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使うべきかどうかではなく、いつ使い始めるか:パナソニック コネクトがAIに全力投球する理由

使うべきかどうかではなく、いつ使い始めるか: パナソニック コネクトが AI に全力投球する理由

チェン メイ イー (Chen May Yee) 著

2 月中旬、世界中で生成 AI モデルの潜在的能力への理解が深まり始めた頃、日本の大手電機メーカーであるパナソニックグループのパナソニック コネクトでは、自社バージョンの AI アシスタントを導入しました。その対象となったのは、CEO から最も若いスタッフに至るまで、国内の全社員となる 1 万 2500 人です。

パナソニックグループで B2B ソリューションに特化した事業を展開するパナソニック コネクトでは、その AI アシスタントを ConnectAI と名付け、メールの作成や情報収集、コンピュータコードの作成など、日々の業務での利用を推奨しています。

ConnectAI を導入したのは、従業員が 1 日を費やしてしまいがちな骨の折れる仕事や動き回るような仕事を ConnectAI で支援し、発想や解決策を思いつくことができるような自由を与えたいと考えたためです。ConnectAI は、Microsoft Azure OpenAI Service で構築されたものです。

東京に本社を置くパナソニック コネクトで、IT・デジタル推進本部 戦略企画部のシニアマネージャーを務める向野孔己氏は、「当社では、すべてのビジネスプロフェッショナルが AI を日常的に使うようになると考えています」と話します。「そこで当社は、AI を使うべきか使わざるべきかではなく、いつ使い始めるかを検討したのです」

膨大なデータを合成して文章や画像などを生成する大規模言語モデル (LLM) に基づいて構築された生成 AI ツールは、インターネットやスマートフォンの登場以来最大の技術的進歩とみなされています。このテクノロジはとても新しく強力であるとともに、他の新テクノロジと同様不完全な結果を生み出す可能性もあるため、多くの企業ではどう採用していいのか判断できないでいます。

日本は世界で最も高齢化が進んでおり、人口 1 億 2500 万人のうち約 3 分の 1 が 65 歳以上です。2019 年の国立社会保障・人口問題研究所による予測では、今後 30 年間で日本の人口は 1 億 600 万人にまで減少するとされています。そして現在の失業率はわずか 2.6% です。

この労働人口の減少に対し、生成 AI は「従業員の生産性を高める」ひとつの方法だと向野氏は語ります。「AI のおかげで、人間にしかできないクリエイティブな仕事に集中することができます」

パナソニック コネクトでは、データの安全性を確保するため、無償版ではなく Azure OpenAI Service で自社版 AI アシスタントを構築することにしました。Azure OpenAI Service では、開発者がエンタープライズアプリケーションに生成 AI モデルを使用できるのはもちろん、不適切なコンテンツのフィルタリングが可能な責任ある AI 保護などのさまざまな機能も含まれています。またパナソニック コネクトは、オーダーメイドの AI アシスタントにより、利用状況の追跡や分析が可能なことや、よりパーソナライズされた体験を提供するといったようなアップグレードが計画できることについても言及しています。

ConnectAI は 2023 年 2 月 17 日にリリースされました。その後 ConnectAI に対する質問数は急増しています。最初の 1ヶ月間に従業員が投稿した質問数は 5 万 5380 件で、1 日 2000 件以下でした。それが現在では 1 日に 5000 件の質問が ConnectAI に寄せられていると向野氏は述べています。

社員のノートパソコンでConnectAIを操作している様子 写真:小山幸佑 for Microsoft
社員のノートパソコンで ConnectAI を操作している様子
写真: 小山幸佑 for Microsoft

AI アシスタントは URL からアクセスでき、従業員は自然言語で質問を入力するだけです。最小限のトレーニングが行われ、多くの人が使い慣れている検索用語ではなく、完全な質問形式で質問するようアドバイスされます。参考用に質問のサンプルも提供されました。

向野氏は、「主に IT 部門や技術者が使うのではないかと思っていましたが、実際には法務や経理部門でも使われています」と話します。また、ユーザー層は世代を超えて広がっており、キャリアの浅い人から上級社員までさまざまな人が利用しているといいます。

パナソニック コネクト 代表取締役 執行役員 プレジデントの樋口泰行氏は、新入社員への歓迎スピーチの下書きにも ConnectAI を利用しました。将来的に「人間は単純作業ではなく、高度な仕事に専念するようになるでしょう」と樋口氏は語ります。「そうなる必要があると思っています」(樋口氏)

まだ初期段階のため、生産性への影響については未だ逸話の域を出ません。それでも、例えば法務部門のある従業員が向野氏に伝えたところによると、長文の法律文書を読むのに 1 時間もかける必要がなくなったとのことです。現在その従業員は、ConnectAI によって生成された要約文を 10 分もかからずに読んでいるといいます。

社員のノートパソコンでConnectAIを操作している様子 写真:小山幸佑 for Microsoft
パナソニック コネクト株式会社の樋口 泰行 CEO は、ConnectAI を使って新入社員向けの歓迎スピーチを作成
写真: 小山幸佑 for Microsoft

戦略企画部マネージャーの瀧口裕介氏は、定期的に従業員の IT 調査を実施しており、選択式や自由記述式のアンケートを送信しています。以前は 3 人のチームで1 週間以上かけて自由記述部分の結果を分析し、社員が抱える IT 関連の課題を把握していたのですが、ConnectAI を使えば1時間で分析が終わるといいます。

瀧口氏によると、日々膨大な数の問い合わせがログに残っているにも関わらず、IT 部門で AI アシスタントの使用方法について質問を受けることは全くないといいます。従業員は独自に実験を行い、時には部署内で ConnectAI のブレインストーミングセッションを実施することもありました。「IT の知識がなくても簡単に使えるという結論に達しました」と、瀧口氏は述べています。

向野氏は、多くの従業員がこのテクノロジを利用していることは喜ばしいことだとしつつも、最終的なアウトプットの作成には必ず従業員が関わるようにすることが最も重要だと語ります。AI システムは新しく、大半が過去のデータに基づいて構築されているため、回答が正確であるよう精査する必要があり、業界で「その筋に詳しい人間」とされる人が常にいるべきだというのです。「AI が出しているのはアドバイスのようなものに過ぎません。最終的なアウトプットは人間が出さなくてはならないのです」と向野氏は語ります。

技術部では現在、次期バージョンを検討しており、よりパーソナライズされた体験をお客様や従業員に提供する方法などを模索しています。例えばカスタマーサービス担当者が、お客様からの製品仕様に関する質問に ConnectAI を使って回答する日も近いかもしれません。また、従業員に新しいスキルを教える教育ツールとして ConnectAI を使用する方法も、技術部では検討しています。

「現在マイクロソフトの専門部隊と、社内システムをこのシステムに組み込む方法を協議しています」と向野氏。「新しい AI 技術が日々誕生しています。2023 年には社内情報機能を実装し、新しい情報機能も実装できればと思います」

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