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お客様支援のために Azure の処理能力を増強する – COVID-19 パンデミック 下でのマイクロソフト

本ブログは、米国時間 6 月 16 日に公開された “Growing Azure’s capacity to help customers, Microsoft during the COVID-19 pandemic” の抄訳です。

ワシントン州が COVID-19 の第 1 波に気付いた時、公衆衛生当局や病院には必要な情報を共有するための集中型の仕組みがありませんでした。

既存システムでは利用可能な病院ベッドの管理はできていましたが、特定の施設に人工呼吸器、要員、医師や看護師を保護するためのマスクや手袋が十分にあるかを判断することは困難でした。感染爆発の初期に患者の検査と治療を行なっていた病院は、データベース、スプレッドシート、E メール、ポストイットの付箋といったあらゆる手段を使って情報を管理していました。

3 月下旬に、ワシントン州の保健当局は、Azure 上で稼働する Hospital Emergency Response Solution の拡張について、マイクロソフトに相談を持ちかけました。患者の急増に対応するヘルスケアプロバイダーの求めにより開発されたこのソリューションにより、COVID-19 の症例の管理が容易になり、患者に対応可能な医師、そして、世界中で不足し始めていた機器や物資の状況把握が容易になりました。

「需要増に備えた計画や物資の備蓄を行なってきましたが、世界規模で誰もが同じものを必要とする今回のような事態は想定外でした」とワシントン州福祉保健課の緊急事態対応マネージャーのエリカ ヘンリー (Erika Henry) 氏は述べています。

これと同時期、世界中で COVID-19 による外出禁止令が広がる中で、マイクロソフトはクラウドサービスの需要の歴史的急増を経験しました。学区域全体がオンライン授業に移行し、Teams による会議が単に便利なツールというだけではなくビジネスを行なう上で不可欠になったためです。子どもたちは友人とやり取りする手段としてビデオゲームに熱中し、世界中の数 100 万人ものビジネスマンが一夜にしてリモートワークを採用しました。

たとえば、3 月末には、Microsoft Teams の総会議時間は 1 日あたり 27 億分という記録的数字になりました。そのわずか 2 週間前にはこの数字は 9 億分でした。4 月には、この数字は 1 日あたり 41 億分に跳ね上がりました。人々が会議を行い、チャットし、電話し、コラボレートするための Microsoft 365 のチームワークハブの利用率が未曾有のレベルになったのです。

一方、パンデミックの対応に追われる現場の顧客や組織を支援するために Azure サービスが規模拡大を継続できるよう、マイクロソフト社内のあらゆる場所で社員が取り組みを始めました。

12 日間で、州当局は、Microsoft Azure 上で稼働する Microsoft Power Platform により構築された Washington Healthcare Emergency and Logistics Tracking Hub (WA HEALTH) を立ち上げることができました。

「これにより、患者が適切な場所で適切な時間に適切な治療を受けられているかを把握すると共に、州全体の保護器具の需要、誰が何を持っていてどのようなギャップがあるかも理解できるようになりました」とヘンリー氏は述べています。

Microsoft Azure などのクラウドサービスは、そもそも、増減する需要に対応して迅速に拡張できるよう設計されています。この 5 月に開設されたイタリアニュージーランドポーランドのデータセンターを含め、世界中に 60 カ所以上あるデータセンターリージョンによって一部地域で自然災害や電力障害が発生した場合でも、トラフィックを移動することができます。需要の急増に対応するためのコンピューティングハードウェアが世界中の倉庫に保管され、最も必要とされる場所で展開できるようになりました。

3 月には需要の中心はヨーロッパでした。イタリアやスペインなどの国がコロナウイルスの感染を抑制するために国家レベルのロックダウンを行なっていました。これと同時期に、中国や東南アジア諸国におけるサプライチェーンの一時的中断による一部のデータセンター向けハードウェアの製造上の問題が、一部のリージョンにおける処理能力増強の課題となり始めました。なお、4 月 29 日付けの四半期業績報告で、マイクロソフトは、ハードウェアサプライチェーン上の課題は、3 月で終わる四半期内でほぼ解決するであろうと述べています。

Azure による COVID-19 対応を支援してきたパートナーソフトウェアアーキテクト、マーク シムス (Mark Simms) は次のように述べています。「COVID-19 対策の範囲と規模は未だかつてないものです。世界の大部分を 1 カ月でデジタル化しなければなりません。初期の需要増に応え、人命にかかわる重要なワークロードをお客様が稼働できるようにするために処理能力を解放するための作業も未だかつてない経験したことがないものでした。」

「適切なことを行なうために根本的な変革を行ないました。しかも、それをきわめて短期間で行なう必要がありました」とシムスは述べます。

マイクロソフトのデータセンター担当者は、24 時間シフト体制でソーシャルディスタンスを維持しながら、新規サーバーのインストール作業を開始しました。製品チームは、効率向上により Azure のリソースをお客様に向けてさらに解放する作業に取り組みました。また、大西洋の自社所有海底ケーブルの 1 つの容量を倍増すると共に、ケーブルの他の所有者にも容量追加を交渉しました。ネットワークエンジニアは新規ハードウェアをインストールし、わずか 2 週間で America Europe Connect のケーブルの展開済通信容量を 3 倍にしました。

マイクロソフトの計画は、すべての顧客に対するサービスの継続性にフォーカスしたものでしたが、とりわけ、ヘルスケアプロバイダー、警察、緊急対策要員、金融機関、重要物資のメーカー、食料品店、ウイルスの状況を迅速に公衆に伝える保健機関など、COVID-19 対策の最前線にいる人々を重視しています。

Azure Global and Customer Experience のエンジニアリングチームは、24 時間体制で Azure サービスの監視と移動を行ない、重要顧客がスムーズに業務を行ない、COVID-19 による新たな課題に対応できるよう支援しています。全部門の社員が WA HEALTH などの緊急プロジェクト向けに支援を申し出ています。

WA HEALTH は、マイクロソフトの Regional Government Emergency Response and Monitoring Solution 上で構築されており、Microsoft Power Apps Portal と Microsoft Power BI を活用し、医療従事者が、ウェブポータルやスマートフォンを通じて、COVID-19 の症例数や重要なリソースの情報を、勤務終了時などの適切なタイミングでアップデートできるようにします。

パンデミックが広がり、患者数が増す中、州や地方自治体の公衆衛生担当者は、州内の 100 カ所以上の救急病院のデータに基づいたほぼリアルタイムのダッシュボードを活用し、適切な応答を行なえます。州当局は動向の監視を継続でき、経済活動をいつ再開すべきかをデータに基づいて判断できるようになりました。

WA HEALTH の展開に貢献した Microsoft Power Platform 担当主任プログラムマネージャーのゲアリー バード (Gary Bird) は次のように述べています。「これはリアルタイムで変化するイベントでした。時間単位、さらには、分単位で意思決定を行なわなければなりませんでした。会社全体が解決策実現に一丸となっていました。」

The Washington Healthcare Emergency and Logistics Tracking Hub (WA HEALTH) は、Microsoft Azure 上で稼働し、州内の公衆衛生担当者と病院が、COVID-19 に関する重要な情報の監視と共用を行なえるようにします。

需要と供給のバランス

パンデミックが起きた時、予期せぬ需要増に対応して Azure のコンピューティングリソースを拡張するというマイクロソフトの計画があります。これに基づき、最初に、需要が厳しいリージョンにサーバーの追加を行ない、24 時間体制で新規ハードウェアのインストールを行ないました。重要なデータセンターの従業員の健康を守るために、ソーシャルディスタンスを迅速に制定し、保護器具を提供すると共に厳格な消毒のルールを実行しました。

マイクロソフトは、既存の顧客向けの処理容量を優先する一方で、人命救助や安全確保のサービスのために迅速に処理容量を拡大しなければならない緊急対応要員向けの処理容量の確保も行ないました。また、パンデミック期間中の人々の健康維持に取り組む非営利団体向けのクラウドサポートも拡大しました

マイクロソフトの Azure と各製品担当チームは、Teams、Office、Xbox などのサービスが、急増する顧客からの需要に応えられるよう 24 時間体制で取り組みました。次に、Azure 上で稼働するマイクロソフトのサービスの効率性を調査し、社外の顧客向けに活用できる資源を確保しました。

容易にわかるように、最初の需要急増を経験したサービスは Microsoft Teams でした。しかし、これ以外にも、リモートワークのために 1 カ月で需要が 3 倍になった Windows Virtual Desktop、そして、金融機関、学校、コールセンター等が、数千人もの従業員を他プラットフォームに実質的に一夜で移行する中で需要が急増した Azure Active Directory Application Proxy の処理容量拡大も必要でした。

新しい顧客がサインアップし始めるだけではなく、あらゆる会議やコミュニケーションにおいてツールに依存するようになったと、Microsoft Teams の主任グループプログラムマネージャー、マーク ロングトン (Mark Longton) は述べています。

「Teams は便利なサービス、未来のコミュニケーションツールといったといった存在から瞬く間に必要不可欠なツールになりました。未来に向かうスピードを加速したとも言えます」とロングトンは述べます。

Microsoft Teams のチームは、中国とイタリアの初期のデータを使用して、感染の広がりに応じた利用率の増加の計画を行ないました。多くの国がロックダウンを行なう中で、レドモンド勤務のマイクロソフト社員の数 10 名が毎週日曜の夜にリモート会議を行ない、欧州の多数のユーザーが月曜の勤務開始時にログインする際に、遠隔測定によるボトルネックの発見やトラブルシューティングを実施しました。

Azure の品質管理担当ディスティングイッシュトエンジニア、ジョン シーハン (John Sheehan) は次のように述べています。「通常、ソフトウェアの問題には組織として対応します。しかし、一夜にして需要が 1 桁増すような状況では、短期間にあらゆることを行なわなければなりません」と述べています。

重要なサービスの規模拡大と安定化に成功すると、マイクロソフトは効率性向上に取り組みました。Azure 上で稼働する全サービスの性能データを全社のエンジニアに公開し、より広範な Azure 顧客向けにコンピューティング容量を提供できるようにするためのアイデアを募りました。

Teams では不具合を経験した顧客は少数でした。誰かが Teams チャット内で入力している時に表示される 3 つのドットのマークの表示の遅延を長くし、To フィールドに文字入力するたびに宛先を予測提案する機能を無効にすることで、システムの効率性を大きく向上できました。週末の作業でエンジニアは動画ストリーミングのコードを書き直し、効率性を 10 倍向上しました。

「Teams は便利なサービス、未来のコミュニケーションツールといったといった存在から瞬く間に必要不可欠なツールになりました。未来に向かうスピードを加速したとも言えます。」

また、1 週間で、Teams は、予備の処理容量を追加のデータセンターをまたがって分配できるようになりました。これにより、実質的に地域をまたがった負荷分散が可能になりました。Teams の Partner Director of Engineering であるアーシ ナタラジャン (Aarthi Natarajan) はこの作業は数カ月を要してもおかしくないものだったと述べています。

「通常であれば『まずこのリージョン、次にこのリージョンに対応しよう』と議論が巻き起こったでしょう。しかし、今回は、議論の余地はありません。今、グローバルに対応するしかないのです」とナタラジャンは述べます。

現在、日次で 7,500 万人のアクティブユーザーを擁する Teams の規模拡大を収容するために、マイクロソフトの Azure Wide Area Network チームは、わずか 2 カ月で、マイクロソフトの社内データを世界中で転送する光ネットワークの容量に 110 テラビットを追加しました。また、地域のインターネットプロバイダーに接続するためのエッジサイトを新たに 12 カ所追加しました。自動車を高速道路から下道に向かわせる出口車線のように、エッジサイトは、ネットワークの混雑を解消し、データがより自由に流れるようにします。

また、世界中のさまざまな地域で需要のピークを回避し、需要の高いデータセンター地域からのトラフィックを流用するために、社内の Azure ワークロードも移行しました。

Azure 上で稼働している Xbox サービスでは、年末や新作ゲームのリリース時に使用率が大幅に増加することはよくあります。しかし、COVID-19 による外出禁止令により、ゲームによって友人や家族とつながる人々の数はかつてないペースで増加しました。マルチプレイヤーのゲームの利用率は 50 パーセント増加し、ピーク時の並行利用率は 30 パーセント増加しました。

このような需要増大の中、Xbox と Azure のチームは協力し、英国とアジアの需要が大きいデータセンターからゲームのワークロードを移動し、ユーザーの体験を損なうことなく、他の Azure 顧客向けの処理容量を確保しました。

「COVID-19 対策の最前線にいるこれらの地域の人々が、私たち以上に処理容量を必要としていることに疑いはありません。そして、遠隔測定の結果、お客様の体験を維持しながらこのトレードオフができることを確信しました」と Xbox 運用の信頼性確保を担当するケイシー ジェイコブス (Casey Jacobs) は述べています。

また、マイクロソフトは、在宅勤務、遠隔授業、家での動画ストリーミングやゲームなどが同時に行なわれることによる、地域のインターネットプロバイダーのネットワークの混雑を悪化させたくないと考えていました。Xbox チームは、規制当局等と協力し、ピーク時のネット帯域幅需要を削減するために、リリース方法を変更したり、新たな機能を追加したりするなどの方策を採りました。

「ファーストレスポンダーやビジネスが必要とするインターネットの帯域幅を損なってはいけないことは十分理解していました」とジェイコブスは述べています。

人命保護を司るお客様へのマイクロソフトのコミットメント

Azure Partner Engineering Manager のジェレミー ホレット (Jeremy Hollett) は、初期の段階から、ファーストレスポンダー、行政職員、ヘルスケアプロバイダー、病院を支えるエネルギー会社、重要物資を提供する小売店、小規模事業者への融資を行なう銀行といった重要な人命保護関連サービスを行なうグローバルな顧客と、それらの顧客が使用している Azure サービスのリストを作成し始めていました。

このリストには RapidDeploy も含まれていました。同社のサービスは、Microsoft Azure Government Cloud 上で稼働し、公的安全期間や緊急通報のオペレーター向けに統合された緊急応答ソリューションを提供します。

RapidDeploy は、Microsoft Azure でホストされた緊急応答ソリューションを活用し、COVID-19 流行期における人命救助要員は、緊急通報対応オペレーターを適切に支援できています。(イメージ提供: RapidDeploy)

たとえば、バルチモア市は、病院のベッド数、地図データ等の COVID-19 関連データによって緊急通報オペレーターが対応チームを迅速に派遣できるよう支援するソリューション RadiusPlus を数日間で展開することができました。

カリフォルニア州が外出禁止令を発令した後、行政担当者は家庭内暴力の増加を予測しました。同州は、RapidDeploy に RadiusPlus のアップグレードを求めました。これにより、緊急通報のオペレーターは、被害者とチャットによるやり取りを行ない、加害者が近くにいる場合でも容易にコミュニケーションが行なえるようになりました。

RapidDeploy 等の顧客が中断なく人命保護サービスの提供を継続できるよう、マイクロソフトは、重要サービスを提供する人命保護関連の顧客からの Azure の追加容量の要求を自動的に承認することにしました。

また、ホレットのチームは、これらの各顧客向けの Azure サービスをモニターし、問題を迅速に発見できるようにするためのダッシュボードを構築しました。

「お客様のためにバーチャルな作戦司令室を構築したと言えます。サービスが順調であるかを確認し、夜間に障害があれば、どの時間であっても対応が取れます。そして、サポートが必要な状況になれば、直ちに私たちにエスカレーションされます」とホレットは述べます。

RapidDeploy の共同創業者兼 CEO のスティーブ ローチャー (Steve Raucher) 氏は、COVID-19 への対応の最前線で働く担当者が直面する新たな課題に対して Azure はまったく問題なく稼働していると述べています。

「すべて順調であることは、私たちが技術的問題をまったく経験していないことに表れています。COVID-19 以前からこのテクノロジは問題なく稼働していましたが、パンデミック後もそれは変わりません」とローチャー氏は述べています。

タイトル画像: マイクロソフトは当初の計画に則り、COVID-19 パンデミックに対応して、需要の大きいリージョンに新規サーバーを追加し、24 時間体制でハードウェアラックをインストールすることで、Azure のコンピューティングリソースを迅速に拡張しました。(イメージ提供: マイクロソフト)

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