年次書簡: 新時代をリードする

年次書簡:新時代をリードする

マイクロソフト コーポレーション 会長 兼 最高経営責任者 (CEO)
サティア ナデラ (Satya Nadella)

※こちらの年次書簡は、米国時間 2023 年 10 月 20 日に公開された “My annual letter: Leading in a new era” の抄訳を基に掲載しています。

以下は、本日発行された 2023 年度年次報告書に掲載された私の年次書簡です。

株主の皆様、同僚、お客様、パートナーの皆様

私たちは今、歴史的な挑戦とチャンスの時代を生きています。この書簡を書いている今も、世界は経済的、社会的、地政学的に不安定な状況に直面しています。同時に、私たちはAIの新時代に突入しています。AI は、地球上のすべての個人、組織、産業の生産性を根本的に変革し、最も差し迫った課題を対処する一助となるでしょう。

この次世代の AI は、当社を含め、あらゆるカテゴリーのソフトウェアとあらゆるビジネスを再構築するでしょう。創業から 48 年、マイクロソフトが依然として重要な企業であり続けているのは、PC/サーバーからウェブ/インターネット、クラウド/モバイルへと、技術的パラダイムシフトに何度も適応してきたからです。そして今日、マイクロソフトは再び、この新時代をリードしているのです。

このような変革の中でも、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」という企業ミッションは変わりありません。企業として、私たちは新世代のテクノロジを民主化する力となり、リスクを軽減しながら、すべての国、地域社会、個人にチャンスをもたらすことができると信じています。

ここで、すでに実践しているいくつかの例をご紹介します。

  • 大手電子カルテベンダーの Epic は、Azure OpenAI Service と Dragon Ambient eXperience Copilot を基盤にした幅広い Copilot ソリューションを展開することで、医師の燃え尽き症候群など、今日の医療業界が直面する最大の課題に取り組んでいます。
  • Mercado Libre は、GitHub Copilot を使用することで開発者がコードを書く時間を 50% 以上短縮し、ラテンアメリカ全域での電子商取引の民主化に取り組んでいます。
  • メルセデス ベンツ は、Azure OpenAI Service を介して ChatGPT を使用し、数十万人のドライバーに向けて車載音声アシスタントをより直感的なものにしています。
  • Lumen Technologies は、Microsoft 365 Copilot を導入することで、従業員の生産性を向上させ、より付加価値の高い仕事に集中できるよう支援しています。
  • 非営利団体の The Contingentは、Dynamics 365、Power BI、Azure を使用して、里親を必要としている子どもたちと里親をマッチングしており、AI を利用して活動を全米に拡大することを目指しています。
  • 台湾教育部 (教育省) は、Azure AI を利用して小中高生の英語学習を支援するオンラインプラットフォームを構築しました。

この進歩をさらに推し進めるために、私たちは3つの点を堅持します。第一に、ゲームからプロフェッショナル向けソーシャルネットワークまで、消費者向けカテゴリーで革新を続けながら、コマーシャルクラウドのトップの地位を維持していきます。第二に、今回のようなプラットフォームシフトの際に最大限の企業価値が生み出されることを知っているため、技術スタックの全階層にこのテクノロジを浸透させることにより、AI 分野でのリードを加速させるための投資を行います。最後に、コスト構造を収益の伸びに合わせていくことで、営業レバレッジを引き続き高めていきます。

これらの優先課題を前進させる中、2023 会計年度には、売上高が過去最高の 2,110 億ドル、営業利益が 880 億ドル超の好業績を達成しました。

AI の新時代

AI の新時代を定義する 2 つのブレークスルーがあります。ひとつは、最も普遍的なインターフェースである自然言語です。コンピューティングの長い歴史は、キーボード、マウス、タッチスクリーンといった、より直感的なヒューマンコンピュータインターフェイスの追求によって形作られてきました。そして今、自然言語という次の大きな一歩を踏み出したと信じています。今後は、すぐにそれを超え、私たちの意図や周りの世界を見聞きし、解釈し、理解することができるようになるでしょう。

もうひとつは、強力な新しい推論エンジンの出現です。長年、私たちは日常生活や場所、物事をデジタル化し、データベースに整理してきました。しかし、データがあふれる世界で最も不足しているのは、データを推論する能力です。この世代の AI は、テキストの補完や要約から、異常の検出や画像の認識まで、強力な新しい方法でデータと対話し、これまで以上に迅速にパターンを特定し、洞察を表面化させることを支援します。

この 2 つのブレークスルーが合わさることで、新たなビジネスチャンスが大きく広がります。実際、先月、日常的な AI コンパニオンである Copilot のビジョンを発表したばかりです。私たちは、最も使用されているすべての製品や体験に Copilot を組み込み、独立したアプリとしても、その力を発揮できるようにしています。今日、OS を起動してアプリケーションにアクセスしたり、ブラウザを使ってウェブサイトにアクセスするのと同様に、買い物、コーディング、分析、学習、創造など、これらすべてが Copilot を呼び出して行うようになると考えています。

企業として、このような移行に取り組むときは常に責任を持って行います。AI が強力であるからこそ、コミュニティ全体に力を与えるものであるべきだと考えています。そして、当初から安全性を念頭に置いて、責任を持って構築・設計されるよう尽力しています。

私たちのチャンス

お客様向けのすべてのソリューション分野と技術スタックの全階層は、AI 時代に向けて再構築されます。そして、それこそが私たちがすでに着手していることなのです。

インフラ

4 年前、トレーニングと推論のための最高のクラウドを構築することを目指して、AI スーパーコンピューターに初めて投資しました。現在では、当社のパートナーである OpenAI が、クラス最高の基盤モデルとサービスを提供するために使用しており、その中には、これまでで最も急成長している消費者向けアプリの1つである ChatGPT も含まれています。NVIDIA や Adept、Inflection などの AI をリードするスタートアップ企業も、独自の画期的なモデルを構築するために当社のインフラを利用しています。

より広くミッション クリティカルなアプリケーションを実行するために、組織はクラウドからエッジまで、当社のユビキタス コンピューティング ファブリックを引き続き選択しています。長期的なクラウドの機会に関してはまだ時期尚早であるため、昨年度も引き続き Azure へのクラウド移行が増加しました。また、ハイブリッド コンピューティングの分野でも Azure Arc でリードし続けており、現在 1 万 8,000 のお客様が利用しています。

データと AI

すべての AI アプリケーションはデータから始まっており、包括的なデータおよび分析プラットフォームを持つことはますます重要になっています。当社のインテリジェント データ プラットフォームが運用データベース、分析、ガバナンスを統合することで、組織は価値の創造により多くの時間を割くことができ、データ資産の統合に時間をかける必要がなくなります。また今年は、破壊的なビジネスモデルでコンピューティング、ストレージ、ガバナンスを統合する Microsoft Fabric も発表しました。

Azure AI では、基盤モデルをプラットフォームとしてお客様に提供しています。さらに、業界をリードするフロンティアモデルとオープンモデルのベストセレクションを取り揃えています。1 月には、ChatGPT や GPT-4 などの高度なモデルと Azure のエンタープライズ機能を組み合わせた Azure OpenAI Service を広く利用できるようにしました。コンテンツやコード生成などの高度なシナリオに向けて、業界を問わず 1 万 1,000 以上の組織がすでに利用しています。この夏、Meta は同社の Llama ファミリーのモデルを商品化するために当社を優先クラウドプロバイダーとして選びました。また、Azure AI Studioでは、お客様がこれらのモデルを自社のデータに基づいて構築し、迅速にワークフローを作成し、安全にデプロイして利用するための完全なライフサイクルツールチェーンを提供しています。

デジタルとアプリの革新

GitHub Copilot は、開発者の生産性を根本的に変革し、コーディング作業を55%高速化しています。2 万 7,000 以上の組織が GitHub Copilot for Business を選び、これまでに 100 万人以上が GitHub Copilot を利用してコーディングの高速化を実現しています。また、ソフトウェア開発のライフサイクル全体にAIの力をもたらす GitHub Copilot X で、ソフトウェア開発の未来像を発表しました。これにより、GitHub は今年度初めて年間経常収益が 10 億ドルを突破しました。

マイクロソフトは、組織全体で使えるローコード/ノーコードのツールチェーンに AI を導入し、組織内のドメイン エキスパートが、Power Platform の Copilot を使用して自然言語だけでワークフローを自動化し、アプリやウェブページを作成し、仮想エージェントを構築し、データを分析できるよう支援しています。これまでに 6 万 3,000 以上の組織が Power Platform の AI 機能を利用しています。

ビジネス アプリケーション

Dynamics 365 Copilot を通じて、あらゆる職務や事業分野の従業員に次世代の AI を提供しています。Dynamics 365 Copilot は、CRM と ERP システム全体にわたって作動し、手作業によるデータ入力、コンテンツ生成、メモ作成などの負担を軽減します。実際に、当社のサポート担当者は、Dynamics 365 Customer Service で Copilot を使用し、同僚に助けを借りることなく、より多くのケースを迅速に解決しています。Supply Chain Platformでは、お客様が AI を活用して混乱を予測し軽減できるよう支援しています。また、新しい Microsoft Sales Copilot では、販売担当者が Salesforce と Dynamics 双方を含む CRM システムからのデータを顧客とのやりとりに活用し、より多くの取引を成立させることができます。

カスタマー エクスペリエンス事業、サービス事業、金融・サプライチェーン事業が、それぞれ年間売上高 10 億ドルを突破し、Dynamics の昨年度の売上高は 50 億ドルを超えました。

産業

業界を問わず、AI から真の価値を生み出そうとする全ての組織にとって、マイクロソフトは急速に選ばれるパートナーになりつつあります。例えば、医療分野では、世界初の完全自動の臨床文書作成アプリケーション DAX Copilot を導入しました。このアプリケーションにより、医師は文書作成にかかる時間を半分に短縮でき、患者と向き合う時間を増やすことができます。また、Epic は、このアプリケーションを電子カルテシステムに直接統合する予定です。

さらに、小売業では、企業の日常業務の管理と実店舗のデジタル化を支援する新しいツールを導入しました。

現代の仕事

Microsoft 365 は、AI を最優先に考えたプラットフォームへ急速に進化しています。Office や Teams などの確立されたアプリケーションに加えて、Designer、Stream、Loop などの新しいアプリケーションも提供し、個々の創造性と生産性を向上させることができます。現代のデジタルにつながる分散型のワークフォースを対象として設計されています。

今年、Microsoft 365 Copilot という新しい顧客価値の柱も導入しました。これは、次世代の AI と Microsoft Graph や Microsoft 365 アプリケーションのビジネスデータを組み合わせて、人々が仕事でより生産的になり、創造性を発揮できるよう支援します。先月、私は、Microsoft 365 Copilot を今年後半に商用顧客向けに一般に提供することを発表しました。

Microsoft Teams は、コラボレーション、チャット、会議、通話など、さまざまな分野で勢いを増しています。Teams の新バージョンを導入し、パフォーマンスを最大 2 倍高速化しつつ、メモリ使用量を 50% 削減しました。また、Teams Premium を提供し、インテリジェントな会議の要約など、AI を活用した機能を求める企業の需要に応えました。今年、Teams の月間アクティブユーザー数は3億人を突破しました。

Microsoft Viva によって、従業員エクスペリエンスの新しいカテゴリーを作り出しました。Copilot in Viva は、生産性と従業員のエンゲージメントの両方を優先することで、ハイパフォーマンスなチームを構築する新しい方法をリーダーに提供します。今年、Viva の月間アクティブユーザー数は 3,500 万人を突破しました。

セキュリティ

サイバー脅威の速度とペースが加速し続ける中、セキュリティはすべての組織にとって最優先事項です。当社の包括的な AI 搭載ソリューションは、防御側に優位性をもたらします。Security Copilot では、大規模な言語モデルと、当社の脅威インテリジェンスと 1 日あたり 65 兆件のセキュリティシグナルから得たドメイン固有のモデルを組み合わせ、セキュリティオペレーションセンターの生産性をあらゆる側面から変革します。

現在、100 万を超える組織が、デジタル遺産を保護するために、当社の包括的な AI 搭載ソリューションを利用しています。クラウドとエンドポイントプラットフォーム全体で顧客の保護を支援した結果、当社のセキュリティ事業の年間売上高は 200 億ドルを超えました。

検索、広告、ニュース

新しい Bing と Microsoft Edge ブラウザでは、日々の検索とウェブサイトの利用習慣を再構築しています。検索、ブラウジング、チャット、AI を 1 つの統合された体験にまとめ、より優れた検索、より完全な回答、新しいチャット体験、コンテンツ生成機能を提供します。私たちは、これらのツールをウェブの AI 副操縦士と考えています。

また、Bing Chat Enterprise を通じて、これらの画期的な機能を企業にも提供しています。商業用データを保護し、次世代 AI の恩恵を今すぐ受けたいと考えているあらゆる組織に、簡単で円滑な導入を可能にしています。

私たちの旅はまだ始まったばかりですが、Bing ユーザーはこの 1 年間で 10 億回以上のチャットに参加し、新しいツールを使って 7 億 5,000 万枚以上の画像を作成しました。また、Edge は 9 四半期連続でシェアを獲得しています。

さらに、広告業界でもビジネスチャンスを拡大し続けています。今年、Netflix は、初めて広告付きサブスクリプションプラン導入し、当社を独占的なテクノロジおよび販売パートナーとして選択しました。これは、柔軟なパートナーを求めるすべてのパブリッシャーに対して、差別化された価値を提供し、共に作り上げ、革新していくという当社の取り組みを証明したと言えます。

LinkedIn

AI の進化によって、マーケティング、営業、サービス、金融からソフトウェア開発、セキュリティまで、あらゆる業務領域に新たな機会が生まれています。LinkedIn は、学習や議論、スキル向上の場として、ますます利用されるようになっています。私たちは AI を活用して、メンバーやお客様がビジネスチャンスにつながり、プラットフォーム上の専門家の知見を引き出せるよう支援しています。実際、AI を活用した記事は、ネットワークへのトラフィックを最も急増させています。

LinkedIn の売上高は、今年度初めて 150 億ドルを超えました。これは、9 億 5,000 万人以上のメンバーがつながり、学び、販売し、雇用されるために、このプラットフォームがいかに重要な役割を果たしているかを示しています。

ゲーム

ゲーム業界では、いつでも、どこでも、好きなときに、素晴らしいゲームをプレイできる第一の選択肢を目指し、急速にその目標を実現しています。Xbox Game Pass によって、ゲームの配信、プレイ、視聴方法を再定義しています。コンテンツはサービスの成長を支える原動力であり、当社のパイプラインはかつてないほど強力になっています。特に、この秋にリリースした『Starfield』は大きな注目を集め、リリース後わずか 1 カ月で 1,000 万人以上のプレイヤーを獲得したことは大きな活力となりました。

今月初め、Activision Blizzard の買収を完了できたことを大変嬉しく思っています。今後数カ月で、世界中のより多くの人々にゲームの楽しさを提供するための詳細情報を共有できることを楽しみにしています。

デバイスと創造性

Windows 11 のアップデートの一部として先月リリースされた Copilot により、ついに Windows がパワフルな新しいAIキャンバスに生まれ変わりました。Copilot は、プライバシーとセキュリティを最優先に考えながら、ウェブや業務データ、および PC 上で行われている作業の文脈と知識を活用して、より良いサポートを提供しています。Windows 11 を実行するデバイスの数は、この 1 年間で 2 倍以上に増えました。さらに、Azure Virtual Desktop と Windows 365 によって、Windows の利用体験と管理方法が変革され、年間売上高が初めて 10 億ドルを超えました。

私たちの責任

チャンスを追求する一方で、テクノロジが新たな問題を生み出すのではなく、問題解決に役立つよう取り組んでいます。そのために、使命の中心として、この新しい時代にますます重要となる 4 つの永続的なコミットメントに注力しています。これらのコミットメントは単なる言葉ではありません。製品の設計・開発、ビジネス プロセスやポリシーの策定、お客様が成功するための支援、パートナーシップの構築など、すべての行動において、決断を下す際の指針となっています。

どうすれば機会を拡大できるのか?

第一に、経済成長と機会へのアクセスは、すべての人、組織、地域社会、そして国に行き届くべきだと考えています。AI は機会と成長の起爆剤として機能しますが、まずは、すべての人がその恩恵を受けるために必要なテクノロジ、データ、スキルを利用できるようにしなければなりません。

この目標を達成するために、私たちは非営利団体や社会起業家、その他の市民社会組織にテクノロジを届けることに注力し、社会が抱える最大の課題に彼らが対処できるよう支援しています。今年、非営利団体に 38 億ドル以上のテクノロジを割引価格で提供、または寄付しました。そして、約 32 万 5,000 の非営利団体が当社のクラウドを利用しました。さらに、非営利団体がAIの可能性を活用できるよう、資金調達、マーケティング、プログラム実施のための新しい AI 機能も構築しています。

AI は一部の仕事に取って代わるかもしれませんが、同時に新たな仕事も生み出すでしょう。そのため、私たちは 2025 年までに、1,000 万人にますます普及が進むデジタル経済での仕事や生計を立てるためのスキルを訓練し、認定することを目指しています。2020 年 7 月以降、今年だけで 270 万人を含む 850 万人を支援してきました。また、サイバーセキュリティ分野における女性や社会的地位の低い人々のスキル向上にも力を入れており、世界 28 カ国、米国では約 400 のコミュニティ・カレッジと連携して取り組みの規模を拡大しています。

最後に、人々が AI についてより深く学べるよう、LinkedIn Learning と提携し、オンライン学習市場において初となる生成 AI に関するプロフェッショナル認定資格プログラムを立ち上げました。さらに、教育者向けの AI ツールを開発し、米国で初めて AI コミュニティ学習イベントを開催しました。これらのイベントは今後 1 年間で世界各地にて開催され、10 カ国語にローカライズされる予定です。また、この新世代の AI を活用するために、非営利団体、社会的企業、研究機関、学術機関が、労働力をどのように強化できるかを探る Generative AI Skills Grant Challenge を企業や団体と連携して立ち上げました。

どうすれば信頼を獲得できるのか?

テクノロジがポジティブな影響をもたらすためには、人々が利用するテクノロジとそれを提供する企業に対して信頼を築く必要があります。私たちは、信頼を獲得するために、責任ある AI の利用、プライバシー保護、デジタルの安全およびサイバーセキュリティの向上に取り組んでいます。

当社の責任ある AI への取り組みは新しいものではありません。2017 年以来、責任あるAIプラクティスの開発に取り組んできました。信頼は決して与えられるものではなく、行動を通じて獲得されるものであることを認識しています。

AI の原則を、中核となる一連の実装プロセス、コンプライアンスをサポートするツール、トレーニング、プラクティスに取り入れています。しかし、社内プログラムだけでは十分ではありません。AI カスタマーコミットメントや、Azure AI Studio のようなサービスを通じて、コンテンツ安全ツールや責任ある AI ダッシュボードへのアクセスを提供し、お客様やパートナーが AI を安全に開発・展開できるよう支援しています。

責任ある AI の構築には、他の業界リーダー、市民社会、政府と協力し、世界的に AI 規制とガバナンスを提唱することが必要です。今年、私たちは AI のガードレールに関する具体的な法的および政策上の推奨事項をまとめた Governing AI Blueprint を公表しました。また、米国ホワイトハウスと協力して策定した 8 つの自主的なコミットメントに署名し、安全性、セキュリティ、信頼性の原則を強化し、さらに 6 つのコミットメントを追加しました。

AI 時代において、サイバーセキュリティの重要性が高まっています。私たちはサイバー耐性を向上させるために、官民を問わず活動を強化しています。重要なインフラの防衛、サイバー攻撃やサイバー影響活動の検知と阻止、これらの攻撃に関連するインテリジェンスの提供において、ウクライナを支援し続けています。マイクロソフトの脅威分析センターチームは、500 を超えるインテリジェンス レポートを作成し、お客様や一般の方々に情報を提供してきました。また、第 3 回 Microsoft デジタル防衛レポートを公開し、当社の知見やセキュリティに関する推奨事項を共有しました。

人権を尊重しつつ、オンライン上で安全な体験を提供し、違法または有害なコンテンツや行為から顧客を守る取り組みを継続しています。テロリストや暴力的で過激なオンライン コンテンツに対処するため、Christchurch Call Initiative on Algorithmic Outcomes を支援しました。また、デジタルセーフティを推進するため、世界経済フォーラムの「デジタルセーフティのためのグローバル連合」を通じて、新しいグローバル原則の策定を共同で主導しました。

お客様のプライバシー保護とデータ管理能力の確保は、これまで以上に重要となっています。私たちは EU データ境界の段階的な展開を始め、商業および公共部門のお客様のデータ主権に対するニーズに応えています。また、毎月 300 万人以上の利用者が当社のプライバシー ダッシュボードを通じてデータ保護の権利を行使し、自分のデータがどのように使用されるかに関して意義のある選択を行なっています。

どうすれば基本的人権を守れるのか?

デジタル化がますます進む現代において、私たちには人々の基本的権利を促進・保護し、テクノロジが引き起こす課題に対処する責任があります。これは責任あるビジネス慣行を維持し、接続性とアクセシビリティを拡大し、公正で包括的な社会を促進し、地域社会を強化することを意味します。

2023 年、当社のテクノロジが悪用される可能性を予測し、私たちは人々の生活や法的地位に影響を与え、危害のリスクをもたらし、人権を脅かすようなテクノロジの利用に対するガードレールを設けることに真摯に取り組みました。さらに、将来にわたって当社のテクノロジの影響を評価し、ステークホルダーと連携して、グローバルサプライチェーン全体を含め、責任ある慣行と人権尊重の模範を示し、採用していく予定です。

今日、私たちの生活は以前にも増して密接につながっています。教育、雇用、医療、その他の重要なサービスへのアクセスは、ますますテクノロジに依存しています。そのため、私たちは、2025 年末までにアフリカの1億人を含む世界中の 25 億人に安価で高速なインターネットへのアクセスを提供する取り組みを拡大しています。2017 年以来、すでに 6,300 万人にインターネット アクセスを提供しており、これは地域社会が AI やその他のデジタル技術に簡単にアクセスできるようにするための重要な第一歩となっています。

今年はまた、アクセシビリティに関する知識のギャップを埋めることに注力し、障害者の間にある溝を埋めるための 5 年間のコミットメントに向けた取り組みも継続しました。LinkedIn LearningTeach Access、そしてマイクロソフトの障害者コミュニティとの連携により、75 万人の学習者が障害とアクセシビリティに関する理解を深めることができました。

さらに、AI によって生成された画像や動画の出所を追跡する新しいメディア コンテンツの技術を通じて、ネット上の偽情報と戦う取り組みを強化しています。また、データ主導の洞察を通じて司法改革を推進する活動など、マイクロソフト全体、エコシステム、コミュニティにおける人種的公平性を促進する取り組みを継続しました。さらに、ウクライナ戦争の影響を受けた人々に対して 5 億 4,000 万ドルの支援を提供するなど、8 つの人道的災害への支援も行いました。

最後に、人権と人道活動を促進する AI の可能性を認識し、いくつかの人道支援プログラムに取り組みました。パートナーと協力して、リスクのあるコミュニティを特定し、季節的な飢餓を推定し、栄養不良を予測し、病気の特定を支援する能力を構築しています。

どうすれば持続可能性を推進できるのか?

気候変動は私たちの世代における最も重要な課題であり、これに対処するには迅速な集団行動と技術革新が必要です。私たちは自社の目標を達成するだけでなく、他の人たちも同じ目標を達成できるよう尽力しています。つまり、自社の事業活動が環境に与える影響に責任を持ち、テクノロジによって進歩を加速させるということです。

異常気象が世界各地のコミュニティに影響を与え続けています。この緊急のニーズに応えるためには、マイクロソフトにとっても、お客様にとっても、そして世界にとっても、この 10 年を革新と断固たる行動の 10 年にしなければなりません。

最新の環境サステナビリティ レポートでは、2030 年の持続可能性目標に向けた炭素、水、廃棄物、生態系への取り組みの進捗状況を報告しました。2022 年には、事業が成長する一方で、当社の炭素排出量は全体で 0.5% 減少しました。特にスコープ3排出量が大部分を占めることから、この究極の課題には、サプライチェーン、政策の進展、産業全体での知識の共有を通じて今後も取り組んでいきます。

これまでに、100 万人弱の人々に清潔な飲料水と衛生設備へのアクセスを提供しました。これは、ウォーターポジティブの公約である 5 本の柱のうちの一つです。また、廃棄物ゼロを目指す取り組みでは、クラウド ハードウェア全体の再利用率とリサイクル率を 82% まで引き上げ、1 万 2,000 トン以上の固形廃棄物を埋立地や焼却炉から除外しました。

また、マイクロソフトは、自社の直接的な事業活動が地球の生態系に与える影響にも責任を持ち続けています。1 万 7,268 エーカーの土地を保護する契約を結んでおり、この数値は当社が事業に使用している土地よりも 50% 以上多いです。そのうち、1 万 2,270 エーカー、約 7,000 のサッカー場に相当する土地が永久保護区として指定されています。

テクノロジは、気候変動による最も深刻な影響を回避するための強力な手段です。そのため、より効率的なデータセンター、クリーンエネルギー、Microsoft Cloud for Sustainability と Planetary Computer の強化、環境に配慮したソフトウェアの実践への投資を加速させています。これまで、当社の Climate Innovation Fund (気候イノベーション基金) を通じて、50 以上の投資先からなるグローバル ポートフォリオに 7 億ドル以上を投入しました。このポートフォリオは、エネルギーや産業、自然システムにおける持続可能なソリューションを幅広くカバーしています。

最後に、私たちは AI が気候危機への対応において強力な促進剤になり得ると考えています。マイクロソフトは、自社の AI for Good Lab をエジプトとケニアに拡大し、大陸全体の気候関連のレジリエンスを向上させました。また、パートナーとともに Global Renewables Watch を立ち上げました。これは、大規模な太陽光と風力の施設すべてをマッピングして測定する世界初の生きた地図帳で、ユーザーはクリーンエネルギーへの移行の進捗状況を評価することができます。

この新時代は多くのチャンスをもたらすものであり、マイクロソフトのような企業にはさらに大きな責任が求められます。当社は、4 つのコミットメントを追求する中で、透明性に重点を置き、事業の運営方法やお客様やパートナーとの協働の方法について明確な報告を行っています。また、年次報告書 Impact Summary では、今年の進捗状況や学びについて詳しくご紹介しています。さらに、Reports Hub では、環境データ、政治活動、労働人口統計、人権活動などに関する詳細なレポートを提供しています。

企業文化

企業文化を実践する重要な時がこれまで以上に訪れています。働き方や働くスピードも変化しつつあります。

昨日までの例外が今日当たり前となる経済環境において、マイクロソフトの従業員全員が成長型マインドセットを持つ必要があります。さらに重要なのは、企業文化の進化に伴い、固定型マインドセットに立ち向かうことです。この新しい時代において、イノベーション、ビジネスモデル、営業活動のあり方を再構築するには、日々の勇気が必要です。ハイパフォーマンスな組織として、従業員が経済的機会を最大限に活かせるよう支援すると同時に、プロフェッショナルとしての成長と学びを促進し、彼らの情熱と目的を日々の仕事と会社の使命に結びつけることを目指しています。

成功するためには、お客様や世界のニーズをしっかりと把握する必要があり、One Microsoft としては、イノベーションとコラボレーションを重視しています。お客様に最高のサービスを提供し、全従業員が最高の仕事をすることができる企業文化を築くために、積極的に多様性を追求し、インクルージョンを推進する必要があります。世界をエンパワーメントするには、世界を代表する必要があります。そのために、代表者の数を増やし、インクルージョンの文化を強化することに引き続き力を注いでいます。今年、困難を乗り越えながらも、これまでで最も多様性のあるグローバル企業であり続けました。

寄付は、当社の企業文化の中核であり続けています。今年、10 万 5,000 人以上の従業員が、116 カ国において 3 万 5,000 以上の非営利団体に 2 億 4,200 万ドル (会社からのマッチングを含む) を寄付しました。また、93 万時間を超えるボランティア活動にも参加しました。

私は、従業員が会社や地域社会に対して献身的に取り組んでくれていること、そして変化する企業と世界の中で、日々私たちの使命や企業文化を実践してくれていることに深く感謝しています。

**

最後に、今こそマイクロソフトの時代です。この AI の新時代を利用して、地球上のすべての人や組織に有意義な利益をもたらす素晴らしい機会を手にしています。

元旦に、テスラの元 AI ディレクターで現在は OpenAI で働く Andrej Karpathy 氏のツイートを目にしました。それは、GitHub Copilot が彼のコードの約 80% を 80% の精度で自動生成しているという内容でした。その 2 日後には、インドの電子情報技術省が農村部の農民が母国語で政府のリソースとやり取りできるように、AI モデルを利用しているという驚くべき取り組みを知りました。

考えてみて下さい。アメリカ西海岸で開発された基盤モデルが、すでに地球の反対側にいるエリート開発者および農民の生活を変えつつあります。このような急速な普及と影響の広がりは、ハイテク業界ではかつて見たことがありません。

企業として、経済成長を促進し、すべての地域社会、国、産業、そして個人に利益をもたらすソリューションを責任を持って構築する時が来ています。私たちが成功すれば、世界も成功し、マイクロソフトも成功します。数日、数カ月、そして数年で、皆様とともにこの約束を果たせることを、これまで以上に確信しています。

サティア ナデラ (Satya Nadella)

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。

Tags: , , , ,

関連記事