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Passion is Power: 障碍のある人がサポートする側に立つことが当たり前の世の中に

一人ひとりにカスタマイズされた PowerPoint 教材が導く
これからの学びのカタチ

Microsoft 365 の PowerPoint の各機能を活用し、学習教材の作り方をはじめとした様々なオリジナル動画を毎週のように公開し続けている教育者がいます。
その数、実に 500 本以上。

自宅で教育ビデオを作成している稲葉先生
自宅で教育ビデオを作成している稲葉先生 録画・編集・コンテンツはすべて PowerPoint で行う

聴覚支援学校の教師を 30 年以上勤める一方、NPO 法人デフサポートおおさかにおける教育サポート事業『ぼちぼち Edu』で副理事長として日々聴覚障碍児童・生徒の学びの場を主催する稲葉通太 (いなば みちお) 先生は、自身も 6 歳の時に交通事故により聴覚を失いました。

「聴こえない子どもにわかる授業がしたい」

人生の転換点は 10 年前。教材は生徒の力をつかみ伸ばすものと考える稲葉先生にとって、当時ワープロでの教材づくりと手話、黒板での教え方に限界を感じていました。新たな教え方を模索する中で、当時東京で参加したセミナーで出会った PowerPoint を活用したプレゼンテーションに大きく心を打たれたと言います。すぐに自分でもやってみようとパソコンを買い、独学で PowerPoint のアニメーション機能を使った算数の授業教材を作りました。数量の変化が視覚的にわかるよう動きをつけて聴覚に障碍のある児童に見せたところ、反応が想像以上に大きく、自身も「これだ!」と直感し、教材づくりにのめりこんでいきます。この頃学習用のアプリケーション教材も少しずつ出てきていましたが、既存のアプリをそのまま使用するのではなく、目の前にいる子ども一人ひとりの力や実態に合わせた教材を作ることで、自由に自分が思い描いた通りにカスタマイズして様々なタイプの教材を作ることができる PowerPoint に大きな価値を見出しました。

大阪府立堺聴覚支援学校で PowerPoint の教材を映しながら社会を教える稲葉先生
大阪府立堺聴覚支援学校で PowerPoint の教材を映しながら社会を教える稲葉先生

学んだ内容を深く理解して楽しみながら勉強を進める生徒たちの姿を見る日々は、稲葉先生の原動力となりました。そして次第に聴覚支援学校の枠を超え、自身の生徒だけでなく、教材づくりに悩むほかの学校の教師への無償共有を始めました。さらに教師のための PowerPoint 活用を促す書籍の執筆やセミナーの主催など、PowerPoint の力を広めるコミュニティ活動を積極的に行うようになります。そのような活躍から、世界中のコミュニティ リーダーを表彰する Microsoft MVP (Most Valuable Professional) を Office Apps & Services カテゴリーで 2016 年より 6 年連続で受賞しています。

教師としては、マイクロソフト公式の教員向けのプログラムである Microsoft Innovative Educator Fellow (MIE フェロー) に認定されています。MIE フェローとは、日本で約 330 名いるマイクロソフト認定教育イノベーター (MIEE) の中でも特に、Microsoft ツールを教室で活用する方法を世の中に発信し、影響力が大きく活躍されている教育者と定義されており、現在日本で認定されているのはわずか 9 名です。

PowerPoint を活用して教材を作成する稲葉先生
PowerPoint を活用して教材を作成する稲葉先生、コンテンツでの動きはアニメーション機能などを活用している

「私は今までの “障碍のない人が障碍のある人をサポートする” という形を転換させたいと考えていたのです。つまり、”障碍のある人が障碍のない人をサポートする側になる” という形があってもいいではないか? と。私にとって MVP や MIE は、自分の障碍を堂々と前面に出し、多くの方々とつながるコミュニティ活動を継続していくための基盤となっています。」

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) が発生し、稲葉先生を取り巻く環境も大きく変わりました。大きな災害の時は必ずと言っていいほど障碍があるなどの弱い立場の人が軽視・放置される傾向がありますが、今回も同様の事が世界中で起きています。日本でも企業や教育団体を中心に聴覚支援学校に対してオンラインの学びの提供が積極的に進められましたが、良いコンテンツであっても字幕や手話が無い、各家庭の環境によってオンライン会議がうまくいかないなども多く、なんと言っても「マスク」があることで、手話とあわせて必要とされる、表情や口の動きを見るコミュニケーションが難しかったと言います。

透明なマスクをして口が見える形で手話をする稲葉先生
透明なマスクをして口が見える形で手話をする稲葉先生、生徒は先生の表情と手話を組み合わせて内容を理解します

「一口に聴覚障碍といっても児童・生徒によって必要なケアやニーズは違います。できるだけユニバーサルなものになるように考えて対応することが求められていました。幸い、今はすべての学校で登校による学習が戻っています。ただし、また状況が悪くなった時のことを考えたオンラインの学びの環境の整備は引き続き進めています。」

分散登校やオンライン学習といったハイブリッドでの学習形態や、With コロナでの教育が引き続き求められる中、「今後も PowerPoint の活用セミナーは継続していきたい」と稲葉先生は言います。さらに、外部のコミュニティとのコラボレーションワークへの積極的な関与、どの子どもも置き去りにしないためのデジタルの学びができるコミュニティの運営、さらには障碍児教育でのICT活用を支援するアドバイザーなど、新たな分野にも挑戦していきたいと語ります。

「全国の先生方へのサポートはコロナになる前からも行ってきましたし、それは、これからも続けていきたいと考えています。PowerPoint は私にとっては単なるデジタルツールではなく、人生を大きく転換させてくれたものであり、今も大好きな製品です。聴覚障碍の生徒たちは、PowerPoint は自分を表現し、伝えあい、多くの人たちと豊かな関係を築いていくことができるツールであると教えています。『好きはチカラに!』というフレーズを授業でもよく好んで使いますが、PowerPoint だけでなく、生徒たちには『何かを好きになることは自分の力に必ず結びつく』と伝えています。」

今後やってみたいこととして、PowerPoint だけでなくコラボレーションツールの Microsoft Teams を活用した新たな取り組みについても熱く語ります。

Microsoft Teams の キャプション機能を活用しながら生徒と会話する稲葉先生
Microsoft Teams の キャプション機能を活用しながら生徒と会話する稲葉先生

「今後のセミナーでは、Microsoft Teams のライブキャプション機能なども組み合わせて、聴覚障碍がある人とない人の双方でのリアルなやり取りにもチャレンジしてみたいですね」

「聴こえない子どもにわかる授業がしたい」と 10 年前にパソコンを触ったあの日から、今もその強い思いは変わっていません。

生徒たちがきれいにしてくれた黒板の前で笑顔を見せる稲葉先生
生徒たちがきれいにしてくれた黒板の前で笑顔を見せる稲葉先生

※Hero 画像: 大阪城の前、笑顔で立つ稲葉先生
※Photo by Munehiro Hoashi

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