Azure Space – 地球上、地球外でクラウドを活用したイノベーションを推進

トム キーン (Tom Keane)
Azure Global 担当 コーポレートバイスプレジデント

※ 本ブログは、米国時間 10 月 20 日に公開された “Azure Space – cloud-powered innovation on and off the planet” の抄訳です。

マイクロソフトは本日、クラウドコンピューティングの分野で次の大きな一歩を踏み出すことになりました。それは宇宙に向けた第一歩です。現在マイクロソフトでは、Azure Space により、Azure を宇宙コミュニティのミッションのニーズに応えるプラットフォームおよびエコシステムにしようと取り組んでおり、その取り組みをここで紹介することをとても嬉しく思います。宇宙コミュニティは急速に成長しており、イノベーションによって公共機関や民間企業がこの分野に参入する際の障壁も低くなっています。マイクロソフトは、Azure Space を駆使して農業やエネルギー、通信、政府といった業界全体で、宇宙でのコネクティビティと計算能力を高めたいという熱意を持っています。

マイクロソフトでは、宇宙業界で著名なベテランたちによるチームを結成、世界レベルの製品エンジニアや科学者と協力し、宇宙特有のニーズに対応するクラウド機能を構築しています。イノベーションとして取り組んでいる分野は、宇宙ミッションのシミュレーションを実現すること、衛星データから知見を発見すること、地上と軌道上の双方でイノベーションを促進することなどです。

マイクロソフトは、宇宙コミュニティのリーダーと協力することで、世界中の衛星が接続されていることを活用して Azure の機能の実用性を拡張し、さまざまなシナリオでクラウドコンピューティングを活用できるようにし、パートナーやお客様がより多くのことを達成できるようにしたいと考えています。

高速で安全な衛星ネットワークを世界中で実現

社会でデータの重要性が高まるにつれ、信頼性の高い多様な接続経路も重視されるようになってきました。マイクロソフトでは、海底、地上、地下にて 16 万マイルを超える光ファイバーネットワークを世界中に張り巡らせており、これによって世界何十億人もの人たちの接続性を高めています。

しかし、マイクロソフトのお客様の中には僻地や荒れた環境での運用を余儀なくされているケースも多く、そのようなお客様はデータへのアクセスや帯域幅へのニーズの高まりに対応することが困難となっています。

そこでマイクロソフトは本日、Azure Space のエコシステムの一環として、新たなすばらしいネットワーク機能を提供するパートナーシップを発表します。世界のネットワークへのニーズの高まりに対応するには、衛星プロバイダーの活発なエコシステムが必要となるため、マイクロソフトは業界リーダーとパートナーシップを組んで必要な機能をお客様に迅速に提供したいと考えているのです。

・ SpaceX Starlink との新たなパートナーシップにより、新しく登場する Azure Modular Datacenter (MDC) に高速かつ低レイテンシの衛星ブロードバンドを提供します。

・ SES とすでに締結している Azure Orbital に関するパートナーシップに基づき、同社の O3B Medium Earth Orbit (MEO) 集合体となる O3b MEO をサポートし、マイクロソフトのクラウドデータセンターリージョンとクラウドエッジデバイス間の接続性を高めます。

マイクロソフトのアプローチは、複数の軌道、複数の帯域、複数のベンダー、そしてクラウド対応機能を提供することにより、包括的な衛星接続ソリューションを実現させ、お客様のニーズを満たすことです

耐障害性の高い衛星通信と、高性能コンピューティングや機械学習、データ分析といった Azure の機能を組み合わせることで、公共機関と民間企業の双方にさまざまな新しいチャンスが生まれます。

衛星通信ソリューションの実現に向けてパートナーシップ方式のアプローチを採ることで、こうした機能をお客様により早く提供することができ、ミッションクリティカルな宇宙でのニーズを解決する支援ができると考えています。

最近発表した Azure Orbital 地上局サービスや、SES、Intelsat、ViaSat と結んだ既存の ExpressRoute 衛星プロバイダーパートナーシップに加え、今回のコネクティビティに関する新たなパートナーシップは、より多くの衛星機能を実現するもので、貴重なお客様のデータを対地同期軌道 (GEO) 衛星から直接 Azure に取り込む際に役立ちます。

こうしたパートナーシップや、衛星接続に向けたマイクロソフトのアプローチに関する詳細は、Transform ブログの記事をご覧ください。

ブログ記事: Azure Space のパートナーが新たな冒険に深い専門性を提供

最も困難なミッションを支援する自給式データセンター

多くの組織ではすでに Azure Stack などの製品により、インテリジェントエッジでクラウドコンピューティングを活用しています。マイクロソフトは、Project Natick における水中データセンター研究プロジェクトなどで、過酷な環境でのデータセンターの試験運用において大きな進歩を遂げています。

そこで得た知見と、非常に厳しいミッション要件を持つお客様からの意見をベースに、新たな Microsoft Azure Modular Datacenter (MDC) ではエッジ機能をさらに強化します。

マイクロソフトは、電力や建物のインフラなど重要な前提条件が信頼できないといったような困難な環境でも強力で安全なクラウドコンピューティングを実現しようと MDC を設計しました。MDC は、必要な場所で自給式の設備内に Azure を用意するというものです。MDC は、完全なデータセンターを遠隔地で展開する機能や、現場移動が可能なソリューションで既存インフラを増強するといった機能を提供します。

MDC は、主に地上ファイバや低帯域ネットワークで運用できるほか、完全に接続を遮断した状態でも運用できます。

マイクロソフトと SATCOM とのパートナーシップによる衛星接続のアドオン機能は、Azure に欠かせないハイパースケールサービスのアクセス性と耐障害性をMDC のお客様に提供するものです。

Microsoft Azure Modular Datacenter の詳細は、その発表に関するブログをご覧ください。

ブログ記事: Microsoft Azure Modular Datacenter を発表

Azure の力で宇宙ミッションの準備を

宇宙ミッションや衛星の機能がより身近なものとなる中、マイクロソフトは信頼性と再現性の高いデジタルテクノロジを開発することで、宇宙コミュニティがより迅速に立ち上がり、ミッションを確実に実行できるよう支援したいと考えています。その第 1 弾が Azure Orbital Emulator です。企業や政府の宇宙機関は、正確な計画と洗練された AI 駆動型の形成プロトコルを必要とする相互接続型衛星配置を数千件レベルで開発し、軌道上でも最適なネットワーク接続と運用ができるよう目指しています。

Azure Orbital Emulator は、ループ内のソフトウェアとハードウェアで大規模な衛星配置をシミュレーションするエミュレーション環境です。これにより衛星開発者は、衛星をひとつも打ち上げることなく AI アルゴリズムと衛星ネットワークを評価し訓練できます。Azure は、事前に収集された衛星画像を使用して仮想化衛星ハードウェアや実際の衛星ハードウェアを直接処理し、複雑でリアルタイムなシーンの生成など衛星ネットワーク全体のエミュレーションを実現します。

Azure Orbital Emulator は、すでに Azure Government 環境上にてお客様に利用されています。

宇宙コミュニティと共にイノベーションを継続

ここで紹介した新機能は、すでに Azure とパートナーシップを組んでいる多くの組織にとって、宇宙ミッションのイノベーションに向けた新たなチャンスへとつながるものです。

米国国防省の防衛イノベーション部門 (DIU) は、マイクロソフトおよび Ball Aerospace を選択し、より実用的な宇宙データの作成と地上局技術の再考を目指すほか、米国空軍の商業拡張型空間相互ネットワークオペレーション (CASINO : Commercially Augmented Space Inter Networked Operations) というプロジェクトをサポートするため、迅速なクラウド処理機能を実証するソリューションの構築に取り組んでいます。

Orion 構築の主要請負業者である Lockheed Martin は、宇宙船のさまざまな組立作業に HoloLens 2 を採用しています。その宇宙船は、人類を月やその先に運ぶという NASA の Artemis プログラムをサポートする際に使われる予定です。

AirbusMicrosoft Azure Stack を活用し、航空宇宙ソリューションの構築および立ち上げの迅速化や革新性、競合優位性を高めようとしています。

環境地球科学企業の Seequent は、衛星データと Azure の計算能力を活用し、世界中の水質と水量の課題に対応するという同社の重要な取り組みを推進しています。Seequent のソフトウェアソリューションは何百ものプロジェクトで使用され、地下水と汚染物質の見える化に貢献しています。

農家による最大規模の共同組合である Land O’Lakes は、Azure FarmBeats にて、衛星画像やセンサー、ドローン、農業器具からのデータを活用し、データ駆動型の農業を実現しています。人工衛星からの光学画像と多重スペクトル画像を用いた AI モデルが、作物のストレスを判断し、収量を予測し、持続可能な農法の採用を実現しているのです。

大きなステップを実現

マイクロソフトのアプローチは、お客様が宇宙分野で直面する最も困難な技術的課題の一部を解消できるものです。その課題とは、衛星から生成される大量データに対応することや、クラウドサービスと帯域を遠隔地にも提供すること、非常に複雑な宇宙システムを設計することなどさまざまです。こうしたデータをより迅速に地上に送るパートナーとのエコシステムと組み合わせることで、これまでは不可能だった知見を見つけ出し、つながりを築くことが容易になります。

マイクロソフトは、お客様が地球内外で取り組む宇宙ミッションをサポートする準備ができています。また、クラウドと宇宙技術の力を活用し、さまざまな業界の企業が世界で非常に困難な課題に対応するソリューションを再考する際に支援ができればと考えています。

より詳細な情報やビデオ、画像についてはサイト: Azure Space: Powering innovation on Earth and beyond (英語) を参照ください。

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