コンテンツへ移動
メイン コンテンツへスキップ
News Center

人工知能(AI)が人の知能(HI)と出会うとき

”Asia Vision”シリーズ特集記事では、鍵となるビジネストレンドや話題について、その分野の専門家や独自の視点をもった方々とともに掘り下げていきます。今回のインタビューでは、コー・バク・ソンがシャオウェン・ホン博士と対談をします。コー・バク・ソンは著書が20冊以上ある編集者兼作家であり、また、シンガポール全国紙ザ・ストレート・タイムズの政治監修者も務めました。シャオウェン・ホン博士は、コーポレートバイスプレジデントしてマイクロソフトリサーチアジアおよびマイクロソフトアジアパシフィック研究開発グループを統括しており、この分野における特に人工知能のオピニオンリーダーです。ホン博士が、イノベーションを情熱的に追い求めてきたこれまでの道のりと、人工知能と人類の関係について語ります。

シャオウェン・ホン博士にとっては、サイエンスフィクション映画の制作者が想像するようなロボットの恋というのはやや行き過ぎに思えるものの、現実社会では、人とコンピューターは「円満な関係」にあると言います。博士はこの関係を左脳と右脳のチームワークに例えました。コンピューターは理論と合理性をつかさどる「最高の左脳」、人は想像力、判断力、良識を兼ね備えた「最高の右脳」と考えます。人と機械が力を合わせ、それぞれの長所を最大限に引き出しているのです。ここで博士は人工知能(Artificial Intelligence: AI)と人の知能(Human Intelligence: HI)の足し算、AI+HIという新しい方程式を掲げます。イコールマークの右にあるその答えは、英知、もしくは知能の拡張です。マイクロソフトでは、人工知能とインテリジェンスが対局にあるという考えはすでに過去のものです。

この点を議論する上でホン博士は、人類が常に中心であるべきだということを強調しています。機械を恐れる理由は何もありません。殺人ロボットは、面白い映画を作るために創造されましたが、現実社会には存在しません。例えば、運転手を必要としない自動運転車は世界征服を企んだりはしません。自動運転車の内部では、全方向カメラやレーザー、レーダー等の技術が駆使されています。そのことは人がロボットよりも優れていること、また今後もロボットの上であり続けることが、むしろはっきりと証明されているのです。

ただし、何か失敗があった場合、そこで責任を負うのは誰なのでしょうか。アイザック・アシモフがそのサイエンスフィクションの中で提唱した、ロボットを制御する「ロボット工学三原則」のようなものはあるのでしょうか。ホン博士は人々が誤解していると言います。つまり、すべての法律は、ロボットではなく、人間に適用されるので、規制するのは、人がロボットをどう扱うかであり、ロボットが状況に応じて行う動作を制限するものではありません。

トラクターのようなパワーを出す機械を作るとき、人は少しも不安を感じません。しかし、人より賢く思えるものを作るとき、我々は恐れを感じるのです。

ターミネーターのスカイネットからエクス・マキナに至るまで、映画の中でロボットは、人類に対抗する存在として誇張されていますが、ホン博士はハリウッド映画で共通するこういった筋書きをについて、以下のように考察しています。人はロボットが自分たちより賢くなることを非常に恐れています。しかし、トラクター、自動車、飛行機など自分たちより大きく強い機械に対しても、実は同じような感情を抱いているのです。こういった機械は、人が大きな労力を必要とする作業や、長距離移動ができるようにする目的で開発されました。

ロボットに意識をプログラムできることの証明は存在しません。博士によると、「機械は、それだけでは死んだ馬と同じであり、プログラムされなければ、何もできません。」機械が害をもたらすようにプログラムすることはできますが、それは機械が善悪の判断をできないというよりは、人のモラルの問題です。どれほど上手に描かれていても、アルゴリズムの背後には、いつも人の存在があります。

ほとんどの人は、むしろ生活の向上のために人工知能を利用しています。ホン博士は、万物の真実を発見するため、例えば、月に着陸するためのロケットのための軌道計算のような、精密な計算が可能になったのは、人類の創造力の賜物だと言います。そんな彼は、1970年代、スターウォーズの最初のエピソードを映画館で見ようと、チケットを買うために並んだそうで、それ以来ずっと銀河共和国で繰り広げられるフォースの世界観に憧れているそうです。

将来を考えると、アイディアをコンピューターの能力と結びつけることで、なにができるかに焦点をあてるべきだと博士は考えます。データはコンピューターで高速に処理をし、人間はその洞察力を活用し、前例のないやり方で、人間らしさを追求するべきなのです。2の平方根を小数点以下最後の数字まで出すような計算で、コンピューターと張り合おうとするような人はいません。

私の夢が人のためになるかもしれないし、他の人の夢が私にも利益をもたらしてくれるはずです。だからこそ、多様性と一体性が必要なのです。人工知能+人の知能で、みんなの夢が実現されるのです。

私たちは、「知能の拡張」というさらなる高みを目指し、人類と機械が一緒に働く将来に向かっています。機械学習やIoTをはじめとする様々な分野において、私たちが人工知能から絶えず恩恵を受けていくと、博士は確信しています。目的は、人類の生産性とモビリティを高めるために人工知能を活用することです。この目的を達成するのは難しくはありません。スマートシティーなどこういった技術を進んで受け入れ、効率的に応用する都市においては、人工知能の影響がより顕著になるでしょう。

将来的に、人工知能の進歩が最高潮に達するのは、多くの人々の夢を実現するため、人工知能と人の知能が力を合わせて取り組むときです。「 私の夢が人のためになるかもしれないし、他の人の夢が私にも利益をもたらしてくれるはずです。だからこそ、多様性と一体性が必要なのです。人工知能+人の知能で、みんなの夢が実現されるのです。」

私たちの生活をどう変えるのか?特集の続き「工業から、見えない革命まで」はこちら。前回の「Xiaoice(シャオアイス)に託された大きな夢」はこちら


dr-hon_bio-2-284x300シャオウェン・ホン博士
コーポレートバイスプレジデント
マイクロソフトリサーチアジア
マイクロソフトアジアパシフィック研究開発グループ

ホン博士は、学術機関と連携しながら、アジアパシフィック地域においてマイクロソフトの研究開発戦略を推し進めています。ホン博士は1995年からマイクロソフトの一員となり、2004年からはマイクロソフトリサーチアジアで、インターネット検索、音声、自然言語、システム、ワイヤレス、ネットワークの分野を統括しています。さらに、2005年にサーチテクノロジーセンター(STC)を立ち上げ、2007年まで運営に携わりました。アジアパシフィックでのBingの開発についても統括してきました。

buck-song-with-dr-hon-284x300 コー・バク・ソン

コー・バク・ソンは、20冊以上に及ぶ著書をもつ作家・編集者であり、シンガポールでブランド戦略・コミュニケーション戦略・社会責任に関するコンサルタント業も行っています。ソンは、広報部門のトップとして、シンガポールを「グローバル企業」の地位に導きました。バク・ソンはザ・ストレート・タイムズの政治監修者も務めました。イギリスでケンブリッジ大学とロンドン大学において学業をおさめ、アメリカのハーバード大学の大学院ケネディースクールを卒業しました。ケネディースクールでは、メイソンフェローとなり、行政学修士号を取得しています。