について語りました。
「子どもの頃は吃音症でしたし、聞いた言葉を書くことも、書かれた文字を読むこともできませんでした。それで長い間苦労していたのです」とギルフリーさん。「誰にも気づかれないよう、隠したりごまかしたりするのが得意になりました」
「このプログラムで多くの人とのつながりができたことは、私にとって本当に貴重なものです」
また、ギルフリーさんは 10 代の頃から臨床的うつ病と不安症に苦しんでいました。それがソーシャル メディアのおかげで、自分の障碍や、障碍が人生に与える影響について気軽に話せる人に出会い、心を開くようになりました。
「自らのアイデンティティに誇りを持っている人がいたことで、自分自身のことも誇りに思える余裕ができました」とギルフリーさん。「LGBTQIA+ であることはいつも誇りに思っていましたが、私が持っている障碍は目に見えるものではないので、身体に障碍のある人たちの場を奪っているのではないかといつも気にしていました。でも実際には、葛藤を日常的に抱えているのです」
ギルフリーさんは、メンタルヘルスやセクシュアリティ、そして自分の言葉や言語の問題についてオープンに語ってきました。その率直な視点をXNLプログラムにも持ち込んで、次回のプログラムに向け直接フィードバックを提供しており、参加者が学習したことを応用して新しいコンテンツを作る機会を増やすことなどを提案しています。学習は実践的であることが一番だとギルフリーさんは考えているためです。
XNL プログラムのスピーカーが伝えた戦略やヒントの中には、ギルフリーさんが知っているものもありましたが、より強力なコミュニティを構築することについてなど、新たなインサイトやメリットも得ることができたといいます。
「Xbox とマイクロソフトは、非常にすばらしい取り組みを進めていると思います」とギルフリーさん。「このプログラムで多くの人とのつながりができたことは、私にとって本当に貴重なものです」
トップ画像: マディ・デュバーネイさん
ここで紹介したクリエイターと、XNL プログラムの詳細については、こちらのストーリーをご覧ください。
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