コンテンツへ移動
スキップしてメイン コンテンツへ
News Center

天気のように伝染病を予測する: Microsoft Premonition がアウトブレークとの世界規模の戦いを支援

スザンヌ チョニー (Suzanne Choney)

2020 年 9 月 22 日

※ 本ブログは、米国時間 9 月 22 日に公開された “Predicting epidemics like the weather: How Microsoft Premonition can help in the global fight against disease outbreaks” の抄訳です。

「明日の天気はどうですか?」

これは単純な質問であり、多くの人がさほど気にかけないでしょう。デジタルアシスタント、スマホ、ネット検索などで答を得ることができます。しかし、実際には、このような天気予報には、世界中の測候所のセンサーネットワーク、先進的データ分析、最新のスーパーコンピューターが使用されています。

Microsoft Premonition は、地球上の生物群系 (バイオーム) 内の微生物、ウイルス、そして、伝染病を媒介する生物の状態の同じように予測することを目指しています。天気と同じように生物群系をモニターできれば、病原体を早期に発見でき、大規模流行になる前に伝染病を予防できます。

今日、私たちの健康、そして、私たちの経済や社会の健全性を維持するためのグローバルなセンサーネットワークが今まで以上に求められています。

Microsoft Premonition のシニアディレクター、イーサン ジャクソン (Ethan Jackson) は「病原体を常に監視することで、既知の病原体に対する対応の考え方が根本的に変革されました。得られたシグナルにより、潜在的な脅威を早期に知ることができ、迅速に対応し、大流行が起こる前に対策を打つことができます」と述べています。

Microsoft Premonition は、ロボット技術によるセンサープラットフォーム、人工知能、予測分析、クラウド規模のメタゲノム解析を組み合わせた早期警戒システムであり、蚊などの疾病を媒介する生物を自律的に監視し、ロボット技術により環境サンプルを収集し、生物学的脅威のゲノム分析を行ないます。

天気予報と同様に、データ分析にはクラウド上の大規模コンピューティングが使用され、Microsoft Azure 上の Azure IoT や Azure Data Lake などの最新テクノロジが活用されます。今日、Premonition の分析パイプラインは生物学的脅威を検出するために、環境から採取したゲノム物質内の 80 兆個以上の塩基対を分析しています。

Premonition に関する追加情報

Microsoft Premonition で収集したデータの集積と分析のために Microsoft Azure を活用する Microsoft Premonition Cloud が新たに発表されました。Microsoft Premonition Cloud は Early Access Program により今後数週間内に提供されます。

新興感染症の推定 60 パーセントから 75 パーセントは、動物から人へと伝播する病原体によって引き起こされています。これには、ジカ熱、西ナイル熱、デング熱、そして最近の COVID-19 などがあります。

2016 年にアメリカ大陸でジカ熱が発生する約 1 年前から、チームは新しいモニタリング手法を研究し、少数の試作品を製造していました。円形の高層コンドミニアムの縮尺モデルにも似た初期のロボット型スマートトラップは、蚊をおびき寄せ、自律的に識別して捕獲するように設計されており、公衆衛生当局者にこれまで利用できなかったタイプのデータを提供します。その目的は、病原を媒介する蚊がいつどこにいるのかを判断し、ジカ熱のリスクを深く理解できるよう支援することにあります。

テキサス州ヒューストン市があるハリス郡は、Project Premonition (現在の名称は Microsoft Premonition) の最初の展開場所です。4 年後の今、Microsoft Premonition と Harris County Public Health はパートナーシップを拡大し、最先端の生物的脅威検出ネットワークの構築を開始します。

昆虫学者であり、ジョンズホプキンス大学で分子微生物学と免疫学を研究しているダグラス E. ノリス (Douglas E. Norris) 教授は、Premonition の影響について「従来の考え方を根本的に変革する」と評しています。

このプロジェクトに取り組んできたノリス教授は次のように述べています。「蚊に対する現在の対応はすべて事後的です。大量の蚊を見付けたら殺虫剤をかけるという状況です。データとモデルに基づいて、まもなく大量の蚊が発生することを予測できるシステムがあると想像してみてください。蚊に刺される前に対応できます。蚊が蔓延する前に早期に対応し、感染症の伝染を未然に防ぐことができます。」

これは、人間にとっても環境にとっても健全なアプローチであるとノリス教授は述べます。加えて、コスト効果も高いアプローチです。これは、COVID-19 により世界中の公衆衛生機関が、要員や予算面で厳しい状態にある今日において特に重要です。

人間の健康はその環境にも依存するという One-Health の思想に基づき、Premonition は、様々な対策の効果やアプローチのコストを適切に測定することで、公衆衛生システムを支援します。

ジャクソンは「私たちの健康、そして、私たちの社会や経済に影響を与える要素のほとんどは微少なものです。蚊やダニのような昆虫、微生物やウイルスなどです。それらはミリメーター、ミクロン、ナノメーターといった大きさです」と述べています。

Microsoft Premonition のセンサープラットフォームは、これらの小さく、多くの場合、目に見えない脅威を捕獲、収集、蓄積し、そのデータを分析します。

「Microsoft Premonition は、プロジェクト開始当時と比べて明らかに異なる観点を持つようになってきました」と Microsoft Premonition のディレクター、イーサン ジャクソンは述べています。(写真提供: マイクロソフト)

「天気予報を行なうため、送電網のバランスを取るため、交通状況を予測するためなどに、今日使用されているセンサーネットワークは、数百億個のセンサーから成りますが、これらの重要な生物を見ることはできません」とジャクソンは述べます。

「世界中に展開したセンサーによっても、これらの脅威となる生物は見えないのです。環境にこれほど大きな盲点があることは信じられないほどです。」

2016 年、ジカ熱のリスクがピークになった時には、ハリス郡において、10 台のスマートトラップが対象の蚊のみを捕獲するよう訓練され、90 パーセントの精度を達成しました。さらに、メタゲノム解析により、蚊のサンプル内の微生物やウイルスが検出され、宿主となる動物を識別することができました。

まもなく行なわれる Microsoft Premonition の展開により、ハリス郡は大規模なセンサーネットワークを得られ、ジャクソンが言うところの「継続的な生物環境の認識」が実現されます。「地図上でリアルタイムの状況を知ることができます。このような技術は今までは存在しませんでした。天気予報のように 24 時間内の予測を行なうことで、環境に対する対策を早期に行なうことができます。」

ハリス郡公衆衛生局エグゼクティブディレクター、ウメア シャー (Umair Shah) 博士は「将来的にハリス郡で発生するジカ熱などの新興伝染病を早期に発見し、撲滅できることを期待しています」と述べています。

「このパートナーシップでは、環境から採取したサンプルにより既知の、および、新興の感染症を検知するための新たなゲノム分析手法も評価します。これは、COVID-19 などの伝染病対策にはきわめて重要です。」

「公衆衛生の未来はイノベーション、すなわち、革新的な科学、工学、政策に依存しています。私たちはこの取り組みをマイクロソフトと共に推進し、学べることを大変うれしく思っています」とシャー博士は述べています。

「次のステップは、今から 24 時間にどこで脅威が発生するかだけではなく、今から 1 カ月以内のいつどこで脅威が発生するかを予測できるようになることです。そのためには、疫学モデルを再設計し、ハリス郡に対して『ここが、今から 1 カ月後に (ハリス郡で頻発する蚊が媒介する伝染病である) 西ナイル熱が発生する可能性が高い地点です』と説明できなければなりません」とジャクソンは述べます。

主任ハードウェアアーキテクトのニコラス ビラーは「私たちは今日の人類が直面するきわめて重要な課題の解決に取り組んでいます。しかも、このようなそれを大規模で行なえることは、とてもエキサイティングなことです」と述べています。(写真提供: マイクロソフト)

過去 5 年間に、Premonition のテクノロジは、フロリダキーズの砂浜やアフリカのタンザニア奥地の森など、様々な生息地で使用されてきました。「生態調査は難しい分野であり、慎重に進めていきたいと考えています。科学には急ぐことは禁物です」とジャクソンは述べています。

Premonition は、最新の ACL-2 (節足動物封じ込めレベル 2) の施設 Premonition Proving Ground で開発されています。そこでは、野生の蚊の飼育、デジタル化、観察が行なわれており、識別アルゴリズムの開発とデバイス設計の評価が行なわれています。また、マイクロソフトのレドモンドキャンパスも、パートナーにより取得された環境サンプルのコンピューター処理のハブになっています。

大流行の前に疾病を食い止めることは、多くの学問分野そして産業分野を横断する課題です。

科学の適切な理解に基づいたテクノロジの開発には学術界との緊密な連携が重要です。NSF (アメリカ国立科学財団) は、最近、“Convergence Accelerator” 助成金を授与しました。これには、Vanderbilt University、Johns Hopkins University、Institute for Health Metrics and Evaluation at the University of Washington、University of Pittsburgh の学術界のパートナーが含まれます。NSF Convergence Accelerator は、NSF のイノベーションを加速する「10 個のビッグアイデア」の 1 つです。

NSF は助成金授与において「このプロジェクトは人類の健康と感染症対策に長期的に貢献します。生物群系のデータが指数関数的に増大する中で、ライフサイエンス分野ではゲノム情報の処理が課題になっています。これらのデータを効率的に利用し、自動的に洞察を得られるよう協力していく必要があります」と述べています。

また、産業界のパートナーも成功に不可欠です。アスピリンで有名な Bayer は、世界有数の農業企業でもあり、蚊の発生を防ぐソリューションにより公衆衛生においても重要な役割を果たしています。たとえば、同社は、媒介蚊コントロール分野の主力企業と協力し、2040 年までにマラリアを撲滅すべく取り組んでいます。World Health Organization によれば、2018 年時点で世界人口の約半数がマラリアのリスクに直面しています。

Bayer の Global Vegetable Seeds and Environmental Science 担当プレジデント、ジャクリーン アップルゲート (Jacqueline Applegate) 氏は「これが、当社が、洞察の提供などの多様なソリューションを必要としている理由です。Microsoft Premonition により、はるかに現実的な視点を得られるようになりました」と述べています。

「Premonition により、Bayer は、新たな方法でデータ、情報ツール、リソースを活用し、媒介生物コントロール戦略を最適化できました。対策の正確性を向上できれば、限られたリソースを他の公衆衛生関連の課題に割り当てることができるようになります。」

「Microsoft Premonition は既知の病原体に対応することから、継続的に病原体の状況変化を監視することへと考え方を根本的に変えました。」

さらに、COVID-19 により、世界中で国の媒介生物コントロールと医療システムが圧力を受ける中、生物学的脅威の予測システムを利用できることはとりわけ重要です、とアップルヘッド氏は述べています。

「疾病予防を行なう上では、事前の対策を行なえることが何よりも重要です」と彼女は付け加えます。

Microsoft Premonition の主任ハードウェアアーキテクト、ニコラス ビラー (Nicolas Villar) は次世代のスマートトラップの設計に取り組んでいます。ソフトウェアのバグは別として、ビラーには昆虫関係の経験はありません。視覚障碍を持つ子供たちにプログラミングの基本を教える教育ツール Project Torino パーキンソン病患者の震えの鎮静を研究するプラットフォーム Project Emma などのプロジェクトを共同で率いてきました。

「私のバックグラウンドは主に対話型テクノロジでした。人々が直接触れ、人々の学び、遊び、健康に影響を与えるテクノロジです。生物学と昆虫は私にとってまったく新しい世界でした。このプロジェクトで、私の同期付けになったのは、多くの作業が技術的である中で、もたらす影響はきわめて人間的であるという点です。私たちは今日の人類が直面するきわめて重要な課題の解決に取り組んでいます。しかも、このようなそれを大規模で行なえることは、とてもエキサイティングなことです」とビラーは述べています。

「『蚊を使って環境における感染症の状況を調べられないか』という根本的質問を投げかけたプロジェクト開始当時と比べて、私たちは明らかに異なる視点を持つようになってきました」とジャクソンは述べています。

「取り組みの中で、既存テクノロジは生物群系の大規模なモニタリングには不適切であることが明らかになりました。私たちはアルゴリズム、新データモデル、そして、アルゴリズムとデータモデルを訓練するための試験場を、ネジやパネルからクラウドアーキテクチャまでを含めて一から構築しました。それには時間と労力を要しましたが、小さなものをモニターし、大きな予測を行なうためのネットワークを構築することができました。」

Premonition の詳細情報.

Microsoft Premonition の技術詳細情報

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。