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AIの力で再び自分の「声」を取り戻す

~ Imagine Cup 世界大会で準優勝「Team Syrinx」の挑戦 ~

米国時間 2020 年 5 月 20 日に Microsoft の開発者向けオンラインイベント「Microsoft Build 2020」において、全世界の地区大会を勝ち抜いた 6 組の学生チームがイノベーティンブなアイデアやテクノロジーを競う「2020 Imagine Cup 世界大会」が開催され、アジア地区大会を勝ち抜き世界大会に挑戦した日本のチーム「Team Syrinx」が見事に準優勝を獲得しました。

Team Syrinx のメンバー
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障碍者支援団体との交流、そして二人三脚の開発によって誕生した電気式人工喉頭 (EL)

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Team Syrinx が Imagine Cup で披露したのは、頸部のがん治療による後遺症や喉の声帯が機能しなくなってしまう「失声症」などにより、自分の「声」を失ってしまった人たちが再び声で会話することを可能にする電気式人工喉頭 (EL)。EL そのものはすでに一般化している技術ですが、従来の EL ではロボット音声のような無機質な音しか作れなかったなどの課題がありましたが、Team Syrinx で開発した EL は、Microsoft Azure の AI 技術を用いて装着者の声の特徴を学び、より人間の声に近い自然な音声を発することができるようになっています。また、小型で操作しやすい端末であることにもこだわっています。

Team Syrinx が開発した首輪型の電気式人工喉頭 (EL) 使用者の喉を震わせ、口の動作に合わせて音を作る

東京大学大学院に在学中の竹内雅樹さん (Team Syrinx プロジェクトリーダー)、韓国から東京大学工学部に留学しているアン・ジェソル (安 在師: ソフトウェア開発を担当) さんを含め 4 人がチームを結成したのは、2019 年 7 月のこと。東京大学が展開する産学共創推進プログラム「東京大学 Summer Founders Program」に応募したのがきっかけでした。そのときの募集テーマが「社会課題を解決するためのテクノロジーを開発する」というものでしたが、新しい EL を開発テーマにようと考えたのは、ある障碍者支援団体「社団法人銀鈴会 (ぎんれいかい)」との出会いだったといいます。

銀鈴会は喉頭がん、咽頭がん、食道がん、甲状腺がんなどの治療で声帯を摘出し、声を失った人に対し社会復帰を支援している団体で、EL を使った発声法の練習の講習会なども頻繁に行っています。

「実際に練習に参加させていただき皆さんの意見などを伺い、“話せないということが大きなハンディキャップになっている”、“従来の EL では恥ずかしくて人前では使えない”といった意見を伺い、従来の EL を進化させた新しい EL を考えようと思いました。そこから、皆さんのニーズを探るうちに、“ハンズフリーで使えるもの”、“人間の声に近い自然な声が出せること”を目指そうということになりました」(竹内さん)。

開発を進めるにあたっては、自分たちが実際に従来からある EL を使った発声法を練習して課題を探り、プロトタイプを作っては銀鈴会に持っていき、実際に使ってフィードバックをもらうという日々の繰り返し。毎週 1 回は必ず銀鈴会で最新のプロトタイプを披露する約束を交わし、デバイスに関しても 10 名以上の方に試してもらい意見を聞きました。

「『見た目が悪く装着したくない』『こんな機能、全く使えない』と厳しいダメ出しもありましたが、最後には『応援してるから、がんばって!』と必ず声を掛けてくれました。“完成を待っていてくれる人がいる”というのがとても大きなプロジェクトの原動力になりました」と竹内さん。EL に関するアンケート調査では 300 名以上の方から意見をもらったといいます。

また、アンさんも「(従来の) EL を使った発声はとっても難しく、デバイスも 10 年以上アップデートされていなかったのです。最新のテクノロジーで EL をもっと簡単で使いやすいものにしたいという思いがありました。機能の開発ができたら試してもらい、ダメ出しをもらってまた作り直すという作業を繰り返しました。試した人からは厳しい意見も多かったですが、“もっといいものを作ろう”という期待がこもっていました」と振り返ります。

「銀鈴会の皆さんが私たちを優しく受け入れてくださり、開発に大きな期待を寄せていただいたからこそ、より良いデバイスの開発が実現したことは、間違いありません。特に、銀鈴会で発声の指導員をされている篠清市 (しの せいいち) さんや杉山喬 (すぎやま たかし) さんは指導の時間を割いてもらい本当にいろいろなご意見をいただきました。心から感謝しています」(竹内さん)。

銀鈴会の会員の方にプロトタイプを試してもらっている様子
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世界の舞台への挑戦

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開発を進める中で、ヘルスケア分野における社会課題を解決するという方向性が合致したことなどを理由に、チームは Imagine Cup への挑戦を決めます。「声の困難を抱えている人は日本だけでなく世界中に存在します。出場することで、日本国内だけでなく世界中の人に自分たちの技術を知ってほしい、そして障碍があっても安心して社会生活ができる環境を実現したいという思いがありました。」(竹内さん)。

そして、Imagine Cup に向けて開発を加速させる過程においては、日本マイクロソフトのサポートも大きな存在だったと、竹内さんは振り返ります。

「今回の開発では Microsoft Azure を使用しています。開発初期では Azure Notebook を、本格的な開発では Azure Functions や Azure Web Apps など様々なツールを活用しています。」(アンさん)。

「この Azure を活用する上での基礎的なところから、日本マイクロソフト社員の皆さんにサポートしていただきました。また技術的なディスカッションにも参加してくれて、そこから“装着者の声をクラウドで管理し、AI で学習する”というアイデアが生まれました」(竹内さん)。

加えて、Imagine Cup に参加したことを通じて、プロジェクトの進め方やプレゼンテーションの方法などを学ぶことができたほか、過去の Imagine Cup に参加した OB、OG とも交流できたことで、Imagine Cup に臨む上で様々なインスピレーションを受けることができたようです。

「新型コロナウイルス (COVID-19) の影響で学校に集まってプロジェクトをすることができないなかで、Imagine Cup に臨むモチベーションが下がってしまうことも懸念されましたが、日本マイクロソフトの皆さんからの様々なサポートを受けることで、高いモチベーションを維持することができました」(アンさん)。

そして、アジア地区大会、世界大会と進んだ Imagine Cup の本番。今回は Microsoft Teams を活用してオンラインで開催するという形でしたが、Team Syrinx のプレゼンテーションに対して感動、共感してくれる人の多さに大きな手ごたえを感じたといいます。「Imagine Cup を通じて、同じようにヘルスケア分野に挑戦している人たちと交流できたことは大きな経験になりました。また、声を失っている方の家族や友人から『実際に試してみたい』『教えてあげたい』という声も寄せられています。世界大会準優勝という結果については、銀鈴会の皆さんも大喜びしてくださったので、世の中が落ち着いたら早く報告に行きたいですね」(竹内さん)。

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起業・製品化を目指し、世界中の困っている人にこのデバイスを届けたい

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今後、Team Syrinx が開発したデバイスは技術開発を進めて質を高めながら、コンテストへの参加などを通じて世の中への紹介や人脈作りを進め、約 1 年後を目途に学生起業を目指し、同時にビジネスパートナーのネットワークも作っていきたいといいます。「製品化を目指し、世界中の困っている人にこのデバイスを届けたいです」(竹内さん)。最後に、竹内さん、アンさんに、Imagine Cup を通じて得られたものと、これからどんなエンジニアとして世の中で活躍したいかについて、お伺いしました。

「Imagine Cup で、このプロジェクトが世界からどのように評価されるかという点を知ることができました。Imagine Cup では技術的な点だけでなく、プロジェクト=課題解決に懸ける情熱も評価されます。その情熱が評価されたことで、とても大きな自信になりました。自分自身ももっともっと成長したいですね。今後も、“世の中の困っている人の課題を解決する”という明確なビジョンをもって、いろいろな人たちと協力しながら技術を活用できるエンジニアとして、社会に貢献していきたいと思います」(竹内さん)。

「Imagine Cup を通じて、技術を通じて課題解決のために新たなプロダクトを発明したいという志を持った世界中の人たちと交流できたのが、とても良い経験になりました。ほかのチームのプレゼンテーションやフィードバックもとても勉強になりました。今後は、どんなものでも自分の力で生み出し、形にできるようなエンジニアを目指したいですね。既製品を組み込むだけでなく、自分たちの目的に最適なものを自分たちの力で作れるようなエンジニアになって、どんなアイデアでも形にしていきたいと思います」(アンさん)。

◆ 関連情報

2020 Imagine Cup 世界大会にて香港の Team Hollo が優勝、日本の Syrinx は準優勝
2020 Imagine Cup アジア地区決勝大会にて日本の Team NUTONE と香港の Team Hollo が最優秀賞を受賞

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