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デジタルイノベーションが加速:Renault Sport Formula One Team の成功への道のり

本コンテンツは 2018 年 11 月 27 日に米国で公開された記事の抄訳をベースにしています

バネッサ ホー (Vanessa Ho)

時速 354 キロメートルを超えるきらびやかなレーシングカーによる F1(Formula One)は、流体力学とエンジニアリングの技を競う究極の場です。最近になり、このグローバルなイベントは、コンピューティング技術の戦いの場にもなっています。高速なマシンを極めるためには、レースで使用するための膨大なデータの構築、テストがますます重要になっているからです。

今シーズンに参加した 10 チームの中でも Renault Sport Formula One Team は傑出した成績を残しています。このフランスの自動車メーカーは、ここ数年間、他のチームにエンジンを提供した後、2016 年からフルコンストラクターとしてレースに参加しました。これは、F1のマシン全般に責任を負うことを意味します。同社は、イギリスとフランスの工場を再編するとともに、人材と資源に投資し、優勝するために必要な複数年にわたる計画を立案しました。

実際、チームは毎年のように成績を向上させており、2016 年の 9 位という難しいポジションから 2017 年には 6 位へと順位を上げました。さらに、11月25日のアブダビグランプリを終え、2018年の全21シーズンのうち、4位という好成績で今年を終えました。

Renault Sport Racing の CIO (最高情報責任者)であるピエール ディンブリバル (Pierre d’Imbleval) 氏は次のように述べています。「効率性を向上するテクノロジの採用によってレースの結果は変わります。重要なのは如何にスマートに作業できるかです。」

Renault Sport F1 Team driver Nico Hülkenberg (front car) at the Japanese Grand Prix on Oct. 7, 2018.
Renault Sport F1 Team driver Nico Hülkenberg (front car) at the Japanese Grand Prix on Oct. 7, 2018.

F1は、チームごとのテストランと風洞の使用回数を制限しているため、ルノーのエンジニアはわずかでも有利に立つためにコンピューターシミュレーションに大きく注力しています。レーシングカーを各レースに適合させるために、Azure Batch により数 1,000 件ものデジタルのシナリオを実行し、それらのデータから微妙な調整作業、ピットイン戦術、タイヤの組み合わせなどの戦略を立てていきます。

クラウドのスケーラブルなコンピューティング能力により、チームはコスト効率性に優れた仮想マシンを数分間で立ち上げることができます。従来のオンプレミスシステムではこの作業に数時間を要していました。スピードがきわめて重要であり、イノベーションのサイクルは急速です。レースシーズン中、チームは数日で部品を設計し、テストし、製造し、出荷しなければならないこともあります。

チームの情報システム開発マネージャーのマーク エベレスト (Mark Everest) 氏は次のように述べています。「レーストラックの路面温度、タイヤのパフォーマンス、他のドライバーの行動など、多くの要素がレース戦略に常に影響を及ぼします。シミュレーションを重ねることで、それぞれ環境が異なるレーストラックに対して、車体をどう構成すべきかを迅速に理解することができるのです。」

また、Renault Sport Formula One Team は、週末のレースごとに生成される 300 億から 500 億個のデータポイントからインサイトを得るために、マイクロソフトのAI(人工知能)をより活用しようとしています。データのほとんどは問題がないことを示す通常のフィードバックですが、その膨大なデータからさらにより異常事態を発見することは困難です。Azure Machine Learning を活用し異常を発見することで、エンジニアは、データを手作業でチェックする時間を節約し、技術のイノベーションにより多くの時間を費やせるようになります。データは毎年蓄積されていくため、技術そのものがチームを支援していくようになります。

「どうすればさらにデータを活用できるでしょうか?データを見るだけのために人員を増やすことはできません。データを扱うためのよりスマートな方法を探す必要がありますが、AI はそのような方法のひとつでしょう」とエベレスト氏は言います。

また、チームは、タイヤの摩耗に関する分析へも AI を活用しようとしています。これは、トラックの状況やタイヤ素材など数 1,000 もの要因が関与する複雑な課題です。

「タイヤは単なるゴムの塊よりはるかに複雑であり、その反応を理解することは非常に重要なチャレンジです。パターンの検出には AI が有効でしょう」とエベレスト氏は述べています。

既に、Renault Sport Formula One Team はMicrosoft Dynamics 365 と Power BI によって、2 万個の部品が関連するレースカーの設計開発プロセスを迅速化しています。また、レース当日の分析にはEdge Computingを活用し、シミュレーション結果を 3D で可視化するために Microsoft HoloLens を利用することで、分析結果の理解を深めたりよりコラボレーションを促進することにつなげています。

予算も人材も多い他のチームに打ち勝つための不可欠な戦術として、Mixed Reality(複合現実)のプロジェクトを採用することで、IT 担当者が業務の 10 パーセントをイノベーションに費やすことを奨励する取り組みがすでに始まっています。

Renault Sport Formula One Team members, including driver Carlos Sainz (left).
Renault Sport Formula One Team members, including driver Carlos Sainz (left).

「他のチームほど規模が大きくない私たちにとって、優勝を狙うことはとてもエキサイティングな挑戦です。テクノロジが唯一の実現の手段だと考えています。イノベーションによって作業を効率化し、競合よりも優れたエンジニアリングを実現するしかありません」とエベレスト氏は言います。

しかし、イノベーションにはつきものの様々な変化は、リスク回避文化が強いモータースポーツの世界では非常に実現が困難であるとディンブリバル氏は述べます。観客から注目を浴び続ける F1レース (昨年のテレビ視聴回数は 14 億回でした) において、隔週ごとにトップの成績を残し続けていくというプレッシャーは、おのずとチームに変化を避ける傾向を生み出してしまいます。同氏は、自分の CIO としての役割が Renault Sport Formula One Team をテクノロジによって強化すると共にイノベーションとコラボレーションを推進することであると考えています。

「人々により多くのリスクを取れるよう自信を持ってもらうことが、この業界におけるリーダーの課題です」とディンブリバル氏は述べ、革新的変化に関する有名な格言「エジソンの電球はろうそくの段階的改良からは生まれなかった」を引用しました。

「これはまさに真実です。ろうそくの改良も必要です。それが日々のビジネスだからです。その一方で『ろうそくを排除してゼロからやり直してみよう』と考える人々も必要です。」

Renault Sport Formula One Team に関する追加情報は Microsoft In Culture (英語)をご参照ください。

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Top photo: Renault Sport Formula One Team car. (All photos courtesy of Renault Sport Formula One Team)

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