新しいツールで生徒がオンライン上の情報源を見つけ、信頼性を評価できるようサポート
著者: バネッサ ホー (Vanessa Ho)
※本ブログは、米国時間 2 月 9 日に公開された “New tools help students find and evaluate sources in a sea of online information” の抄訳を基に掲載しています。
高校教師のクリステン ポペスク (Kristen Popescu) 氏は、ネットで調べ物をする生徒たちの困った傾向を長年目にしてきました。それは、彼らが大量の情報の中から信頼できる情報源を見つける方法をわかっておらず、たいてい最初に出てくる検索結果だけをクリックしていることです。情報源をたずねると、多くの生徒は漠然と検索エンジンの情報だと回答するので、ポペスク氏は落胆してしまうのです。
ポペスク氏は、シアトル東部の郊外カークランドにある Lake Washington High School で、生物学と海洋科学を教えています。「情報が簡単に手に入るようになったのですから、信頼できるものとそうでないものを判別できなくてはなりません」と、ポペスク氏は語ります。
そこでポペスク氏は、生徒の情報リテラシーを向上させようと Search Coach (検索コーチ) を使い始めました。これは、生徒が効果的に検索クエリを作成し、情報の信頼性を評価できるよう支援する新しいツールです。現在 Microsoft Teams for Education にて一般提供されているこのアプリは、広告のない安全な環境でフィルターや運営者、信頼性の評価について生徒を指導します。
情報リテラシーのさらなる向上に向け、近日中に Search Progress というコンパニオンアプリも教育者に提供される予定です。このツールによって教育者は生徒の進捗状況に関するインサイトを把握できるほか、生徒が自らの取り組みを示せるような課題を作成し、その課題の評価も合理的にできるようになります。これで教育者は、不透明で静的な参考文献を目にすることもなく、生徒がどのように情報源を見つけたのか、なぜ特定の情報源を選んだのか、といったような調査プロセスそのものが把握できるようになり、論理的思考力のスキルを教えられるようになるのです。
この教育用検索アプリは、世界中にいる何百人もの教師や司書、メディア リテラシー専門家からのフィードバックをもとに開発されたもので、ポペスク氏もこのアプリの作成に協力した人物のひとりです。多くの協力者が、情報過多の時代においてリテラシー ツールを改善する必要があるという考えを示していました。
マイクロソフトで教育マーケティング担当バイスプレジデントを務めるペイジ ジョンソン (Paige Johnson) は、「Search Coach と Search Progress は、生徒が論理的思考力を高められるよう、また自信を持って検索できるよう、そしてより強力な情報リテラシー スキルを身に着けられるよう支援します」と述べています。「マイクロソフトでは、あらゆる生徒が将来に備えて必要なスキルを身につけられるよう支援しており、こうしたツールもその取り組みの一環です」
Search Coach と Search Progress は、情報リテラシー、数学、リーディング、スピーチなど、必要な学力の習得をサポートするマイクロソフトの Learning Accelerators という新しいカテゴリーで展開するツールの一部です。これらのツールでは、パーソナライズされた指導や、自己学習の機会、リアルタイムでのコーチング、実用的なインサイトなどが、単一の効率的なプラットフォーム上で実現します。
ポペスク氏は、海洋生物や気候変動に関する授業で、ドメインやパラメータといった研究の概念を取り入れる際に、Search Coach のフィルター機能が役立つといいます。このアプリはアダルト コンテンツをブロックするため、生徒があらゆる調査プロジェクトに適用できるスキルを実践する際にも安全な場が提供されます。また、数千におよぶサイトの信頼性と透明性を評価するためにジャーナリストが作成した NewsGuard というツールの評価を統合することで、生徒は情報の評価方法も学ぶことができます。
ポペスク氏は、生徒が何回検索したか、どのフィルターを使ったかなどが把握できる Search Coach のインサイトを活用することが楽しみだといいます。信頼できる情報を探すのに苦労している生徒を見つけ出し、サポートできるようなインサイトには、価値があると考えているためです。
「時間をかけて『その情報源はどこで作られたのだろうか、それを裏付ける他の記事は見つかるだろうか』と問いかけ、自分が読んでいるものについて批判的に検討することは、基本的な生活スキルですから」と、ポペスク氏は述べています。
カークランドの International Community School で教員兼司書を務めるアンバー ピーターソン (Amber Peterson) 氏は、Search Coach が情報リテラシーに関する授業の基礎を固める効率的な手段だと考えています。アプリのガイド付きツールや教育者のコントロール機能が、検索クエリや事実確認、偏見の評価に関する彼女の授業にぴったり合っているためです。
ピーターソン氏は最近、初級研究者と共に、アプリのカスタムフィルターを使って歴史の課題にふさわしいアーカイブサイトのリストを作成しました。移民に関するプロジェクトでは、生徒に国別ドメインフィルターの使い方を教え、韓国の移民についての検索結果が韓国と米国で異なっていることも確認できるようにしました。
このアプリの NewsGuard による評価は、学術サイトや一般大衆によるサイト、たまたまオンラインで公開されている高校生の読書レポートなどの信頼性について、活発な議論に発展することもあります。別の信頼性評価ツールを追加したい場合は、結果を snopes.com やその他事実確認サイトの記事に限定するというフィルターを有効にすることも可能です。
ピーターソン氏が勤めているのは中高生を対象とした学校ですが、「生徒が利用できる情報は非常に多いため、私の仕事の大半は、その情報に偏見や学術的な性質があるかどうか、生徒に情報をどうフィルタリングしてどう扱うべきか教えることです」といいます。
「Search Coach は、生徒がうまく情報を検索し、その信頼性を評価する際に役立つツールです」
ニュージーランドの Napier Boys’ High School でデジタル テクノロジ責任者を務めるジョン ステープリー (John Stapley) 氏も、ピーターソン氏と同じく Search Coach を称賛しています。このアプリによって調査スキルを教えることができ、生徒が自主的に作業できる場を与えられる点を評価しているのです。リアルタイム コーチングのヒントでは、生徒のクエリに基づいてパーソナライズされることが多く、例えば生徒が「犬よりも猫の方が優れているのか」と入力した場合、より良い結果を得るには偏りのない表現を使うようアプリが提案します。
このアプリを使って情報リテラシーの必修科目を設計し、その授業を担当しているステープリー氏は、「Search Coach を使う前の生徒は、調査スキルを全く持っていなかったのですが、コースを修了する頃にはクエリを絞り込む方法を習得できるので、情報の嵐に巻き込まれることもなくなります」と話しています。
メキシコのエルモシヨで障碍のある生徒を担当している学校心理カウンセラーのセルジオ ルイス (Sergio Ruiz) 氏は、Search Coach のインクルーシブ デザインが重要だといいます。このアプリは、検索結果から画像や動画、広告を排除するため、注意散漫になる状況が最小限に抑えられます。また、明確な表現やチェックボックスにより、検索のコンセプトが生徒にとって扱いやすく、また理解しやすくなっています。ルイス氏の生徒は最近、Search Coach を使って自分の障碍について調べ、授業で発表する課題もこなしています。
「注意力や集中力を失いやすい生徒もいますが、Search Coach を使うことで、入手する情報に集中できるようになりました」とルイス氏は話します。「将来必要となる検索スキルや情報リテラシースキルの構築に、このツールが役立っているのです」
トップ画像:ワシントン州カークランドの International Community School で教師兼司書を務めるアンバー ピーターソン氏 (撮影: ダン デロング (Dan DeLong) )
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