マイクロソフトの AI アクセス原則: AI エコノミーにおけるイノベーションと競争を促す責任

マイクロソフトの AI アクセス原則: AI エコノミーにおけるイノベーションと競争を促す責任

副会長 兼 プレジデント ブラッド スミス (Brad Smith)

※本ブログは、米国時間 2 月 26 日に公開された “Microsoft’s AI Access Principles: Our commitments to promote innovation and competition in the new AI economy” の抄訳を基に掲載しています。

人工知能 (AI) によって新時代が訪れた今こそ、私たちが世界中の AI データセンターのインフラやその他の重要な AI 資産をどのように運営していくのかを規定する原則を表明する絶好の時期です。マイクロソフトは本日、AI  イノベーターかつ市場をリードしている当社の役割と責任の高まりを受け、バルセロナで開催された Mobile World Congress において、「AI アクセス原則」を発表します。

かつての他の汎用技術と同様に、AI は経済の新たな領域を切り開いています。新しくできた AI エコノミーは、今ある企業に新たな機会をもたらすだけでなく、新たな企業や今までにない業種を生み出しています。本日発表する原則は、マイクロソフトの 49 年にわたる歴史のいかなる取り組みよりも大規模な投資、より多くのビジネスパートナーシップ、そしてイノベーションと競争を促すための広範なプログラムを約束するものです。この原則を公開することで、マイクロソフトは世界中の組織や個人が公益に資する方法で AI の開発と活用ができるよう、必要とされる幅広い技術へのアクセスを提供するために尽力することを表明します。

マイクロソフトは、この新しい原則を背景に、新たな AI データセンターへの 56 億ドルの投資、100 万人以上を対象とする新たな AI スキル習得プログラムなど、過去 2 週間にわたって欧州全域で新たな投資やプログラムの発表と始動を行ってきました。さらに、責任ある AI の導入を推進し、サイバーセキュリティを保護するための官民パートナーシップ、ネットワーク事業者を支援するための AI 技術サービス、フランスの大手 AI 企業 Mistral AI とのパートナーシップを新たに立ち上げました。こうした投資やプログラムは、マイクロソフトが欧州だけでなく、アメリカや世界各地でこの原則を実践していくということを明確に示しています。

Euro announcements over past 12 days

この原則は、私たちが企業として果たすべき責任のある重要な役割も反映しており、一部にこれまでの技術開発の経験から学んだ教訓が生かされています。2006 年、Microsoft Windows やパソコン OS 市場における当社の地位にまつわる 15 年以上にわたる論争と訴訟の末、私たちは一連の「Windows Principles」を発表しました。その目的は、継続的なソフトウェア革新を促進し、自由でオープンな競争を促すような方法で、当社の事業を規定することでした。

Windows Principles を発表するためにワシントン DC でスピーチを終えた後、私のところに来た連邦取引委員会 (FTC) 委員の反応が忘れられません。「10 年前にこうしていれば、おそらく皆さんは多くの問題を避けられたと思います」と、彼は言いました。

それから 20 年近く経ち、テクノロジの世界も私たちが迎える AI 時代も根本的に異なっています。当時は Windows が注目のコンピューター プラットフォームでした。今日では、モバイル プラットフォームが消費者に最も人気のゲートウェイであり、生成 AI の飛躍的な進歩がデジタル市場を超えた地殻変動を引き起こしています。一方で、当時の FTC 委員の反応は、時を経ても変わらない教訓を伝えています。それは、他の人々に幅広い機会を提供するような原則によって自社の事業を規定したときに、私たちは IT 業界のリーダーとして最高の仕事ができるということです。

新しい AI 時代には、最先端の AI モデルを訓練、構築、展開するための膨大なコンピューティング能力が求められています。歴史的に見れば、このような力は一握りの政府出資の国立研究所や研究機関にしかなく、選ばれた一部の人しか利用できませんでした。しかし、パブリック クラウドの登場がそれを変えました。鉄鋼によって高層ビルが建てられるように、パブリック クラウドによって生成 AI が実現します。

今では、世界中のデータセンターに何百万台ものサーバーが設置され、大小の組織や個人までもが莫大なコンピューティング能力を広く利用できます。すでに、世界中の新興企業、大企業、政府機関、研究所、非営利団体など、何千人もの AI 開発者がこれらのデータセンターの技術を用いて、新しい AI 基盤モデルやアプリケーションを作っています。

このようなデータセンターは、マイクロソフト、Amazon、Google、Oracle、IBM といった大企業や、中国の大企業である Alibaba、Huawei、Tencent、Baidu などのクラウド プロバイダーが所有し、運営しています。また、Coreweave、OVH、Aruba、Denvr Dataworks Corporation など、小規模な専門企業も続々と参入しています。政府出資のコンピューティング センターも、学術研究への支援などで役割を果たすことは明らかです。ただし、データセンターの建設と運営にはコストがかかります。さらに、AI ワークロード用のサーバーに不可欠な半導体、つまりグラフィックス処理ユニット (GPU) は、依然として高コストかつ供給が不足しています。政府や企業は供給不足を解消しようと懸命に努力していますが、まだ時間がかかりそうです。

こうした現実を念頭に置き、世界各地の規制当局は AI 時代に誰が競争に参加できるのかという重要な問いを投げかけています。新たな機会を創出し、新企業の登場につながるのでしょうか。それとも、単にデジタル市場における既存の地位やリーダーを強化するだけなのでしょうか。

私は、AI 時代がもたらす変化はテクノロジ産業そのものにも影響を与えるだろうと楽観的に考えています。なぜなら、本稿の読者のうち何人が、2 年前に OpenAI や、Anthropic、Cohere、Aleph Alpha、Mistral AI といった、数多くの新規 AI 参入企業について聞いたことすらあったでしょうか。それに、マイクロソフトをはじめとする大手テクノロジ企業は、AI 時代に対応するために大胆な方向転換を進めています。激しい競争圧力のなか、めまぐるしいスピードで技術革新が起こっています。クラウド プロバイダーのリーダーとして、また AI モデルのイノベーターとして、そして OpenAI とのパートナーシップを通して、私たちは AI 時代の発展におけるマイクロソフトの役割と責任を重要視しています。

過去10年間を通して、信条を定義することが助けになるということを常に感じてきました。信条は、複雑なトピックに対処する際に考えを導き、行動を促すための目標になります。したがって、こうした信条を適用するために、技術の開発と利用の規定に必要な決定を下す際に適用する原則を明確化しました。以下に、AI というトピックに対するマイクロソフトの考えの基礎となる信条と、11 の AI アクセス 原則をご紹介します。

AI へのアクセスに対する信条

基本的には、5 つの信条によって、インフラとプラットフォームのプロバイダーとしての役割を含めて、マイクロソフトが AI へのアクセスに注力する際の目標を定義しています。

1 に、私たちにはイノベーションを可能にし、競争を促進する責任があります。AI は、社会問題の解決、人間の生産性の向上、企業や国の競争力強化の助けとなる、変革をもたらす力を備えた基盤技術であると確信しています。印刷機から、電気、鉄道、インターネットに至るまで、これまでの汎用技術と同様に、AI の時代はひとつの技術要素や発展に基づいているわけではありません。私たちには、急速に勢いを増している新しい AI エコノミー全体のイノベーションと競争を促進していく責任があります。

絶えず変化する AI 分野は、電気やコネクティビティにはじまり、世界最先端の半導体チップをベースとする技術スタックに基づいて、数多くの参加者で活気づいています。そして、パブリック クラウドの処理能力、基盤モデルを訓練するためのパブリックまたはプロプライエタリのデータ、基盤モデル、モデルの管理やオーケストレーションのためのツール、AI を搭載したソフトウェア アプリケーションの順に積み上がっています。つまり、AI エコノミーの成功には、相互に結びついたいくつもの市場を横断して、さまざまな参加者が成功することが必要なのです。

The Tech Stack for AI

ここに、AI の時代を定義する技術スタックを示しました。現在、AI に使われる GPU のほとんどを 1 社が製造・供給していますが、上のスタックになるにつれて参加者の数が増えていきます。各層が上の層のイノベーションと競争を可能にし、促進します。さまざまな意味で、成功するためには、技術スタックのすべての層の参加者が共に前進していかなければなりません。マイクロソフトとしては、自社の成功だけでなく、他の人々に成功をもたらすことにも注力していく必要があります。

2 に、私たちの責任は法の下での義務を果たすことからはじまります。本日発表する原則は自主規制の取り組みのひとつですが、法の支配や規制当局の役割を尊重しないことを示唆するものでは決してありません。立法者、競争当局、規制当局、執行官、裁判官が AI に関連する競争規則や法規制を発展させ続けていくことを十分に理解し、それがあるべき状態だと考えています。

テクノロジに関する法律や規則は、急速に変化しています。欧州連合 (EU) はデジタル市場法を施行し、AI 法を完成させようとしており、アメリカは AI に関する新たな大統領令を示して動きを迅速化しています。イギリス、カナダ、日本、インドなどの多くの国で、同様の法律や取り組みが進められています。私たちは、新しい AI 市場のすべての参加者と同じく、法の下での義務を果たし、義務がまだ明確でない場合には規制当局と建設的に関わり、方針にまつわる人々の対話に貢献する責任があると認識しています。そして、こうした義務を真摯に受け止めています。

3 に、私たちは幅広い AI パートナーシップを推進しなければなりません。現在、チップからはじまり、盛況なモバイル アプリ ストアに至るまで、あらゆる AI 層を含む形で垂直統合されている企業は 1 社しかありません。先日のテクノロジ リーダーと政府職員との会合で指摘されたように、「マイクロソフトを含め、残された私たちには、パートナーシップのチャンスが豊富にあります。」

今、OpenAI とマイクロソフトとのパートナーシップによる AI の発展が人々に恩恵をもたらしています。2019 年以降、マイクロソフトは OpenAI の生成 AI モデルの研究開発で同社に協力し、モデルを訓練するために必要な独自のスーパーコンピューターを開発してきました。私たちのパートナーシップがもたらした画期的なテクノロジによって、業界全体に変革のうねりが押し寄せました。そして過去 5 年間で、OpenAI はテクノロジ業界における新しい重要な競争相手になりました。OpenAI は、ChatGPT や GPT Store を立ち上げて技術を商品化し、サードパーティの開発者による商業利用のためにモデルを提供することで、重点事業を拡大していきました。

イノベーションと競争には、本日発表したフランスを拠点とするオープンソース AI 開発のリーディング カンパニーである Mistral AI とのパートナーシップを含め、大小を問わず、プロプライエタリもしくはオープンソースの AI モデルに対する、同様の広範なサポートが必要です。私たちは、その他にも多様な生成 AI 新興企業に対して幅広く投資しています。たとえば、そうした投資が日々の運営資金を調達するための資金となったこともあります。また、生成 AI モデルやアプリケーションを訓練して展開するために、コンピューティング インフラストラクチャの利用費用の支払いに充てられたこともあります。私たちは、世界中の市場参加者と良好なパートナーシップを結び、各地の AI イノベーションを加速させていくために尽力します。

Goals that Guide US

4 に、私たちのパートナーシップへのコミットメントは、お客様、コミュニティ、そして国々にまで関係します。AI およびデータセンターへの投資は、旧世代のデジタル技術以上に、お客様や国家経済の競争力を維持し、社会の幅広いニーズに応えるものでなければなりません。オーストラリア、イギリス、ドイツ、スペインで最近発表した数十億ドルの投資では、このことを中心に据えています。AI の発展によって支援しなければならないコミュニティのニーズに常に心を配り、同業他社だけでなく、お客様、政府、市民社会とのパートナーシップの精神を追求しなければなりません。AI エコノミーを支えるインフラを構築し、そのインフラが提供する機会を広く利用できるようにする必要があります。

5 に、積極的かつ建設的なプロセスを踏みながら、新しいバージョンの AI インフラとプラットフォームの設計とリリースで、政府や IT 業界に協力する必要があります。企業や規制当局にとって重要なのは、できる限り早く、理想的には新製品がまだ開発中の段階で、問題解決に至ることを目標にオープンな対話を行うことだと考えています。マイクロソフトとしては、規制当局からの問い合わせに完全かつ協力的に対応し、お互いに十分な情報を得た上で、さまざまなアプローチの利点について規制当局と議論できるようにしなければならないと理解しています。新製品を完成させて発売する前に、懸念事項を整理して現実的な手順と解決策を特定するためには、聞き上手になって、建設的に問題を解決するべきです。

Microsoft AI access principles

マイクロソフトの AI アクセス原則

  • 以下に発表する新しい原則には、前述した信条が組み込まれています。留意すべき重要な点は、責任ある AI に関する安全、セキュリティ、プライバシーなどの課題を考慮に入れながら、法的義務を遵守し、人々を守るための客観的かつ有効な基準に従って、この原則すべてを適用しなければならないという点です。このことは以下に詳しく述べています。こうした要件に従い、私たちは次の 11 原則を守ることを約束します。

モデルやアプリケーションを作る AI 開発者にアクセスとサポートを提供

AI のイノベーションと競争を促進するために、マイクロソフトは、当社のクラウド コンピューティングや AI インフラ、プラットフォーム、ツール、サービスを世界中のソフトウェア開発者が幅広く利用できるようにします。Microsoft Azure が開発者にとって、AI モデルを訓練、構築、展開し、アプリケーションやソリューションでモデルを安全に使用するための最適な場所になることを望んでいます。そこで、次の原則を定めます。

  1. チップ容量の増加によって、マイクロソフトのクラウド コンピューティングの AI インフラを拡大することで、プロプライエタリでもオープンソースでも、規模の大小を問わず、より多くの基盤モデルの訓練と展開ができるようにします

OpenAI とのパートナーシップを通じて、次世代の OpenAI モデルの訓練をサポートし、ますます多くのお客様が各地のデータセンターで OpenAI モデルやマイクロソフトの Copilot アプリケーションにアクセスして使用できるようにしています。同時に、他の開発者を支援し、規模を問わず、プロプライエタリおよびオープンソースの AI モデルの訓練と展開に尽力しています。

本日の大きな発表である Mistral AI とのパートナーシップで、マイクロソフトの欧州における技術開発支援が新たな段階へ移行します。これにより、Mistral AI は、Azure の最先端 AI インフラを利用して、次世代の大規模言語モデル (LLM) の開発と展開を加速させることができます。また、Mistral AI のプレミアムモデルを Microsoft Azure 上の MaaS サービスを通じてお客様に提供できるようになります。MaaS では、モデル開発者が AI モデルを公開し、収益化することが可能です。AI モデル管理のための統一プラットフォームを提供することで、オープンソース開発とプロプライエタリ開発の両方において、世界中の AI モデル開発の障壁とコストを下げることを目指しています。このサービスは、Mistral AI に加えて、Meta、Nvidia、Deli、Hugging Face などの企業や組織による 1,600 以上のオープンソースおよびプロプライエタリのモデルをすでにホストしており、Cohere や G42 のモデルも近日中に追加される予定です。

今後数か月または数年のうちに、このようなサポートを他のモデルにも拡大していきます。

  1. AI モデルと開発ツールを世界中のソフトウェア アプリケーション開発者が幅広く利用できるようにし、すべての国が独自の AI エコノミーを構築できるようにします

マイクロソフトの Copilot や OpenAI の ChatGPT が示しているように、AI モデルの処理能力へのアクセスと使用が可能な新世代のソフトウェア アプリケーションが、瞬く間に世界中に利益をもたらしています。しかし、私たちのアプリケーションは、世界が必要とし、創造する AI 搭載アプリケーションのごく一部に過ぎません。そのため、責任ある AI 原則に沿った方法で、当社がホストする AI モデルや当社の開発ツールを、世界中の AI ソフトウェア開発者が幅広く利用できるように、継続的かつ革新的な取り組みを行います。

Azure OpenAI Service もこの取り組みに含まれているため、新興企業や既存の IT 企業、社内の IT 部門で働くソフトウェア開発者は、OpenAI の最もパワフルなモデルを呼び出して利用するソフトウェア アプリケーションを構築することができます。また、MaaS を通じて、Mistral AI や Meta などの他社が提供するオープンソースやプロプライエタリの AI モデルの利用も可能です。

また、開発者たちが独自のデータセットや特定のニーズやシナリオに基づいて既存のモデルを微調整できるようにすることで、AI ソリューションをカスタマイズして構築できるよう支援していきます。Azure Machine Learning では、開発者は、シンプルな操作性の UI やコードベースのノートブックを使いながら、手軽に最先端の事前学習済みモデルにアクセスして、独自のデータやパラメーターに応じてカスタマイズすることができます。これにより、企業、政府、非営利団体は、顧客サービスの向上、公共の安全の強化、社会的利益の促進など、目標を達成し、課題を解決するのに役立つ AI アプリケーションを作成することができます。こうして AI の民主化が急速に進み、開発者の間でより広範なイノベーションとコラボレーションの文化が育まれていきます。

また、開発者が AI ソリューションを作成、共有、学習できるツールやリポジトリを GitHub 上で提供しています。GitHub は、ソフトウェア開発のための世界最大かつ最も信頼性の高いプラットフォームで、1 億件以上のリポジトリが存在し、4,000 万人以上の開発者に利用されています。私たちは、GitHub で AI ツールやリソースを公開することで AI 開発者コミュニティを支援し、開発者が AI 開発における最新のイノベーションとベストプラクティスにアクセスできるようにするとともに、他の開発者と協力してオープンソースコミュニティに貢献する機会を提供します。その一例として、先週、マイクロソフトはレッドチーム向け生成 AI システムを支援するためのオープンな自動化フレームワークを公開しました。

AI エコノミー全体で選択肢と公平性を確保

私たちは、AI のイノベーションと競争には選択肢と公正な取引が必要であることを理解しています。そのため、組織、AI 開発者、データ サイエンティストが、ソリューションを構築する際に使用する AI モデルを柔軟に選択できるようにします。Microsoft Azure を使用することを選択した開発者には、マイクロソフトが有利になるような操作が行われることはないと確信してもらいたいと考えています。そこで、次の原則を定めます。

  1. 開発者が Microsoft Azure にある AI モデルにパブリック API でアクセスして使用できるようにします

Microsoft Azure OpenAI API サービスを含め、Azure 上でホストしている AI モデルはすべてパブリック API を介してアクセス可能です。マイクロソフトは、開発者がこれらの API でモデルを呼び出して使用する方法について説明する文書を、ウェブサイトで公開しています。アプリケーションの構築や展開をしているのが、Azure 上であっても、その他のプライベートまたはパブリック クラウド上であっても、API を使って、モデルにアクセスすることが可能です。

  1. ネットワーク事業者がソフトウェア開発者を支援できるよう、共通のパブリック API をサポートします

ネットワーク事業者は、多くの国や地域の政府をはじめとする、世界中のお客様の AI トランスフォーメーションを加速させる上できわめて重要な役割を果たしています。だからこそ、私たちは、GSM アソシエーションが推進する Open Gateway イニシアチブを通じて、モバイル エコシステムにおけるイノベーションを促進するための共通のパブリック API をサポートしています。これは、認証、位置情報、サービス品質など、ネットワークが提供する高度な機能を公開するための、すべての通信事業者の間で共通の API です。これにより、ネットワーク事業者が新世代の AI 対応ソフトウェア開発者に高度な機能を提供するために不可欠な一歩が踏み出されました。私たちは、GSMA でこのイニシアチブが誕生したときからその可能性を確信し、世界中の通信事業者と提携して実現を支援してきました。

本日、モバイル ワールド コングレスにおいて、Azure Programmable Connectivity (APC) のパブリック プレビューを開始します。これは、マイクロソフトの他のサービスと完全に統合された Azure 最上級のサービスで、開発者に対して Open Gateway へのアクセスをシームレスに提供します。つまり、ソフトウェア開発者は、各事業者向けの特別な作業を必要とすることなく、他のサービスと同様に、Azure から直接、事業者のネットワークが提供する機能を利用できます。

  1. 開発者は、Microsoft Azure 上での展開と使用のために、AI モデル、ツール、アプリケーションを配布および販売する方法として、Azure Marketplace を介すのか、またはお客様と直接行うのか選択できるようにします

Windows が何十年もの間、そしてこれからもそうであり続けるように、Microsoft Azure をオープンなクラウド プラットフォームとして維持していきます。そのために、開発者が、Microsoft Azure 上での展開と使用のために、AI  ソフトウェアを配布および販売する方法を選択できるようにします。Azure Marketplace では、開発者が AI ソフトウェアを出品し、さまざまなビジネスモデルで Azure のお客様に販売することができます。Azure Marketplace を選んだ開発者は、マーケットプレイスが提供するトランザクション機能を手頃な料金で利用するか、マーケットプレイスを介さずにお客様にライセンスを販売するか (無料)、自由に決めることができます。そしてもちろん、どちらを選んでも、開発者は Azure のお客様に AI ソフトウェアを自由に販売や配布することができ、お客様はそのソフトウェアを Azure 上にアップロード、展開、使用することができます。

  1. Microsoft Azure において、開発者の AI モデルの訓練、構築、展開、使用によって得られる非公開の情報やデータを、それらのモデルと競合するような目的で使用しないことを保証し、開発者のニーズを尊重します

私たちは、Microsoft Azure の成功にとって最も大切なのは信頼であると考えています。基盤モデルの訓練、構築、展開に Microsoft Azure を選択する AI 開発者やお客様の利益に貢献することで、この信頼を築くことができます。具体的には、開発者の AI モデルの訓練、構築、展開、使用によって得られる非公開の情報やデータを、それらのモデルと競合するような目的で使用しないようにします。

  1. Microsoft Azure を利用するお客様が、他のクラウドプロバイダーに乗り換える場合に、データのエクスポートや転送を容易に行えるようにします

お客様が AI やコンピューティングに関するその他のニーズを満たすために複数のクラウド プロバイダーを利用できること、そして実際に利用していることを理解しています。また、Microsoft Azure に保存されたデータは、「お客様の」データであることも理解しています。ですから、お客様が他のクラウド プロバイダーに乗り換える場合に、データのエクスポートや転送を容易に行えるようにします。さまざまな国で、データのエクスポートや転送のコストを転嫁できる範囲を制限する法律の検討や制定が行われていることを認識しており、マイクロソフトはこれらの法律を遵守していきます。

社会的責任の遂行

私たちは、新しい AI 技術が非常に多くの重大な問題を提起することを認識しています。たとえば、プライバシー、安全、セキュリティ、児童の保護、ディープフェイクによる情報操作からの選挙の保護など、数々の社会的に重要な問題が挙げられます。こうした問題に対して、IT 企業は AI サービスのガードレールを作成して、新たな法規制の要件に適応し、幅広い社会的ニーズを満たすために複数のステークホルダーと連携しながら積極的に取り組む必要があります。マイクロソフトは次の優先事項を通して、こうした責任を果たすことを約束します。

  1. AI データセンター上で稼働するすべての AI モデルやアプリケーションの物理的およびサイバー セキュリティのニーズをサポートします

AI データセンターには、AI ソリューションの原動力となるインフラとデータが存在するため、私たちは物理的なセキュリティの保護に取り組んでいます。データセンターが不正アクセス、盗難、破壊行為、火災、自然災害から確実に保護されるよう、厳格なセキュリティ プロトコルと基準に従っています。そして、潜在的な脅威や侵害を検出し、防止するために、データセンターを監視および監査しています。当社のデータセンターの認定スタッフは、セキュリティのベスト プラクティスに関するトレーニングを受けており、お客様のデータのプライバシーと機密性を尊重した行動規範の遵守が義務付けられています。

また、お客様や社会のために機密情報の処理と生成をする AI モデルやアプリケーションのサイバーセキュリティ保護にも取り組んでいます。最先端の暗号化、認証、認可メカニズムを用いて、転送中および静止中のデータ、ならびに AI モデルとアプリケーションの完全性と機密性を保護しています。サイバー攻撃の検知と軽減、脆弱性の特定と解決、セキュリティ態勢とレジリエンスの向上など、サイバーセキュリティ能力の強化にも AI を活用しています。

こうした取り組みに加え、Secure Future Initiative (SFI) を新たに立ち上げました。これはマイクロソフトの社内全体の力を結集したもので、3 つの柱で構成されています。AI を活用したサイバー防御、ソフトウェア工学の基礎的進歩、サイバー脅威から国民を守るための国際規範の適用強化の提唱に焦点を当てています。

  1. AI 設計に関する意思決定の中心に人々を据え、公平性、信頼性、安全性、プライバシーとセキュリティ、インクルーシブ性、透明性、説明責任といった永続的な価値を尊重するために、確固とした責任ある AI 原則を適用します

AI が普及し影響力を持つにつれて、倫理的で信頼性できる、人間の価値観に沿った方法で技術が開発され、展開されることを保証する必要性が高まります。そのために、チームが責任を持って AI を構築し、使用するための道標となる包括的なフレームワークとして、マイクロソフトの責任ある AI 原則を作成しました。

この原則は、責任ある AI の 6 つの主要な側面である、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、インクルーシブ性、透明性、説明責任に言及しています。各側面について、これらの価値観が何を意味するのか、実際に目標を達成するにはどうすればよいのかを定義しています。また、設計・開発から展開・監視に至るまで、AI ライフサイクル全体を通じてチームがこの原則を導入できるよう、ツール、プロセス、ベストプラクティスを提供しています。この原則が定めるアプローチは固定的なものではなく、最新の研究、フィードバック、学習に基づいて進化し、改善されていきます。

  1. AI スキルを世界中に広く普及させるための取り組みに投資します

競争力を維持して、経済成長を実現するために、高度な AI チップやデータセンター以上のものを各国が必要としていることを認識しています。AI によって仕事や働き方が変わり、キャリアアップには新しいスキルの習得が求められるようになりました。だからこそ私たちは、AI インフラと AI スキルのキャパシティを融合し、この 2 つを組み合わせてイノベーションを推進していきます。

マイクロソフトは、ここ数か月間でオーストラリアイギリスドイツスペインなどの国々の数百万人を対象とした新しい AI スキル習得プログラムと、数十億ドルものインフラへの投資を組み合わせて実施しました。また、AI 活用スキルの構築、AI 技術スキルの開発、AI によるビジネス改革の支援、安全で責任ある AI 開発の促進に焦点を当てたトレーニング プログラムを立ち上げています。このプログラムには、生成 AI に関する初の資格認定も含まれます。

通常、当社のスキル習得プログラムには、マイクロソフト認定のトレーニング サービス パートナー、複数の業界パートナー、大学、非営利団体の専門的なネットワークが関与しています。従業員のための AI スキル習得プログラムを開始したいと考える大企業が増えており、私たちは企業と連携しながら、教材の提供や取り組みのサポートを積極的に行っています。

最近では、アメリカ最大の労働組合連合である AFL-CIO との重要なパートナーシップを結びました。これは労働団体とテクノロジ企業が AI に焦点を当てた初の試みで、3 つの目標として、(1) AI 技術の動向に関する詳細な情報を労働組合リーダーや労働者と共有すること、(2) 労働者の視点や専門知識を AI 技術の開発に取り入れること、(3) 現場の労働者の技術スキルやニーズを支援する公共政策の形成をサポートすることを掲げています。

私たちは多くの場合に、政府機関や協会が AI スキル習得プログラムの規模を拡大できることを学んできました。国や地域単位であれば、何十万人、何百万人もの人々に手を差し伸べるための人材、プログラム、専門知識を政府の雇用機関や教育機関が有しています。私たちは、こうした取り組みに協力し、支援を提供していきます。

こうした取り組みやその他のイニシアチブを通じて、AI 教育にアクセスできる人を増やし、誰もが自分の生活やキャリアに AI の力を活用できるようにすることを目指します。

  1. 環境に配慮した方法で AI データセンターを管理し、環境の持続可能性のニーズに応えるために AI を活用します

2020 年、マイクロソフトは 2030 年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、廃棄物ゼロにする野心的な目標を設定しました。この目標を達成する上で、データセンターは重要な役割を担っていると認識しています。責任ある持続可能な設計にすることで、データセンターの建設や運営を行う送電網に、私たちが消費する電力と同等かそれ以上のカーボンフリーの電力を供給するための長期的な投資をして、他社に先駆けた取り組みを行っています。

また、データセンターの建設からサプライチェーンとの関係に至るまで、AI インフラへの投資に関連するスコープ 3 の排出量に対して総合的なアプローチを適用しています。これには、サプライチェーンにおける内包 CO2 削減のための技術革新の支援や、事業全体のウォーター ポジティブと廃棄物ゼロの目標の推進が含まれています。

同時に、新素材の発見や異常気象の予測と対応の向上など、持続可能性のためのソリューションの展開を加速させる上で AI が不可欠なツールになり得ることを認識しています。こうした理由から、マイクロソフトは他社と連携し、AI を活用することで従来であれば数十年を要する飛躍的進歩を可能にし、より持続可能な未来の実現に向けて最も重大な課題に対処するために、AI 技術が果たす重要な役割を強調していきます。

 

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マイクロソフトの取り組みを規定するこの原則は、最初の一歩に過ぎません。AI 技術と業界の進歩、法規制の変化に応じて、この原則や取り組みを発展させていく必要があります。今後も、新しい AI エコノミーを構築する上で重大な役割を担っている多くの利害関係者の方々と対話を重ねていけることを楽しみにしています。私たちの経験から得た教訓があるとすれば、私たち全員が共に成功しなければならないということです。

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