リモートワークによる疲弊をもたらす予期せぬ要因の発見と修復を、新ツールが支援
バネッサ ホー (Vanessa Ho)
※ 本ブログは、米国時間 2 月 4 日に公開された “New tools help companies pinpoint — and fix — the unexpected things that make remote work so draining” の抄訳を基に掲載しています。
パンデミックによる在宅勤務を始めたばかりのジア シアン コー (Jia Xiang Koh) は、自分が週末も含めて一日中働いているように思えました。火曜の朝でも日曜の夜でもダイニングルームのテーブルからメールに返信していました。会議の予定がすし詰め状態で、仕事と生活の境界があいまいになっていました。
しかし、パンデミックが始まってから 11 カ月後、コーはいくつかのシンプルなステップを取ることでワークライフバランスを向上できました。これらのステップは、彼の勤務先であるリンクトインが、従業員の労働習慣と意識との相関に関する研究に基づいて作り出した推奨事項に基づくものです。
「仕事の生活の境界線が明確になり、集中時間を意識的に設定できるようになったことでとても快適になりました」とコーは述べます。彼は仕事好きですが、リモートワークやハイブリッドワークによる燃え尽き症候群を避けたいと考えています。
他の組織と同様、グローバルなソーシャルネットワーキング企業であるリンクトインもリモートワークの環境に移行してきましたが、同社の経営陣は自社の従業員が今どのような状態にあるのか、そして、リモートワークへの適合をどう支援すべきかを知りたがっていました。そこで、2016 年にマイクロソフトに買収された同社は、Microsoft Viva の分析ツールを採用しました。この新たな従業員体験プラットフォームは、知識 (knowledge)、学習 (learning)、コミュニケーション (communication)、洞察 (insights) を組み合わせ、人々と組織の成長を支援します。
Microsoft Viva Insights により、従業員が出席する会議の数、勤務時間の長さ、勤務時間後に送信したインスタントメッセージの数などの勤務パターンに関する情報を可視化できます。個人プライバシーの保護のためにすべての情報がデフォルトで集約化・匿名化されます。従業員の感情を理解し、つながりを強化できるよう組織を支援する LinkedIn プラットフォーム Glint で収集した調査データとこれらの洞察を組み合わせることができます。
リンクトインの人事部門においてデータサイエンスに基づきマネージャーの人材開発の意思決定を支援している People Analytics 担当シニアマネージャーのレナ イー (Rena Yi) は、「これらのデータセットを統合することで、人々の行動や様々な施策による影響に関する独自の洞察と、日々の業務を改善するための具体的な行動の解決策を得られます」と述べています。
約 500 人の米国のリンクトイン従業員に対する 3 カ月間の調査は任意で透明性が高いものでした。イーのチームは、リモートワークへの移行により会議数が増え、勤務時間も長くなっていることを発見しました。勤務時間後の会議数が 50 パーセント以上増加し、勤務時間後のインスタントメッセージは約 40 パーセント増加していました。また、一般的に、会議数が少なく、残業時間が少なく、中断が入らない「集中時間」が多い従業員の方が、仕事の満足度が高いことも明らかになりました。
このデータにより、リンクトインは自社の従業員を「熱心」(engaged)、「均衡」(balanced)、「孤立」(detached)、「過労」(overworked) という 4 つのペルソナで理解でき、パターンをつなぎ合わせられるようになりました。たとえば、「熱心」と「過労」のペルソナは、集中時間が少なく、残業時間が多いという点で共通しています。イーのチームは、これらのペルソナがどのように変わっていくのかを観察しています。
「この点を私たちはみな感じていると思います。パンデミックが発生してから何カ月も経った今、大きな業務負担を維持するのは困難です。すべての人のウェルビーイングを支援できるソリューションを考案することが重要でした」とイーは述べます。
イーのチームは、勤務時間に多くの沈黙時間、いわば、集中したり充電したりするための時間を取り入れることを推奨しています。また、各個人が自身の理想的な「仕事のリズム」を作り、それを守るとともに他者のリズムを尊重することも推奨しています。
イーにとっては、仕事のリズムとは、午後に子供と過ごすための時間帯を持ち、夜に仕事を終わらせることです。
コーにとっては、他人のリズムを尊重することとは、緊急ではない案件では「すぐに応答しなくても大丈夫です」、「緊急ではありません」などとメールに書き添えることで、受け手を必要以上に急がせないようにすることです。
シンガポールの People Analytics 担当マネージャーであり、今までも米国のチームメイトとの時差を常に気にしてきたコーは「他人の仕事の境界線について思慮深くなりました」と言います。
「勤務時間外に他人にコンタクトすることを避けるようにしています。また、すぐに応答する必要が無いことを明示しています。これにより、あらゆるものの管理がはるかに容易になったように思えます」と彼は述べます。
自分自身のウェルビーイングのために、彼は参加する会議の数に注意を払うようになり、他者がいつ返事を送るべきかわかりやすいようにステータスメッセージに自分の勤務時間を記載するようにしています。
この調査は、従業員のウェルビーイングを尊ぶリンクトインの企業文化がどれほど浸透しているかを表しています。同社には全社的な「ノー会議デイ」、メンタルヘルスデイ、そして、1 年に 2 週間のシャットダウン期間があります。従業員は自分の裁量で休暇を取ることもできますが、People Analytics 担当バイスプレジデントのデイビッド ホワイト (David White) によれば、休みの日や週が指定されることでウェルビーイングがより強力に支援されます。
「ウェルビーイングは他のあらゆるものの基盤です。人材こそが弊社の最も重要な資産です。そして、ウェルビーイングとエンゲージメントの観点から、従業員が仕事で実現したいことを支援できるデータを入手できています」とホワイトは述べます。
データも企業文化の形成を支援します。本調査では、業務時間や休憩時間、フォーカスタイムなどを自分の裁量で決められる従業員は、ウェルビーイングのスコアが高いことが示されています。
従業員のウェルビーイングをチェックするために、リンクトインは同社が 2018 年に買収したプラットフォーム Glint を使って継続的に調査を行っています。どのサーベイにも「リンクトインで働くことにどのくらい幸福を感じていますか?」という質問が含まれています。
「私はこの質問を気に入っています。これを Viva Insights の情報と組み合わせることで、『この従業員に、このグループに、このペルソナに何が起きているか?』がわかるようになり、以前は不可能だった方法でアクションをとれるようになりました」とホワイトは述べます。
現在、調査チームは、この調査の対象を同社の世界 1 万 6,000 人の従業員へと拡大しようとしています。ここでの目標は、リモートワークかハイブリッドか対面勤務かにかかわらず、従業員のウェルビーイングを継続的に向上していくことです。そして、リンクトインの企業ミッションは、グローバルなワークフォースのあらゆるメンバーに経済的機会をもたらすことであることから、ホワイトはここでの学びを他の組織にも共有したいと考えています。
「他企業に助言できることがあるとするならば、自社の従業員の状況を理解するための洞察を得るべきということです。まず、原因を理解することが必要です。すなわち、なぜ従業員はそのように感じているのかを知ることです。従業員のウェルビーイングを支援するために何ができるかを教えてくれるデータセットを獲得しなければなりません」とホワイトは述べます。
ホワイトによれば、従業員の幸福を理解し、それに投資できる企業こそが成長できる企業なのです。
Microsoft Viva Insights の詳細はこちらをご覧ください。
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